~第二章 天使学園~
「んん」ふと目が覚めた。
俺はよくある「ここは?」とか「私は一体?」などと自問自答はしない。
だってそんなことしたって無駄だろ。いつだって独り言はさみしいし、この年でハゲるのはイヤだからな。
ポム
「ん?」
手で地面の感触を確かめてみるとそれはさっきいたところとは違うことを示した。
「そうか、天国説は正しかったのか。ということはやはり俺は・・・」
「そこの君、何そんなところでボソボソ言ってんのさ」
雲の道をポムポムと歩いてきたのは、中学生くらいの美少女だった。
「おーい、聞いてんのかーってアレ!?すみません。て、天使様でしたか!」
はて?誰のことだろう?俺とこの人以外誰も見当たらんけどな。
「本当にすみませんでした!天使様とは知らず無礼な口を」
「天使様ってどこにいるの?」
「は??あなた様のことですよ。その印にほら、頭の上に。」
「ん?」
俺の頭の上には光っている輪っかがあった。
「ん?これか?いつのまについてたんだろうな?」
「いや、それは訓練を受けて厳しい修行の旅から返ってきて、天地戦争でご活躍された”女性のみ”が受け取れる天使の証ではありませんか」
こいつ、ヤに説明口調じゃね?
「っつーか、俺男なのになんでついてんだ?しかもそんな修行した覚えねぇけど」
「へ??そんな。あなたはどこからどう見ても女性ではありませんか」
「いやいや、胸ないし、ノド仏は出てきてないけど、ちゃんと、その、付いてるぞ」
「まさか!そんなはずは!仕方ない。少々手荒ですが、確かめさせてもらいます。」
「んな!?お前、何、速!?」
それはまさに瞬間移動と呼べる早さだった。
「フフフ。すみませんねぇ。じゃあ失礼しまーす」
「ヤメロー!!」
「やめなさいクリス!!」
ずごーんとものすごい音とともに雷が落ちてきた。
「ひゃっ!す、すみません。つい・・・」
さっきの声の主のほうを見てみると、これまたすごい美少女だった。
年は俺と同じくらいで、身長と大差ない杖を両手で重そうに持っていた。
「あのーすみませんでした。大丈夫でしたか?」
なんて優しい声なのだろう。
「あ、はい。おかげさまで」
この人も輪っかがついてないってことは天使じゃないのか。
それにしてもどうして俺に。
「あのー、もしかしてさっき死んでしまったばっかりですか?」
「あ、はい。でも何故それを・・・」
「いや、ここに来たばかりの人はみんな現世の服を来ているんですよ。それなのにこの子ったらほんとすみません。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。あんまり気にしていないですから」
よかったー。この人は常識人のようだ。
「ではまず、ここの説明が必要ですね。
よいしょっと杖を振り、どこからともなくホワイトボードと塾の先生が使いそうな棒が出てきた。
あぁかわいいなぁ~種田の気持ちが今ならわかる。
ん、そういえば種田はどうしてあの時・・・。
「えーまずここがどこかというと」
目の前で美少女が説明をしてくれるそうなので、ネガティブなことは後で考えるようにしよう。
「ここは、天使区域第六区天使養成施設。通称天使学園です。この世界は天国と地獄と現世で分かれています。さっきまであなたがいたのは現世で、現世で死んでしまうと天国に来てしまいます。現世からは直接地獄へ行くことはできません。
天国で何かをやってしまい、天使裁判で有罪の者が地獄へいきます。言うなれば地獄は刑務所ですね。そして今は、その地獄と天国の大戦争が勃発してます。なのでここは天使学園で天使になるために必要な訓練をうけ、立派な天使になってもらい、天使群への加勢をしてもらいます。もちろん修行もしてもらいます。第六区というのは天国は何区かの区域分けをされています。たしか、天国は24区あったような気がします。すみません情報不足で。第六区を天使学園というのは、第六区丸まる天使養成施設だからです。これで少しはここのことがわかりましたか?」
「はい、ありがとうございます。一つだけ質問してもいいですか?」
「はいどうぞ」
「何故俺に天使のわっかがついているんですか?」
「すみません、それがわからなくて。私も知りたいのですが・・・あ!そうだ!学園長に聞けばわかるかもしれません。」
学園長?あぁ、天使学園とかいう学校の長か。
「では早速行きましょう。さっクリスも来なさい」
「は~い」
「あ、そういえば自己紹介がまだでしたね。私は、ミル・シェフィールド・クライトと申します。学年は二年です。皆さんはミルクと呼んでくれます。」
「はいはーい、アタシはクリード・スティール・ミレラでーす。みんなクリスって読んでるからクリスでいいよ。学年は1年でーす。四露死苦!」
「えーと俺は霧生咲也です。学年とかは知らないけど年は15です。」
それから俺たちは校舎を目指して歩いていく。そういえば俺より先に死んだ由紀はどこだ。
「あのーすみません。現世で死んだらまずどこへいくんですか?ランダムに天国のどこかに飛ばされるんですか?」
「いやー、ほんとは天宮城の大天門に行くはずなんだけどね。どうして君はココにとばされたんだろうね」
この人の喋り方はどうしてこうのんきなんだろう。
いや、なんか和むけどね?
「その天宮城ってなんなんですか?」
「えーと、天国で一番偉い人、大天使様がいるところだよ」
大天使かぁ。なんかスゴそうな人だな。
「そこで天国通貨が渡されるんだよ。たしか一人10万G位だったような」
「1Gってどれくらいなんですか?」
「うんとねー、現世のお金で言うと10円かな」
天国来たら100万円ももらえるなんて、路上生活者が聞いたら自殺の耐えない世界になるかもな。でも天国の物価ってどれくらいなんだろう。
「そういえば、その敬語はアタシにつかっちゃダメだから。なんか、その、くすぐったいからさ。しかも年はタメなんだからね。」
「はい、わかりました、じゃなくてわかった。ありがとう色々教えてくれて。」
「え?ま、まぁ困ったことがあったらアタシに言ってよね。」
「うん、ありがとう。」
良かったぁ。天国に来て初の友達ができて。なんかこいついいやつそうだしな。
「いまありがとうって、ありがとうっていてくれた。ありがとうだって・・・」
「どうしたのクリス」
「え!?いや!な、なんでもないよ、なんでもない。そ、そういえば咲也ってすごいかわいいよね。なんかもう女の子みたい。」
グサ
「あ、あはははは。言われなれてるけどね。女の子に女の子みたいって言われるとさすがにくるね。なんかもう、目から心の汗が出てくるほどくるね」
「こら、クレス。男の子はカワイイなんて言われても傷つくだけなんだから」
「え?そうなの?ゴメーン咲也。そんなこと知らなくてさーって咲也?」
「どうせ俺は頭がちょっといいだけの女々しいやつですよ」
「ねーミルクどうしよー、咲也が本格的に落ち込んでるよ。」
「あ、あはははは。どうしましょうね。」
そして校舎までの道のりは俺のボソボソ声しか聞こえなかったという。