第11話 『子供』を探す★
受け取った書類に目を通しながら役場の入り口で待つこと数分……ミレーヌが建物内から走ってきた。
先程と違い腰には大きめのポーチがつけられていた。
「お……おまたせしました」
「大丈夫ですか?」
彼女は、はぁはぁと息を整えながら頷く。
「それで、何を持ってきたんです?」
レーンさんは何か秘策ありといった感じだったけど……。
捜索魔法使う前に、まずそれを確認しなくてはいけない。
「えぇ、これを見てください」
彼女はそう言いながら、腰のポーチの蓋を開いて中を見せてくれた。
ポーチの中にはいくつか敷居があり、6本ほど小瓶が入っていた。
「これは?」
「Mポーションです!」
彼女は自信満々に胸を張りながら、その小瓶を1本渡してきた。
「Mポーションというと、マジックポーションとか? ……ひょっとして魔力が回復する感じのアイテムですか?」
魔力を回復させるには、通常十分な睡眠や飲食といった休養が必要だ。
飲むだけで回復できるなら、それは凄いアイテムだけど……そんな便利アイテム、私は聞いたことがない。
「いえ、名前はミレーヌポーションです。私の自信作なんですよ、回復効果は自信ありです!」
「えっ? じ……自作ですか?」
「えぇ、薬剤師になるために大婆様に色々教わってるんですよ」
彼女は嬉しそうに目を輝かしているが、いったい何が入っているんだろうか?
私は受け取ったMポーションを自分のカバンに入れながら。
「……必要になったら飲ませてもらいますね」
「いいな、私にも1本くれ!」
いつの間にか復活したチィエルが、ミレーヌのスカートを掴んでせがむ。
正直、姉に物をせがむ妹にしか見えないが、彼女の方が2つほど年上だ。
ミレーヌから1本受け取ると、さっそく開けて飲みだした……が、一口で口から瓶を離して。
「くさい……まずい……にがい……」
「良薬は苦いのですよ! 色々な薬草を煎じた物を抽出して作ったものですから」
本当に何が入っているのだろうか? ここまで強烈な臭いがしてくる。
「それで、だいじょ……いえ、効果はありそうですか?」
「ん~……少しだけ?」
「まぁ一口だけですからね」
少なくても効果はありそうだ。
本当にピンチの際は飲んでみるしかないかな……そうならないことを祈るばかりだけど……。
◇◇◆◇◇
しばらくして、私たちは子供が攫われた現場に来ていた。
書類の情報から誘拐された子供の名前は「レオナルド・フォン・スイリー」
現領主の三男で、年齢は8歳、身長はチィエルぐらいだろうか?
どうやら、レーンさんやミレーヌの遠縁にあたるらしい。そう言えば、レーンさんもスイリーだったな……。
とても元気な子なようで、たびたび屋敷から抜け出しては庶民の子供たちと遊んでいたらしい。今回はそこを攫われたみたいだった。
今のところ、身代金等の要求はない。
事件が発覚したのは1時間ほど前で、一緒に遊んでいた子供が目撃をしている。
目撃情報から逃げた方角までは判明しているが、そこからの足取りがつかめていないとのことだった。
「ここで攫われて、あっちに逃げたのか?」
「書類によると、そうみたいですね」
「じゃ、ここで一回捜索魔法を使うね」
私はそう言うと、手を合わせて魔力を集中させていく、今回は方角がわかっているので全周囲に地図を広げる必要はない。
「捜索魔法」
手をその方角へ広げる感じで、かなり広範囲に地図を展開する。
すぐに気絶するほどではないが、かなりの脱力感……。
続けてワードを唱えていく。
「レオナルド・フォン・スイリー 8歳」
赤いマークが1つだけ地図の端に表示された。
「やった! さすがペケ!」
「ここに行けばいいんですね?」
「ミレーヌさん、ここの場所わかります?」
「う~ん、ここが西の正門で……そのずっと先……あっ、廃教会かも?」
廃教会?あぁ、この街に来る時にみた……あの教会?
突然、意識が途絶えそうになってバランスを崩してしまい、捜索魔法の効果が消えた。
「だ、大丈夫ですか?」
ミレーヌが心配そうにMポーションを差し出してくるが、私は首を振りながら。
「大丈夫……大丈夫だから、その教会に急ぎましょう」
私たちは急いで、その教会跡地へ向かうことにした。
◇◇◆◇◇
街道をフィスターン方面に進み、教会付近まで来た私たちは、森の中で身を潜めていた。
教会の外観は、壁にヒビが入って草に覆われており、窓も割れていたが、今すぐに倒壊が危ぶまれるほど壊れてはいなかった。
また玄関の前には、かなり大きな獣の石像が2体あった。教会の守護獣かなにかだろうか?
偵察に出たチィエルが身を隠しながら建物まで近付き、窓から中を覗き込んでいる。
「大丈夫でしょうか?」
「チィ姉さんなら、きっと大丈夫」
しばらくして、チィエルが戻ってきた。
「中には縛られた子供が1人、あと男が2人いたぞ。薄暗かったけど、たぶん攫われた子供だと思う」
「子供に怪我とかはなかった?」
「たぶん、してなかったと思う」
「とりあえず、一安心ね。さて、これからどうしましょうか?」
私たちは、安堵して息を漏らしたながらも、次の行動について話を始めた。
最初にミレーヌが提案する。
「大婆様に連絡して、憲兵さんを派遣してもらいましょう」
もっともな意見だ。
賛成しようと手を上げようとした瞬間。
「相手は2人だし、私だけでもなんとかなる。今すぐ助けよう!」
ここでチィエルが強行策を提案する。
子供の状況が正確には不明である以上、早く助けた方がいいのもわかるけど……。
ミレーヌはわからないけど私は戦えないし、チィエルだけでは不安だ。
「やっぱり確実に助けるために憲兵さんに呼びましょう、チィ姉さん」
「なんで!?」
自分の意見が通らずチィエルは不服そうだったが、ミレーヌは頷いて。
「それじゃ、私が呼んできます! お二人は、ここで教会の様子を見張っててください」
そう言うと、ミレーヌは茂みを抜け街道を駆け出した。
足が速くなる魔法でも使ったのか、あっという間に見えなくなった。
あれなら思ったより早く憲兵が来てくれるかもしれない。
ミレーヌを見送った後、教会の見張りに戻ろうと振り向いた瞬間、私の視界は白い何かで覆われていた……。




