『第1話』
この国には6つの種類の人種が存在する。
この国の約30%を占め、知能IQが高い、マンカイド。
この国の約20%を占め、自然を愛し植物の力を巧みにあやつる、フロラ
この国の約20%を占め、自然を愛し自然の力を巧みにあやつる、ロギア
この国の約14%を占め、生きていないものに命を与え、その物を操る、リード
この国の約13%を占め、生きているものと契約を交わし、その動物を操る、クリチャー
この国の約3%を占め、知能IQの低い変わりにマインドコントロールやテレパシーを得意とする、キープビリティ
・・・・・。
霧橋 雰風はそう書かれた本を嫌な顔をしながら閉じた。
そして、本を机に置くと机の隣のベットに腰掛けた。
「なぁ?浩介。俺らってそんなに知能低いのかな?」と雰風はルームメイトの浩介に聞く。
「なんだよ…突然!」と浩介は読んでいたマンガを閉じて雰風の顔を見た。
「いや…。だってよ…。」と雰風は言葉を詰まらす。
「さぁ?俺マンカイドに会ったことないし…分かんないよ」と浩介
「だよな…」
「でも一つだけ言えるのは授業で習った通り、俺らは知力に行くための力を透視やテレパシーに使っているということだろうな」と浩介。
「そっか…」と雰風は呟くとベットに横になり天井を見つめた。
雰風はキープビリティである。もちろん浩介も・・・・。
ここは、国政強制少年超能力者更生教育施設である。
キープビリティとして生まれた者は皆、ここで教育を受けるのだ。
キープビリティの大半は金髪をしているが、雰風だけは黒髪に黒い瞳を持っていた。
黒髪に黒い瞳はマンカイドに多く、雰風は友達に羨ましがられていた。
雰風は目を閉じた。
すると、意識がどこかに吸い込まれていく気がした…。
あっ…予知夢…。
そう思った瞬間もう意識はその中に吸い込まれていった。
頭が揺さぶられる感覚、激しい頭痛、もうなにがなんだかわからない…。
頭が真っ白になった…そして、次の瞬間。
雰風の目の前にこの施設の談話室が見えた。
時刻は12時半ごろ、暗い談話室のイスに一人の男が見える。
その男は自分と同じ顔、そして緑色の髪…。
そして、男は、「待っていた」と雰風に向かって言う。
「兄さん!!」という自分の声が聞こえた。
その声と共に目の前が真っ白になり、また頭が揺さぶられ気がつくと、ベットの上だった。
目覚めると同時にひどい吐き気がし、雰風はトイレに駆け込み全てを吐いた。
トイレから出てくると浩介が言った。
「予知夢か?」
「ああ…。」
「大丈夫か?」
「いつものことだ」と雰風。
「そうだが・・・つらいよな?」と浩介。
「キープビリティに生まれた以上避けられねぇよ」と雰風は苦笑いを返す。
「まぁな」と浩介。
キープビリティは予知夢を見るとひどい頭痛や吐き気に襲われるのだ。
「予知夢を見るとキープビリティに生まれたことを後悔するよな」と雰風
「俺は、予知夢見なくても後悔してるぜ」と浩介。
「そりゃそうか」雰風は苦笑いをした。
キープビリティとして生まれた子はその強い能力のためコントロールがうまくいかず自傷行動を起こす子や精神崩壊、強すぎるテレパシーのためにしゃべることが困難な子、予知能力や人の心を読む能力のために現実が分らない子、また現実に意識を戻すことのできない子も存在するのだ。
浩介はその中の一人だったらしく人の心を読む強い能力のために話すのが困難であり、親からひどい虐待を受けたひとりであった。
「この前、佳織が深い予知夢で痙攣を起こして病院送りになったからおまえも気をつけろよ」と浩介は言ってマンガを読みだす。
「ああ。気をつけるよ」と雰風は言って、またベットに横になり、今の予知夢を思い出す。
俺と同じ顔…。
緑の髪…。
兄さん…。
まさか…まさか…いや、そんなはずはない…。
そんなことを思いながら雰風の頭のなかには懐かしい兄の顔が映っていた。
元々、雰風は6つ子の末っ子として生まれた。
