Toumei no Hako
いつからここに閉じ込められているんだろう。
私を囲う透明の箱。
この箱は、私が動くと共に動き、
私が止まると共に止まる。
だけど確かに感じる。
私と外界とを完全に隔てるもの。
一寸の隙間もない。
箱の外に出ようと思ったこともある。
箱を破壊しようと振るった拳が痛んだ。
幾度も試みたが、箱は信じられないくらいに頑丈で、私の方が磨り減っていくだけだった。
早くここから脱しなくては。
息ができなくて苦しい。窒息しそうだ。
そのはずなのに、私はこんなところで何十年も生きている。
音がしない。
自分が箱を殴る音さえしない。
そのはずなのに、痛みばかりが募っていく。
どうやら、箱の外にある人や物は私のことを認識しているらしい。
だって、人は私に話しかけるし、
物は私を避けて配置される。
でも、私にあなたたちの声は聞こえないし、
聞こえないなりに何か言おうとする自分の声も聞こえないし、
何に触れても私の感覚は全て同じだ。
あたたかくも、つめたくもない。
かたくも、やわらかくもない。
ただそこに在る。
こんなに息苦しい場所で、私はいつまで生き続けるんだろう。
でも、きっともう永くはないのでしょう?
こんなに苦しいんだから。