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ドレスメーカー

ブックマークありがとうございます!

後半は姉妹が姦しくしているだけの回です(_ _;)


 領地での滞在を満喫したアンジェリーナは、王都への帰路についた。

 馬車の中には、ほくほく顔のアンジェリーナ。二人の侍女の顔も知らず知らずに綻んでいく。アンジェリーナの能天気な気質が伝染してきたようだ。おかげで、辛い三日間の馬車移動も和やかに過ぎていった。


 アンジェリーナが公爵家へ帰ってきたのは、春になる少し前だった。

 公爵邸に到着するとアンジェリーナは、使用人達にお菓子や果実酒、雑貨など様々なお土産を渡し始めた。使用人達は思いがけないお土産を手にして、顔をくにゃりと破顔させた。


「奥様、わたくし共にも気を遣っていただきありがとうございます。」

「こんなにたくさん頂けるなんて嬉しいです。」

「喜んでもらえてわたくしも嬉しいわ。みんなにも領民にも喜んでもらえて、わたくしは幸せ者ね。」


 使用人達は誰もがアンジェリーナを分け隔てのない優しい奥様だと、しっかりと意識したのだった。


 ジェラルドは、アンジェリーナが領地から戻ってきたとき素直に嬉しかった。領地のことを活き活きと話す姿は微笑ましく、キラキラと輝く瞳と目が合うとドキリとした。


 

 パトリックは領地からの報告を受けジェラルドへ伝えた。報告を終えると、いつもの無表情な顔で言った。


「旦那様、間もなく社交シーズンに入ります。奥様に何かプレゼントされてはいかがでしょうか?」

「勿論、必要なものは揃えてくれ。だが、わたしからのプレゼントというのは必要か?」「はい。旦那様は必要なお金は使ってくださいます。…ですが、旦那様から奥様へ自ら贈り物をなさったことはございません。」

「確かに。ドレスも宝石も強請られたことがないからな。」

「マリアンヌへの遠慮でしょうか。」


 パトリックは澄まして言ったが、その視線は厳しかった。まるでジェラルドを責めているかのように――


 

 翌朝アンジェリーナが、スケジュールを確認していると、パトリックがやってきた。


「奥様、明日の午後の予定に変更がございます。」

「あら、どうしたの。」

「旦那様から仰せつかりまして、夜会用のお召し物をご用意いたします。ドレスメーカーへと参りますのでご準備を。」

「まあ、夜会用の。そうだわ、妹のフローナが今年デビューなの。妹にもドレスをプレゼントしたいのだけど。」

「それでは、ご一緒にお選びになってはいかがですか」

「えっ!?よろしいの。ふふ、楽しみだわ!」


 アンジェリーナは満面の笑みを浮かべ、ローズウッド伯爵家へ早馬を走らせた。


 

 次の日に向かったドレスメーカーのデザイナーは、王都で今女性たちに話題のデザイナーらしい。


「んまぁ〜〜〜お可愛らしいこと!」


 深い紅色のシックなドレスに身を包み、眼鏡をかけたリーフグリーンの髪の女性が、アンジェリーナとフローラを見て目を輝かせた。にこやかに挨拶する女性の目は笑っていない。獲物を逃すまいとするタカのように鋭く光った。


 デザイナーはパンッと手をひとつ叩くと、控えていたスタッフに合図をした。女性スタッフがアンジェリーナとフローラの身体中をくまなく採寸し、数字を書き込んでいく。デザイナーは二人のリクエストを聞きながら、沢山のデザイン画を描いてくれた。


「フローラは、手足が長くて羨ましいわ。背が高いから細身のラインのドレスが似合うんじゃないかしら」

「そうですね、でももう少しボリュームがあってもいいかも?次はこれを。あ、このオレンジのドレスはどうでしょう?」

「お姉さまは、背中がお綺麗ね。このプリンセスラインのドレスがいいんじゃないかしら?」

「それはいいですわ、絶対お似合いになりますわ!」

「ふふ、…あら、フローラとても似合ってるわ。少し大人っぽいかと思ったけれどそんな事なかったわね。」

「あら素敵ですわ!」

「お姉さま、次はこちらよ。」

「でもちょっと襟ぐり開きすぎじゃない?」

「色っぽくて素敵ですわ。お色はどのようになさいますか?」

「この碧色が素敵だわ。」

「お義兄様のお色を取り入れた方が、よろしいんじゃなくて?」

「でも、お喜びになるかしら……」

「勿論ですわ。」

「ねえ、お姉さまこれはどうかしら?」

「まああ!素敵!!裾の部分の刺繍を増やした方がいいですわね。」

「色はローズピンクにしましょう。」

「レースの透け感が悩ましいのよねぇ〜」

「これは男性の視線を独り占め間違いなしですね。」

「あらフローラ、このドレスも素敵ね!」

「少しチュールを増やしてもっとボリュームを出しましょう。」

「ビーズをたくさん散りばめると美しいわね。」

「お姉さまはデコルテもお綺麗ね!ネックラインはVネックがお似合いね。」

「色は菫色で決まりね。」

「本当に素敵だわ!綺麗よお姉さま!」

「ふふ、ではこれで決まりね。よろしくね。」

「ふふっ、楽しみねぇ〜」

「ええ!お任せください!久し振りに腕が鳴りますわ!」

「それではアンジェリーナ様、仮縫いが終わりましたらご連絡いたしますわ。」

「ありがとう。楽しみにしてるわ。」


 アンジェリーナとフローラは、はじける笑顔でデザイナーへお礼を告げ店舗を後にした。






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