しかし、6人全員ちがう人種として生まれてきてしまったのである。
その6人の中で一人だけ緑の髪を持つ兄がいた。
さっき出てきた男はその兄にそっくりだったのだ。
その兄の名は壱。
六人兄弟の長男として生まれ、兄弟唯一のマンカイドである。
彼とは5歳の時以来会ってはいない。
「雰風!!」と突然、浩介に大声で呼ばれ雰風は飛び上った。
「な、なんだよ・・・」
「さっきから呼んでいるだろう?」
「えっ?なに?」
「何?じゃなくって…僕の話聞いてた?」
「あっ…ごめん…全然」と雰風。
浩介は溜息を一つ吐くと、だから…と話を始めた。
「今日の討伐で何人殺した?」
「うん?12人かな?…なんで?」
討伐とは、犯罪や凶悪な犯罪組織やそれに関わっている人を政府の勅令の下で殺すことである。
この国では、キープビリティ(超能力者)はその時だけ能力を使うことができるのである。その理由は、犯罪者が能力者であったりするからである。
「今、治とテレパシーで話しててさ」と浩介
治とは、この施設で一番、テレパシーの力が強い子である。
治の部屋はこの部屋から3つほど隣にあるが、浩介はその部屋からテレパシーで治と繋がっているみたいだ。
「ランキングによるとおまえ1位らしいよ?」と浩介。
「なにが?」と雰風。
「だから…討伐の成績!!」
「あ〜…そう…」と雰風。
「やっぱり3Sクラスは一味、俺らと違うよな?だって治が…」と浩介。
「そんなことない…」と雰風は言い放つと目を瞑った。
暗闇に意識が吸い込まれていった。
それから、何時間たったのだろう…。突然夜中に目を覚ました。
浩介が向い側のベットで寝ている。
雰風はそっと枕の下に隠しといた袋を掴み、ベットから抜け出した。
部屋の唯一のドアのカギをサイコキネシスで音をたてないようにして軽く鍵穴を回すと、ドアのカギが“カチッ”と音をたてて開いた。
ドアノブをひねりながら、ドアの外についているドアノブの警報線を弱いサイコキネシスで切り落とす。
そして、部屋のドアを引いて廊下に出た。
脱出成功である。
初めて夜、部屋から抜け出したのは、6歳のころだったかなぁ?と思いながら雰風は暗い廊下に足を出す。
たしか警備員は二人だったよな?と思いながら、雰風は透視を使って警備員を探す。
おっ!ゲット!!二階の階段と三階の廊下か…
雰風は二人の警備員と意識をつなぎ、歩き始めた。
どうしても生き別れになった兄さんに会いたかったのだ。
確か…兄さんがいるのは談話室…談話室は二階だったなぁ…と雰風は思いながら、階段を上り談話室へとやって来た。
真っ暗な談話室に黒い人影があった。
その人影がこちらを向く…。
「に…ぃ…」そこまで言って雰風は言葉を詰まらす。
その人影は兄さんではなく、クラスメイトの準であった。
彼は強いサイコキネシスの力を持っており、この前友達とケンカをした時にその力で友を殺し、独罰房に放りこまれた男である。
「よう!雰風。」
「準…解放されたのか?」
「そんなことあるはずねぇだろう!!」と準は髪を逆立て雰風に怒鳴り、サイコキネシスを雰風に飛ばす。
雰風の体は宙を舞い壁にすごい音でぶつかる。
「逃げてきたんだよ」と準は笑いながら雰風を見つめる。
「あんなひでぇ場所に何日もいれるか?」と言いながら、準は雰風の頭をまるでボールのように蹴り上げた。
雰風は後ろの壁に強く頭を打って気を失った…。
フン…フ…!
おい!雰風!!
と体を揺すぶられ、雰風は目を開けた。
目の前は頭を打った影響なのか白く霞んでいる…。
ふわふわしたものが頭にくっついている感触がする。
視界は定まらなかったが、誰かが雰風の顔をのぞきこんでいる。
「おい!雰風、大丈夫か?」
自分によく似た懐かしい声が耳に響き、定まらない視界のなかに風に吹かれる緑色の髪が見えた。
「い…ち…兄さん?」
「そうだよ。雰風」と懐かしい声がした。
「そっか…よかった…」と雰風はつぶやきまた意識を失った。
「雰風!」と壱は雰風に向かって叫んでいた。




