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前科10 栗見さんと公文書偽造


 期末テストも無事終わって、もうすぐ夏休み。

 この時期になると、生徒達は長期休暇に向けて身の回りの物を整理し始める。それは栗見さんも例外ではなかった。


「ねー、布里須(ふりす)くん見て見てー。机の中整理してたらこんなの出てきたー」


 折りたたまれた厚紙を手渡してくる栗見さん。やけにニヤニヤしているのが気になったが、構わず開いてみる。


 真っ先に目に入ってきたのは、『身体測定』という文字。

 その文字を認識すると同時、バタン!と手を合わせて慌てて紙を閉じた。


「え、これ、僕が見ていいの? 身体測定の結果でしょ?」


 栗見さんの身体情報が載っているのだ。見たくないといえば嘘になる。だけど体重とかも載ってるだろうし、女子的には見られたら嫌なんじゃなかろうか。


 そんな心配を他所に、栗見さんはニヤニヤを一層強め、紙を見るよう促してくる。


「どーぞどーぞ。わたしには見られて困るような事なんて無いからね!」


 まぁ本人がそう言うなら……。

 ちょっとだけ手汗を滲ませながら、意を決して紙を開いた。


 目に飛び込んでくる、栗見さんのカラダの数値。


 身長……164.2cm

 座高……82.4cm

 体重……りんご3個分♡


 なにこれ。

 体重の所があからさまに修正液で塗り潰され、可愛らしい文字で上書きされている。なにこの可愛い偽造。


「えへへー、軽いでしょー?」


 自身の軽さを示すように、栗見さんはその場でぴょんぴょんと飛び跳ねてみせる。可愛過ぎるでしょ。


「体力測定の方も見てー?」


 50m走……1秒

 握力……1トン

 長座体前屈……10m


 童心が過ぎるよ栗見さん。そんなところも可愛すぎるよ栗見さん。

 でも長座体前屈10mは意味分かんないでしょ。自分の身長超えちゃってるじゃん。


 ふと、紙の隅に手書きの文字を発見した。

 消しゴムで消されかけているので一見では分からないが、目を凝らすことによって文字を識別できた。


 バスト……86cm

 ウエスト……58000cm

 ヒップ……88cm


「うわぁ!?」


 こ、これ、見ていいやつ!?

 友達同士で計測したのをメモった、そんな気配の走り書きだ。


「どしたの?」


 慌てふためく様子に疑問を抱いたのか、栗見さんも僕の視線を追い、直後に顔を爆発させる。


「えっ!? あっ!? ち、違うよ!? ウエスト58000cmって、友達がふざけてゼロ増やしただけだよ!?」


 バスト86のインパクトが強すぎて言われるまで気が付かなかったよ。


「返して! 忘れて!」


 紙がひったくられ、スリーサイズの部分が千切られて、ぐしゃぐしゃに丸められてしまった。


「忘れてーー!」


 バスト86……忘れられるハズない。脳裏に焼き付いてしまった。目を閉じるとおぼろげながら浮かんでくる。


「……布里須くん、これ見て」


 僕に忘れる気がないと悟ったのか、再度紙が差し出され、栗見さんがとある項目を指し示す。


「わたしの握力は1トンです」

「う、うん」

「……忘れてくれないなら、頭を握り潰します」


 ド直球の脅迫!


本日の罪状:無印公文書偽造罪(1年以上10年以下の懲役)

判決:頭握り潰して記憶消したのでセーフ(セーフ)

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