第一話 王太子より冒険!
私は幼い頃から「冒険者」に憧れていた。
原因の一端は「前世」で「冒険譚」を読んでいたことにある。
「はぁ、冒険者になりたい。」
そう呟くと隣の髪がひらりと舞う。
「リナ、貴女は公爵家の娘なのだからそんなこと言ってはいけないわ。」
姉のリナは勢いよくこちらを向き、いつものセリフを吐く。
私とラナは一つしか違わないのに、すごくしっかりしていてお淑やか。
冒険者になりたいといつもボヤいてしまう私とは大違い。
「それに、もうすぐ王太子殿下がいらっしゃるのだから切り替えなくては駄目よ。」
「うぐ、」
ラナは諭すように言ってくる。確かにあと半刻もすれば王太子殿下がいらっしゃるだろう。
でも、婚約者候補として有力なのはラナの方だ。
王太子殿下もきっと私になんて見向きもしない。
「リナ、ほら、拗ねてないで髪やドレスを整えてもらってきましょう?」
「うん、わかった…。」
そうこうしているうちに王太子殿下がいらっしゃる時間になった。
「そろそろ王太子殿下がいらっしゃるわ。リナ、ちゃんと切り替えられたかしら?」
「えぇ、ラナお姉さま。切り替えています。」
「なら良かったわ。」
ふふ、こう見えて猫かぶりは得意なのだ!
一体だれに似たのだろう。
「さて、そろそろ王太子殿下もいらっしゃるでしょうしエントランスまで行きましょうか。」
「はい、わかりましたわ。」
私がそう返事をするとラナは扉へと歩き出した。
私もその後ろを歩く。
緊張しているからかいつも歩いているはずのこの道も初めて歩いているかのように感じる。
ラナが前を歩いてくれていなければ、きっと歩みを止めてしまっていただろう。
「リナ、リナは王太子殿下に初めて会うのよね。」
「はい、そうですが…?」
「リナは王太子殿下の婚約者になりたいの?」
質問の意図がわからず、思わず固まってしまう。
動じて突然こんなことを?
「王太子殿下の婚約者に、ですか。別に特段なりたいともなりたくないとも考えていません。」
そんなことはない。
思いっきりなりたくない。
王太子殿下の婚約者になるということは王妃になるということ。
そんなものになれば冒険ができないではないか。
「そう、よかった…。」
「何がよかったのですか?」
「……あっ、もうエントランスに着いたわ。無駄話はやめましょう?」
話をそらされた感じがしないでもないがそれは無視して王太子殿下を待つことにした。
それからすぐ王太子殿下はいらっしゃった。
初めて見る王族。
すごくキラキラしていた。
その美しい姿に見惚れてしまって王太子殿下とラナとのお茶会ではまともに話せていなかったと思う。
「ラナ、王族ってあんなにきらきらした空気を纏っているのね。」
「それはリナが…。いえ、なんでもないわ。」
今はもう王太子殿下が帰った後。
寝る前にベッドの中で二人で話している。
「ラナも初めて王太子殿下に合ったとき緊張した?ドキドキした?」
「ん-、ある意味したと言えるのかな。」
ラナの含みを持たせるような言い方が気になったが、眠気に勝るほどではなかった。
「…リナは自覚していないようだけれどキラキラして見えたのはあいつ、エドワードに恋したからじゃないかしら。」