第13話 『可憐な少女』を探す★
世界が廻る、私が廻る?
視界がぐるぐると廻っている感じがする。気持ち悪い……。
こんな感覚は初めてだ。しかし、体内に魔力が溢れているのを感じる。
この感じ、ひょっとして……。
「……捜索魔法」
軽めに捜索魔法を唱えると、スーッと気分がよくなり、ぐるぐる廻っていた視界が正常に戻った。
これは、魔力酔いと呼ばれる症状だ。
過剰な魔力が急激に体内を溢れると、船酔いに似た症状がでることがあると聞いた事がある。通常は成長過程の魔法使いが身体の成長と魔力の成長のバランスが崩れる事でおきる事が多いらしい。
対策は簡単で、過剰分の魔力を消費することで、適正な状態に戻る。
しかし、異常な回復量だった。本当になにが入っているのか聞きたいような、聞きたくないような……。
私は、捜索魔法を展開したついでに周りの状況を確認をすることにした。
「人」
私を含め、5つの赤いマーカーが表示された。どうやら建物内に潜んでいる敵などはいないようだ。
それと……やはり近くに憲兵隊は来ていない。
私は捜索魔法を消し、内ポケットから手帳を取り出すと『入り口付近で気を逸らす』と書き込む。
それを彼女がこっちを見た瞬間、窓に貼り付けた。
彼女が頷くのが見えたので私は行動に移る事にした。
私の計画は、こうだ。
まず正面から私が姿を見せて、彼らの注意を引き付けてから逃げる。続いて入り口を塞いで、彼らが追いかけて来れないようにすると同時に、教会から逃げれないようにする。後は隙をついて脱出したチィエルが何とかしてくれるはずだ。
この計画のために、どうしても魔力の回復が必要だったのだ。私は玄関側に回り込み、石像を確認する。
そして呼吸を整えて、震える手を押さえてから正面の扉を開け放った。
驚いた犯人達は、こちらを向いて怒鳴り声をあげる。
「誰だ!?」
私は仁王立ちで、彼らをビシッと指差しながら言い放つ。
「貴方達の悪事も……ここまでです!」
……言ってみたかったのだ。
ヒーローの到着を期待するほど純粋にはなれなくても、物語のヒーローに憧れる気持ちぐらい私にだってある。
それに彼らの注意を、こちらに引き付けなくてはいけなかった。
「なんだ、このガキ! こいつの仲間か!?」
「捕まえろ!」
私を捕まえようと、男達がこちらに向かってきたのを確認すると、すぐに大きな石像のところまで走って逃げる。
そして……私は、その石像を持ち上げた!
◇◇◆◇◇
実は怪力少女だった!
……なんて事はなく手品のタネは、ただの浮遊魔法だ。
この魔法は、接触した物を浮かせる魔法で、対象物が重くなるほど魔力の消費量は高くなるけど、いくら大きくても固定されていない石像であれば、浮かせることができる。
簡単な手品だけど、視覚的効果は抜群だった。
「な……なんだ、こいつ!?」
「化け物か?」
ハクローのせいで、多少はみすぼらしくなっているものの、私のような『可憐な少女』を化け物呼ばわりとは……。
驚いて足を止めた彼らに向かって、私はその石像を玄関に向かって投げた! ……正確には投げたつもりだった。
私のイメージでは石像が扉に当たって入り口を塞ぐ予定だったけど、ドシーンっと自分の目の前で落ちた石像の振動と巻き上がった土煙で、私は後ろに転がってしまった。
「いたたた……いったい、なにが?」
至って簡単な話だった。
石像から私の手が離れた瞬間、浮遊魔法の効果が切れたのだ。自身の重量を取り戻した石像が、そのまま目の前で落下しただけだった。
土煙がはれると、ニヤニヤした顔の男たちは私のところまで来た。
そして、私を捕らえようと手を伸ばしながら……。
「なんだ、見かけ倒しか? おら、こっちこいや!」
次の瞬間、メギィっという鈍い音と共に、私の視界は再び白に覆われた。
「ガウッ」
私に向かって伸ばした男の手に、横から飛び出してきたハクローが咬みついたのである。
ハクローは、そのまま横に男を引きずりながら地面に着地すると、激痛に顔を歪めた男の悲鳴が響き渡る。
「うがぁぁぁぁ…手がぁ……手がぁ!」
男の腕は咬み砕かれており、ありえない方向へ曲がっていた。
ハクローの姿に怯んだもう一人の男は、逃げようと振り向いた瞬間……騒ぎに乗じて脱出してきたチィエルの一撃が頭部に振り下ろされていた。
◇◇◆◇◇
その後、しばらくして教会に駆けつけた憲兵隊が見たものは、気絶して縛られた男達。
すやすやと眠る男の子と、倒せた石象を背に満足そうに寝ている少女達だった。
「ペケさん、チィエルさん! 大丈夫ですか!?」
ミレーヌが二人に駆け寄る。
「レオナルド様だ! ……それに少女たちの救護も急げ!」
「はっ!」
「男達の確保も忘れるな!」
憲兵たちは、すばやく的確な動きで三人を馬車に運び、別の馬車に犯人を詰め込んでから、急ぎトルターンに向けて馬車を走らせた。




