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第2話 『目標』を探す★

 私たちは街道を歩いていた。

 荷馬車2台が交差できる程の道幅で、舗装はされていなかったが人々の往来が多いらしく、しっかりと踏み固められている。

 

 なだらかな平原で遥か先に城壁の様な壁も見えた。あそこが目的地のフィスターンだろうか?

 遠くから近くに視線を移すと大きなカバンがユラユラと揺れていた。前を歩くチィエルが背丈に似合わない大きなカバンを背負っているのでカバンが歩いているように見えるのだ。

 あまりの大きさに驚いた私は荷運びの手伝いを申し出たけど、精霊が手伝ってくれるから大丈夫と断られた。

 確かに彼女のカバンの底にはヒゲを生やした小人のような老人がチラチラを見えている。最初はカバンに飾りの人形が付いているのかと思ったが、微かに動いていたのでアレが精霊なのだろうか?

 

 続いて私は自分の持ち物等を確認する事にした。

 現在の私の状況は、控えめに言っても迷子、事実上の遭難状態だ。

 こんな時は、落ち着いて自分の現在の状況を確かめるのが大事な事だと、何かの本で読んだ気がする。


 まず私の格好は『夢の図書館』の勤務時に着ていた黒い制服と黒いベレー帽、帽子にはトレードマークの十字の飾りが付いている。そして、内ポケットには『魔法の栞』が数枚と、鎖の付いた懐中時計、それに万年筆と手のひらサイズの手帳が1つ。それに一冊の『本』を手に持っていた。

 

 この『本』はタイトルも擦れてよくわからなくなっており、中身に関しては空白のページが続いている。

 いったい何の『本』なんだろう?


挿絵(By みてみん)


 身体的な状態としては……

 外傷らしい外傷はないが、この靴で草原を歩いた為かやや足の裏が痛いぐらいだった。

 それより問題なのは、魔力(マナ)の回復が完全ではないこと。魔力(マナ)を回復させるには適度な休息、睡眠や食事を摂る等が必要になってくるが、これについても街に着いてから考えなくてはいけない。


 考えごとをしていながら歩いていたら数歩前で揺れていたはずの巨大なカバンがすぐ目の前にあった。

 慌てて立ち止まり、ふと下を見て見るとチィエルがこちらを心配そうな顔で見ていた。

 

「大丈夫か? 疲れたなら少し休憩するか?」


 私は首を振りながら。


「いえ、大丈夫ですよ」

「それならいいけど、あと少し着くと思うから頑張れ!」


 彼女は、先ほどの様に私の前ではなく、寄り添うように横について歩きはじめた。

 どうやら心配をかけてしまったみたいだ。

 彼女のその見た目から小さい子に心配されるようなバツの悪さを感じつつ、これから向かう街について聞いてみる事にした。


「今、向かっているフィスターンはどんな街なんですか?」

「ん? フィスターン? 良い街だよ。父さんが鍛冶屋やっているから商品とかを卸しに何度か行った事あるけど、市場も冒険者ギルドもあるし、特産は確か麦だったかな? パンがとても美味しいんだよ」

「図書館はあるのかな?」


 その言葉に、彼女はきょとんとした顔で首を振りながら。


「図書館って、さっき言ってた本がいっぱいあるって所だよね? だぶん無いんじゃないかな~本は貴重品だしね」


 その答えに少し落ち込んだが、気を取り直して彼女の目的を聞いてみる事にした。


「そう言えば、チィ姉さんは街にどんな用事なんですか?」

「あたし? あたしは冒険者になる為にギルドに向かっているんだ。それに最終目的地はあくまで帝都だし」

「冒険者ですか?」

「冒険者になると『冒険者免許』が貰えるんだよ、それがあると色々と便利になるんだ」

「なるほど……」


 そうなると……私も『冒険者免許』を取ったほうがいいのかも……。

 それが直近の『目標』になりそうかな?

 


◇◇◆◇◇



 その後も他愛もない話をしていると、大きな門が見えてきた。どうやらフィスターンの正門のようだ。

 私たちが門に近付くと簡単な鎧を着た兵士風の男が声をかけてきた。

 

「おぅ、チビ助! また親父さんの商品を卸しに来たのか?」


 どうやら彼はここの門番で、彼女とも顔馴染みのようだった。


「ガー! チビ助言うなっ!」


 彼女は両手を振り上げ、チビ呼ばわりに抗議しつつも答えた。


「今回は冒険者になりに来たんだ!」


 それを聞いた門番は、大爆笑しながらチェエルの頭をポンポンっと叩く。


「お前が冒険者? はははっ、そりゃいい。身長制限がなけりゃいいなっ」

「ウガー!」


 怒った彼女の頭を押さえつけながら、彼はこちらに視線を向けてきた。


「ん? お嬢ちゃんは見ない顔だな?」

「ペケと言います、よろしくお願いします」


 差し出した私の手を握り締めながら、彼は笑顔で答えた。


「おぅ俺はドーガだ、よろしくなっ。可愛い子なら大歓迎さ、ようこそフィスターンへ!」


 色々聞かれるかと警戒していたけど、彼は簡単に街の中に通してくれた。

 門番の職責としてはどうかと思ったが、平和な街だとこんなものなのだろうか?

 

 とにかく、私たちは最初の目的地であるフィスターンへ辿り着いたのだった。

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