表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

借金!?

初めての投稿です。

よろしくお願いします!!


深く澄んだエメラルドグリーンの瞳、キラキラ輝く瞳に引き込まれる。

まるで、瞳に真実を問われているように。

あの瞳に見つめられると嬉しくなる。元気になって勇気が湧いてくる。

あの瞳に見つめられると素直になる。正直に全てを打ち明けたくなる。


◇◇◇◇



「「「しゃ、しゃ、借金?」」」


 家族全員が固まった。王都にあるローズウッド伯爵家のタウンハウス一室では、只今家族会議の真っ最中。


 当主のローズウッド伯爵アーネスト、隣にはその母親のミシェリアが一人掛けの椅子に、テーブルを挟んだ長椅子には、長女のアンジェリーナ、次女のフローラが座っている。テーブルの脇には、書簡を携えた家令のビクターが控えている。


「金額を確認したら流石に隠しておけなくなって…。見てもらった方が早いと思ったから、書類を持ってきたんだ。」


 アンジェリーナの兄であるアーネストは、借りてきた猫のように縮こまっている。

 アーネストはビクターから書類を受け取ると、恐る恐るテーブルの上に並べた。


 晩餐を終えた後、青白い顔をしたアーネストの口から『話があるんだ』と言葉が零れたとき、もはや手遅れになっているであろうことは、誰しもが察した。これまで数々の問題を起こしてきたアーネストであったが、借金は始めてである。


 ローズウッド伯爵家は古くからの歴史があるだけで、領地経営が特別上手くいっているわけではない。ごく普通に伯爵家として体面が保たれる程度の経済力だった。前ローズウッド伯爵エヴァンスが一年前に亡くなるまでは――


 この家の大黒柱だったエヴァンスを失ったローズウッド伯爵家は深い悲しみに包まれ、次第に領地経営も傾き始めた。アンジェリーナは伯爵家の領地運営について学び始めたが、おいそれと簡単にはいかない。その隙にアーネストは新しい儲け話に乗っかっていた。 


 ここ最近、アーネストは家に留まることなく忙しく出歩いていた。家族はアーネストの交友関係に口を挟んだことはないが、かなり心配していた。アーネストはお花畑な性格で、これまで幾度となく騒動を引き起こしてきたからだ。そして、その都度家族で乗り切ってきたのだ。


「お兄さま。一体どういうことですの? このような大金、何故借りたのです?!」


 アンジェリーナは泣きたい気持ちだった。借金の額が半端な金額ではない。


「ごめんね。そんなに怒らないでおくれ、僕も辛いんだ。」

「……っ」

「簡単に儲かるという話だったんだ。でも僕は怪しいと思って、ちゃんと説明会にも行ったんだ。」

「――その説明会って有料だったんじゃないでしょうね?」 


 まさかと思いつつも思わず確認してしまう。アーネストは驚いたような顔をした後、くしゃりと破顔した。


「アンジーはとても勘がいいね。その通りだよ。説明を聞いたらほんとに簡単だったんだ。時間はかかるけど僕にもできそうだったから商材を購入したんだ。」

「その商材はどうしたんですか?」

「それがつい最近、壊れてしまったんだ。購入先も引っ越してしまっていて、移転先が分からないんだよ。」


 この場の空気がずんと重くなった。

 どう考えても詐欺だろう?


「どうして、どうしてそんなことを……」


 アンジェリーナは怒りを抑え込もうとぐっと拳を握りしめた。だが、抑えきれずにプルプルと戦慄いた。


 アンジェリーナはちらりと横に座るフローラに目を向けた。フローラは来年16歳になり、社交界デビューを迎えるのだ。多額の借金を抱えたままでは、お先真っ暗だ。フローラは事の重要性がわかっているのか、黙って俯いている。


 長女のアンジェリーナは婚約の話が遠のき行き遅れ状態。既に醜聞になっている。その上、借金で次女が社交界デビューができないなんて事態になったら、ローズウッド伯爵家は醜聞まみれだ。


「アンジー、そんなに怒らないでおくれ。僕も反省しているんだ。」

「怒りたくもなります! 大体お兄さまは何を思って新しい商売など始めようと……!」


 感情の高ぶるままテーブルを力強く叩く。テーブルの上のカップが揺れガチャと悲鳴を上げた。


「ほら、お父上がいなくなってしまって僕が当主になったんだ。しっかりしないといけないと思って頑張ってみたんだ。」

「兄上……」


 アンジェリーナは頭が痛くなってきて、こめかみを揉んだ。

 フローラは今にも泣きそうな顔をしている。アンジェリーナは隣に座る妹の手を優しく包み込んだ。


「何かいい方法はないかしら……」


 アンジェリーナは、ふうっと大きく息を吐いた。





 それから数日たっても、手立ては見つからなかった。アンジェリーナが自室で考えを巡らせていると、家令のパトリックがやってきた。


「アーネスト様が執務室でお待ちです。」


 アンジェリーナは怪訝な面持ちで兄の元へ向かった。


「アンジェリーナ、バーンクライン公爵家から婚約の打診が来ている。なんでもお前のことが忘れられないらしいんだが、心当たりはあるのかな?」


 アーネストはニタニタと妖しい笑みを浮かべて言った。


「えっ、思い当たることはございませんわ。公爵家の方にお目通りしたのなら、忘れる訳はございませんもの。何かの間違いでしょう。」


 アンジェリーナが参加した数少ない社交の場で言葉を交わした相手は、一番爵位が高くても侯爵家。それも挨拶程度だ。


「そうか……」


 アーネストは残念そうに呟いた。


「それで、公爵家に招かれているんだがどうする?」

「情報が間違っていないか確認して頂くようお伝えください。」

「まぁ、でも顔を見れば間違いだと気づくだろう。折角の機会だ、記念に行っておいで!」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