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第6話 『彼女の目的』を探す

 その後、意識を回復したチィエルともにガレッドさんに生活課についての話を聞いた。

 簡単に言ってしまえば生活課の利用方法は、まさに冒険者ギルドだった。

 

 市民から様々な頼まれ事が生活課へ寄せられる。

 その依頼に対して、私たちのような旅人や市民が受けて依頼を完遂する。

 完遂後、報告を生活課に持ってくると手数料を差し引かれた報酬が支払われる。という流れだそうだ。

 

 しかし、この平和な街では魔物討伐のような危険な仕事はほとんどなく、専ら仕事のお手伝いの依頼が多いらしい。また失物捜索の依頼も多いが、街の規模に対して依頼を受ける人が少なく事実上放置されており、警邏中に憲兵がたまたま見つける時があるぐらいとの事だった。

 

「まぁ頑張れよ」


 ガレッドさんは最後にそう言って、私たちを送り出してくれた。

 顔に似合わず、いい人なのかもしれない。



◇◇◆◇◇



 役場を後にした私たちは、部屋に戻ってきていた。今後の事について話し合うためだ。


「すぐに帝都に向かうのは無理だな」


 チィエルの第一声がそれである。


「どうしてですか?」

「まず路銀が足りない。それに帝都までは遠いから、ペケの装備も整えないといけないし」

「装備ですか?」


 私は自分の制服をみる。何か問題だろうか?


「服は仕方が無いとしても、その靴じゃ旅は難しいと思うぞ。それに荷物を入れるカバンも欲しいな」

「なるほど……」

「だから、しばらく滞在して依頼をこなそうと思うんだ」


 無許可の依頼を受けた時に、わずかな報酬は貰っていたけど正直かなり心許ないので、彼女が言う事はもっともだ。

 

「わかりました、そうしましょう。ところで……」

「なに?」


 私は前々から疑問に思っていたことを聞くことにした。


「私は図書館を探すのが目的ですが、チィ姉さんは帝都に何しに?」

「あたしが帝都に行く理由?」


 私は頷いて。


「そうです、そう言えば聞いてなかったなと思って」

「う~ん……笑うなよ?」

「……笑いませんよ」


 彼女はカバンをゴソゴソと漁ると1枚の写真を見せてくれた。


 とても大きな褐色の肌の男性が、色白で子供のような女性を抱えて写っている写真だった。

 女性のほうはチィエルにとても似ていたが、身長に似合わない豊満な胸が彼女と違っていた。


「これは?」

「父さんと母さんの写真」


 なるほど、確かによく似ているなと感じた。

 しかし、この身長差だと犯罪ではないかと心配にはなるけど……。


「それで、この写真がなにか?」


 もしや……ご両親が何かの病とか、そう言った重たい話でしょうか?

 そう思って、緊張しながら姿勢を正して話の続きを待つ。

 

「私……成長したら、すごい背が伸びてスタイルもよくなると思うんだ!」

「……はっ?」


 一瞬、何を言われたのか理解できず、思わず間抜けな顔をしてしまったような気がします。


「だって、父さん背が高いし、母さん胸大きいし!」

「な……なるほど?」


 いえいえ、どう見ても身長は母親譲りで胸は父親譲りですよ? 現実を見てくださいね。


「おい! 今、何か失礼なこと考えてなかったか?」

「そ……そんな、とんでもない。それで、それと帝都行きに何か関係が?」


 彼女は目を輝かせて、握りこぶしを掲げながら。


「最近、帝都には『成長促進』のマジックアイテムがあるらしいんだ!」

「それで成長したいと?」

「そうそう!」


 私の緊張を返してほしい。

 なにやら嫌な予感しかしませんが、それが彼女の希望なら仕方ありません。

 私は、その懸念が顔に出ないように笑顔で彼女に答えた。


「見つかるといいですね」



◇◇◆◇◇



 その日の夜、私は夢を見ていた……。

 薄暗いがランプに照らされたその場所はたくさんの書架があり、まだ数日しか経っていないはずなのに懐かしさすら感じた。見覚えはないが、おそらく図書館か書庫だと思う。


 夢の中の私は、いつもの万年筆で、あの『本』に何かを書いていた。

 そう……私が持っている、あの何も書かれていない『本』だ。


 何を書いているのだろう……と、書いている手元をみる。

 文字に靄がかかってよく見えないが、なにかの『物語』だと感じた。



◇◇◆◇◇



「ぐえっ」


 次の瞬間、再びチィエルの重みで目が覚めた。

 相変わらずの寝相のようだ……。


 不思議な夢だった……。でも面白いかも?

 日記代わりに、このチィエルとの冒険を書き綴ってみるのもいいかもしれない。

 完成したら(あるじ)に見せて笑って貰えばいい。

 そんな事を考えていたら楽しい気分になってきた。

 

 こうして、私に新たな日課が加わることになったのだ。

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