その壱
「知らない天井だ」
とりあえず1度言ってみたかったので言ってみた
その実今見えている景色に見覚えはないし
何故こんなこと言える状況になったのかというと少し時間を遡ることになる
季節は梅雨
俺はいつも通り眠たい目を擦りながらとぼとぼと1人で歩いて学校に向かっていた
教室についていつも通り自分の席につく
勿論声を掛けてくるやつなんていない
何故なら俺は世間曰くぼっちと言われる存在だからである
俺は高校入学してすぐの4月にとある事件を起こしてしまって以来、ほとんどの同級生から避けられることになってしまい友達もじゃんけんのチョキの指の本数しかいないという有様
高校に入る時にこちらの県に引っ越してきたタイミングであったがため中学の頃の知り合いも全くいない
そして気づけば早くも1年間ぼっち生活を過ごしていた
まことに悲しいことなり
とそんなぼっちな俺は自分の席につき朝のホームルームがはじまるまでの間今日のアニメのスケジュールを確認していた
そしてクラス全員が揃い担任が入ってくる時間の少し前、突然教室の床に魔法陣らしきものが浮かび上がると教室が光に包まれる
クラスメイトほぼ全員が戸惑うなか俺は
(異世界召喚かね、キタコレ!!)
とポケーっとしつつ呑気に構えていた
そして気がつくと今の場所にいたというわけだ
そんな俺は目を覚まし意識がはっきりすると周りを軽く見渡してみる
周りには多分他のクラスメイト達全員、場所は祭壇のようなところで薄暗く地下室みたいで床には魔法陣らしきもの、そして俺らを白ローブや甲冑を着た人々が囲んでいる様子が認識できた
何故か変な頭痛がしているが多分召喚酔いみたいなものだろうと思って気にしないことにする
すると包囲の一部が解かれそこから一際目立つ服装をした老人が現れると
「ようこそ異世界人よ、召喚に応じていただき感謝する」
こう言って近づいてきて更にこう続けた
「まだ理解が、追いついてないかもしれないがここは貴殿らがいた世界と別の世界・アースガル、そしてここは人間種の国のうちスリイアである」
(異世召喚のテンプレだなぁ〜、どうせ魔王を倒せとか他の国を滅ぼせとかの流れかね)
と老人の言葉を聞いてこんなことを冷静に考えていられるのは俺が重度オタクだからでありかつのほほんとした性格のおかけだと思う
俺と異なり周りのクラスメイト達はまだ現状をのみ込めていないようで一部を除き反応が薄かった
そんな中でも数名が声を上げて反応を示す
「おいふざけんな、元の場所に返せよ!」
と怒鳴っているのは我が校の不良代表みたいな近藤
「異世界きたぁぁぁぁーーー!」
と発狂してるのは我が校オタク代表みたいな田中
こいつたまに話すとき妙に俺に馴れ馴れしいんだよな
「みんな落ち着いて、とりあえず事情を聞いてみよう」
と冷静なのは我が校のリア充代表みたいな遠山
「委員長の言う通りだ落ち着けみんな」
と便乗してるのが遠山のおまけみたいな近山
とまぁテンプレ的な発言が飛び交ってるので俺はとりあえず傍観してみることを決めながらも
(てかうちのクラスってテンプレ要素揃ってね?フルコンボだドンって感じがするなぁ)
とか呑気に考えている
暫くしてみんなが落ち着いたころに遠山が金ピカ老人達に対して話を切り出してみる
「では代表して僕が質問させていただきます。とりあえず今の状況説明をお願いできますか?」
それを受け
「私がお答えしましょう」
と先程の金ピカ老人が話し始めた
「この度貴殿ら異世界人を召喚した理由はこの国を救っていただくためです。現在この世界では獣人・魔人・人間の三種族が対立している状態で、この中でも人間だけ二つの国があり今までは協力して他の種族に対抗してました。しかし突然もう片方の国ジァルゼが我が国との協力関係を打ち切り我が国への侵略を開始したのです。このままでは戦力的に最弱である我が国は滅ぶしかなく、それを防ぐために王家に伝わる伝承にあった異世界からの召喚に頼ったというわけです。こちらが勝手な都合で呼び寄せてしまったのは申し訳ない、ですがどうかこの国を救ってくだされ」
と最後に頭を少し下げつつ話してくれた
その説明を聞いて
(ちょいとテンプレからはズレてるけど結局国を救ってください展開かぁ〜、そういやエルフとかいないのかな。あとは妖精とか精霊とかも見てみたい)
なんて俺は呑気に考えていると一部のヤツらが騒ぎ始める
「巫山戯んな!そっちの都合なんぞ知らねぇよ、早く元の場所に返せよ」
「いきなり呼び出して戦えってどうゆう事だよ」
「テンプレきたぁぁぁぁ!」
等々言いたい放題だ
そんな中
「みんな落ち着けって、まだ聞いて見たいこともあるだろ」
と遠山が切り出して再度質問してみた
「そちらの事情とここにいた理由も分かりました、それでなんですがどうやったら僕達は元の場所に帰ることができるんですか?」
「詳しい方法は分かっていませぬ。しかし我が国に召喚の伝承があったように魔人や獣人、ジァルゼにももしかしたらあるかも知れませぬ」
と表情を暗くしながらも言う
だがそんな話を聞きつつも俺は
(ここもテンプレか、知りたきゃ他の国をなんとかしろって事ね………てことは嘘ってことかな)
てな感じで阿呆みたいに冷静に色々と推測を始める
その際また少し頭痛がしたが今は気にしない
だが他のクラスメイトはそうはいかず再び騒ぎ出す
そしてまたもや遠山が自分に注目を集めるように行動をしたあとに
「事情はある程度分かりました。なぁみんな元の場所に戻るためにもここは協力するしかないんじゃいのか?それに困ってる人を見捨てるなんてできないだろ!?」
そう遠山が言うと他のクラスメイトは渋々ながらも頷いていた
なかなかにチョロい面々である
そんなクラスメイト達をみて
「では皆様まず自身の能力を確認してみてください。いまから身分証明書兼各ギルドに登録する際に必要なカードを渡すのでそれに血を1滴垂らしてみてくだされ。そうすると能力が浮かび上がるはずです」
そう老人が言うと後ろにいた白ローブがカードのようなものを配り始めた
それをもらったクラスメイト達が一部を除き不安げにしているなか俺は
(さ~て、おまちかねのステータス確認といきますかね。とりあえず上の中くらいの当たりを引いておきたいところ)
と気楽に構えてカードに血を垂らした
……To be continued →