おまけ②
《side ラハット&ルーカス》
王城に到着した希暗達には自室に待機するように、そして騎士団員には持ち場に戻るように指示を出したラハットは一人きりで今回のことを報告するためにルーカスの元へと向かっていた
哀愁を漂わせながら城の中を進むラハットはルーカスのいる部屋につくと扉を叩く
そして中にいたルーカスより入室の許可を受けると部屋に入り今日の出来事についての報告をはじめた
「王様、報告致します。本日より異世界人達の実践訓練をすべくリバールのダンジョンに向かい攻略をはじめました。最初のうちは特に問題もなく全員共に魔獣やダンジョン罠にも簡単に対処出来ており10層のボスも難なくクリアすることが出来ました」
「ほぅ、流石は異世界人よな。だがそれだけでは無いだろう?何があった?順調に終わったような雰囲気ではないぞ」
「・・・はい。その後ダンジョン攻略を進めているうちに16層で異世界人のうちの1人が光っている何かを見つけ全員で確認しにいったところ、見たことのない宝石らしきものが壁一面に散りばめられている部屋を発見しました。その場所は今までに冒険者達からの報告もなく罠の可能性もあったので注意しようとしたらところ、間に合わず床に魔法陣が現れ転移させられました。転移先はモンスターハウスで大量のスケルトン、そしてランクAを超えると思われる暗黒騎士が現れ私が暗黒騎士を抑えている間に他の騎士団員達によって脱出を試みましたが、私が暗黒騎士に敗れてしまい逃げ遅れた子を庇って一人…暗黒騎士に殺されてしまいました…」
「そうようなことがあったのか……。その1名以外は全員無事なのか?」
「はい。多少なりとも怪我等は負っていますが異世界人、騎士団員共に無事帰還しました」
「そうか……。それでダンジョン管理をしている冒険者ギルドに報告はしたのか?」
「報告は済んでおります。冒険者ギルドによるとすぐさまに高ランクの冒険者を派遣し調査するとの事です」
「流石に放置してよい問題ではないからな。異世界人達の様子はどうだ?仲間が1人死んでしまったことでパニックに陥ってはいないか?」
「いえ、恐らくその少年によって助けられた少年と極一部の者しか今は気づいていないと思われます。それに今は生き延びた事への安心感だけを感じているでしょうが、冷静になってからこのことを知るとなるとどうなるかは分かりません」
「ふむ、ならば早いうちに伝えて置いた方がいいかもしれんな。恐らくこのことを伝えると今後の実践戦闘に恐怖する者がででくるであろう。そのあたりを考慮した上でこちらも丁寧に対応しないとならんな。それによって今後戦えないとなると我々も困るからな」
「ここで対応をきちんとして行かないと戦えないものが続出するかもしれませぬや。早急かつ慎重に対応すべきかと」
「そうであるな。では疲れているところ悪いが異世界人にはこれから広間に集まってもらい話をするとしよう」
そう言うとルーカスは近くにいた侍従に異世界人達に広間に集まるように伝えろと命令をだす
「ではラハットよお主も幾許か堪えているかもしれんがよろしく頼むぞ」
「分かりました」
そういいルーカスとラハットは2人広間へと向かっていった
《side希暗》
その頃希暗は王城に着いて部屋に帰ってからも一言も発することなく部屋でひとり座り込んでいた
身体のほうは王城に帰ってきてから王城お抱えの魔法使いによって回復魔法を受けたので楽であったが心の方はまだ沈んだままだった
そんな希暗の心は未だ悲しみと怒りに揺れている
すると扉を叩く音が聞こえ外から広間に集まるように指示されたため、流石に行かなくてはマズいと思いとぼとぼと1人広間に向かっていく
そんな希暗が広間につくと戦闘組も非戦闘組も他のクラスメイト達全員は揃っており、やはり戦闘組は皆疲れた表情をしていた
そうして全員が集まったことを確認したあと王様が口を開いた
「異世界人達よ、今日は本当に大変な1日であったと思う。そして1名の尊い命が失われてしまったことは非常に残念だ。だが皆にはその現実を乗り越えて行ってほしいと我々思っている」
そう王がいうとクラスメイト達にざわめきが広がっていき次第に呂阿がいない事がみんなに伝わった
・・・薄々感じてはいたがこう言われるまで希暗以外は呂阿がいないことは気づいてなかったようだ
クラスメイト達の中での呂阿の立場がよく分かる
そしてクラスメイトが1人死んだという情報を伝えられたことで、なかには涙を流し軽いパニックになっている者もみえるが無理もないだろう
今まで遠くに感じていた死というものを身近に感じることになってしまったのだ
もし自分がそうなってしまっていたらと考えると平気でいられるわけがない
これによって今後戦えないと言う人が出てもおかしくはないだろう
実際既に心が折れたのか涙を流し精神状態が危うくなりかけている者までいる
そして流石の遠山達や近藤達もいつものような態度で発言することはできない様子であった
玲奈の方をみると泣きじゃくっている白月さんを抱きしているのが見える
一方で呂阿とかなり親しかったはずの旦椋さんは何故か涙を流さずいつもの無表情のままであった
彼女は彼女で考えていることがあるのかもしれない
そのあと希暗達異世界人が少し落ち着いてくるとラハットさんから今回の件の詳細が説明されとりあえず1週間ほど休息期間が設けられることとなった
理由はやはり僕達に今回の件をなんとか乗り越えて再び戦ってもらうためであろう
ラハットさんの説明が終わると僕達は解散することとなり希暗は思い身体をひこずるようにただ一人、他に誰もいなくなった自室へと帰っていった
そして希暗は部屋に入ると一人涙を流し続けた
呂阿の死を乗り越えないといけないと頭ではわかってはいてもそう簡単に割り切れるものではないのだ
なにせ自身のせいで親友を死なせてしまったというのが大きい
そう簡単に立ち直れるはずがはない
そうして涙を流し黄昏ていると扉が開き玲奈が入ってきた
……To be continued →