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第3話:混ぜるな危険

偶然。そう偶然バレンタインデーですから。

俺は大学の文科系サークル棟3階に来ていた。

あ、言っとくけど、俺は帰宅部だから。バイトが忙しいし。

何のバイトかって?まぁそれはおいおいという事で。

今日ここに来たのは、知り合いに相談をする為だ。

2度ある事は3度あるって言うしな。

逆に3度目の正直、なんて言葉もあるから、今度こそこれまでのギャグみたいな死因じゃなく、本当に回避不能なものが来るかもしれないしな。


ガチャッ。

「おーっす」


勝手知ったる何とやら。

俺は軽いノリで、その部室に入る。

部屋の主は……居た居た。

部屋の真ん中でこたつに入ってナッツをボリボリ食べてる。


「おや、きみがこの部屋に来るなんて珍しいじゃないか。

とうとう入部してくれる気になったのかな?それとも何か相談事かい?

分かった、恋の悩みだね」

「残念、外れ。相談事ってのだけは合ってるけどな」


そう言いつつ、俺もこたつに入ってテーブルの上のナッツを拝借する。

この部屋の主こと求道(くどう) 未知子(みちこ)は、外見だけなら中学生にも間違われるミニマムさだけど、知能指数は180を余裕で超えている天才だ。

まぁ、ちょ~っと性格とか趣味とかが一般人とはズレまくっているが悪い奴じゃあない。

だから、最近のあの件について相談するなら、こいつかなと思ったわけだ。

それはそれとして。


「ボリボリッ。このナッツ美味いな」

「そうでしょう。ついこの前、アフリカから取り寄せたんだ。ぼくの最近のお気に入りさ」

「じゃあ、その飲んでるお茶も珍しいものだったり?」

「お、よく気が付いたね。そうさ。今朝届いたばかりでね。今こうして初めて味わっているんだけど、なかなかに癖になる味だよ。

ちょっと待っていてくれ。君の分のティーカップも用意しよう」

「おう、ありがっ!?」


まさか、またなのか!

四角いこたつに向かい合わせで入っていた俺たちの横、俺から見て左側に、さも当たり前かのようにこたつに入りながら、そいつルルーが俺を見ていた。


「安房 紡さん。

あなたは今から求道未知子さんが淹れたブンプルミ茶を飲むことにより、そのブンプルミ茶と胃の中のゲルモニカナッツが化学反応を起こすことで、お茶を飲んだ10分後にピルミリン中毒を発症し40度の高熱を出して10分で死にます」


また、妙に具体的だな、おい。

というか、前にも思ったけど、それを聞いて、はいそうですかとそのお茶を飲む奴が居るかっての。


「大丈夫です。それが安房さんクオリティです」

『いやなクオリティだな、おい。』


そこで目に入ったのは飲みかけのカップ。


『って……ちょっと待て』

「なんですか?」

『そこまで分かるなら、そのピルミリン中毒の解毒法もついでに宣告してくれ』

「はい。解毒法は、チョコレートを10mg以上摂取することです。先程の化学反応がさらにチョコレートに含まれる成分と化合することにより急速に人体には無害なものとなります」

「そうか、ありがとう!!」

「わっ、なに!?」


突然お礼を言い出した俺を見て、求道がびっくりしているがそれどころじゃない。

俺は急ぎ立ち上がると、求道の腕を掴んで部室を飛び出した。


「ちょっと紡くん。いきなりどうしたんだい!?」

「説明は後からする!今は黙って購買まで一緒に来てくれ!!」

「ああ、わかっ。。」


突然求道がぐったりしだした。

ちっ、発症し始めやがったか!

おでこを触ると確かにめちゃくちゃ熱い。

女神様様だな、まったく。

俺が部室に入る前に、求道はあのナッツも茶も飲んでたんだ。

俺にしか発症しない類いの病気じゃないなら、こいつだって危ないに決まってる。

あの女神が気前よく解毒法も教えてくれて助かったぜ。


俺は動けなくなった求道をお姫様抱っこすると階段を駆け下りる。

こういう時、小柄なのは有難い。

そのまま購買に行って、表に置いてあった板チョコをひっつかんで、すぐ横のテーブルに座る。


「ちょっと、君!お金を払いなさい!!」

「すぐ払うから待っててくれ!こっちは急患だ」


売店のおばちゃんがびっくりしているが無視だ。

急いで板チョコの包装を取って、もう意識が朦朧としている求道の口に突っ込む。

……って無理だろ。

意識失ってるのに固い板チョコを噛んで飲み込めとか。

どうする。もうここに来るまでに8分が経ってる。猶予は1分と無いだろう。

くっ、緊急事態だ。恨むなよ。

俺は自分の口にチョコを入れて噛んで溶かす。で。


「んっ」

「っっ」


口移しで求道に飲ませてみたが、どうだ?


「…………んん」


小さなうめき声と共に目を開ける求道。

その顔からは熱が引き中毒症状は完全に消えていった。

もう、いつも通りの顔色だ。


「やあ、おはよう。紡くん。

あれ?ぼくはいつの間に購買に来たんだっけ?」

「はぁぁ。良かった。間に合ったか」


その元気そうな声に、思わず安堵のため息をついた。

だけど、本当の俺のピンチはここからだった。


ざわざわざわ

「おい、あいつ今、寝ている女の子にキスしてなかったか?」

「というか、あれって誘拐?それともロリコン?どっちにしても犯罪だよね」

「通報した方が良いのか?」「大丈夫、俺はもう通報した」


おい、ちょっと待て!!!

俺は再び慌てて立ち上がると、有無を言わせず求道をお姫様抱っこして購買を飛び出した。


「あはははっ。なんだかよく分からないけど、面白いことになってるね」

「いや、全然面白くねぇ!!」


そうして何とか無事に部室に帰って来れた。


「はぁっはぁっはぁっ。

くそっ、いくら求道が軽いって言っても、購買と部室の往復はきつ過ぎる」

「お疲れ様。はい、お茶でも飲んで一息入れて」

「ああ、ありがと」


ズズズッ。

はぁ、運動した後のお茶は美味いぜ。

こたつに足を突っ込んで、ぐでっとすると漸く落ち着いてきた。


「あ、そう言えば、板チョコの代金、結局払ってないじゃないか。

後で払いに戻らないといけない、けど、行きたくねぇな」


そう言いながらポケットから板チョコの残りを取り出してテーブルの上に置く。

と、向いに座った求道と目が合った。

その目は「説明してくれるんでしょ?」って言ってる気がする。


「あーまあ、早い話がな。

そのナッツとこのお茶を一緒に食べると妙な化学反応を起こして有毒物質になるらしいんだ。

解毒しないと10分であの世行きらしい。

で、なぜかその中和剤がこのチョコレートだったって事」

「なにそれ。なんでそんな事を知ってるんだい?

それにそれだったらきみも危ないんじゃないか」

「は?」

「だって、今お茶飲んじゃったし、さっきナッツ食べてたよね」

「あっ!?」


馬鹿か俺は!そう思ったが時すでに遅く、俺の意識は急速に朦朧としだした。

くっ、倒れる前にそこのチョコレートを食べれれば……がくっ。

あ、一応主人公は生きてますよ。

どうやって生き延びたかは、ご想像にお任せします。

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