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第14話 『繋がり』を探す

 2日後、トルターンの領主スイリー家の一室に私たちはいた。

 広く豪華な作りの一室で、ソファーに私とチィエルが座っており、テーブルを挟んで向かい側にミレーユと生活課のレーン・スイリーが座っている。

 

 教会でなんとか犯人を倒した私たちは子供を救出して、その縄で気絶した犯人たちを縛り上げ後、達成感と極度の疲労で眠ってしまっていたらしい。2日掛けてフィスターンから歩いてきて、そのまま事件のために奔走した上に、あんな大立ち回りをしたのである。最後が締まらない感じになっても責めないで欲しいものだ。

 

 その後、憲兵隊によって領主の息子であるレオナルド・フォン・スイリーと共に、スイリー家に運び込まれた私たちは、食客としてそのまま屋敷に滞在することになった。レオナルドも特に外傷もなく無事とのことだった。

 

 今日ミレーユとレーンの2人がスイリー家を訪れたのは、事の経緯を私たちから聞くためである。


 私たちが現場で何が起きたのかを話すと、紅茶を一口飲みレーン・スイリーが口を開く。

 

「此度の働き見事であった。……お主らのお陰で、無事にレオを取り戻すことができた。改めて礼をいう……」


 レオとは、おそらくレオナルド・フォン・スイリーの事だろう。

 レーンさんに褒められて、ふふんっとチィエルは自信満々に胸を張っている。


「……が、お主ら私が依頼した時、何と言ったか覚えているか?」


 ギロリと鋭い眼光が私たちを射抜く。


「見つけるだけでよい。あとは憲兵に任せよと申したはずよな?」

「……はい」


 その後、しばらく小言が続いたけど、怒られているというよりは諭されている感じだった。しかし、それでもチィエルには効いたらしく、小さい身体がさらに小さく見えるほど縮こまっていた。

 

「……と色々申したが、感謝していることは事実だ。領主は多忙ゆえ会いに来れぬが、この屋敷に好きなだけ滞在してよいとのことだ。何か必要なものがあれば家令か女中に言うがよい」

「えっ、あ……はい」


 レーンは席を立ちながら。


「すまないが、私も忙しくてな……後の事はミレーヌと詰めてくれ。何かあれば役場まで来るといい」

「はい、ありがとうございます」


 レーンが部屋から出て行くと、ミレーユが革袋を取り出してテーブルに置く。


「まずは今回の報酬となります。どうぞお納めください」

「え? 報酬でるの!?」


 身を乗り出したチィエルに対して、ミレーヌは首を傾げながら。

 

「当然です。お二人は大婆様からの依頼として捜索に参加していただいたのですから」

「でも軽い……」


 チィエルが革袋を持ち上げながら文句を言う。しかし、革袋を開けて中を見ると顔がぱーっと明るくなり。


「金貨が2枚も!」


 この国の金貨の価値は、1枚で慎ましやかであれば、概ね4人家族が1月ほど暮らしていける程度らしい。

 私の分と合わせれば4枚の金貨が手に入り、これだけあれば帝都までの路銀の心配なさそうだ。

 

「取締りの結果、あの誘拐犯は隣の領主との関係をほのめかしているのです。あのままレオ君が攫われていれば、下手をすれば内戦に発展したかもしれません。それを回避出来たのですから当然の報酬です」

「そんな大事に……」


 ミレーヌは、紅茶を一口飲み話題を変える。


「それで、お二人はこれからどうなさるんですか? しばらく滞在してゆっくりしていかれてはどうですか?」

「いえ、すぐに帝都に向けて出発しようかと……」

「帝都ですか!? だいぶ遠くを目指しているんですね。乗合馬車でも15日ほど掛かりますよ?」

「馬車で半月!?」


 私の予想より、帝都はだいぶ遠いようだ。

 そんな事を考えていたら、チィエルが両手をバンザイのように振り上げながら。


「せっかくだから、この街で観光していこうー!」

「えっ?」


 どうやら彼女は、大金を手に入れて気が大きくなっているようだった。

 路銀もあるし、この街に滞在する必要はなくなったけど、盛り上がっている彼女を見て少しならいいかと諦めた。

 

「そうですよ! それがいいです、私が街を案内しますよ。ここには色々いい所がありますからね」


 こうして、私たちはしばしの間トルターンへ滞在する事になった。

 

 

◇◇◆◇◇



 トルターンへ滞在する事、5日目。

 今日も大雨が降っていた。容赦なく降り注ぐ雨が窓をドドドッと叩き、雨水が滝のように流れている。

 

 この数日で、ミレーヌの案内で街の色々の所を訪れてみたけど、やはりこの街にも図書館はなかった。

 このスイリー家の書斎には少なからず本があったが、私が知りたい情報は得られなかった。

 

 今日は、この書斎を借りて読書と執筆を進めている。

 チィエルは、どうやらレオナルド君と仲良くなり、今日は屋敷内で遊んでいるようだ。

 

「ふふふ……見た目の年齢が近いからかな?」


 私は、そんな事を思いながら万年筆を走らせていた。

 執筆は順調に進んでおり、すでに半分は越えている。自分が思っているより、物語を書くことが好きだったのかもしれない。

 

「このペースなら、帝都に着く頃には書き終える事ができるかも知れない。チィ姉さんが色々やってくれるから書くことに困らないし……」


 チィエルとの日々を思い出しながら微笑む。

 キリがいい所まで書き上げると、私は内ポケットから『魔法の栞』を『本』に挟んでみた。


 この『魔法の栞』は、本に挟むとその本の物語を、(あるじ)の元に転送できるという魔法……しかし栞は一切反応を示さなかった。

 今までに何度か試していたが、捜索魔法(サーチ)浮遊魔法(レビテーション)は使えても、なぜか『魔法の栞』だけは発動できていなかった。

 

 私が『夢の図書館』から離れて、すでに1月ほど経っている。ひょっとしたら、(あるじ)との『繋がり』が切れてしまったのかもと、そんな不安に駆られる。


 そんな不安を払うように首を振る。


 やっぱり早く『夢の図書館』に帰らなくてはいけない!

 

 私は決意を新たに席を立つと、帝都行きの相談をするためにチィエルの元に向かうのであった。

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