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秘密の毎日  作者: エニシ
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第二話  悪魔な弟


「なあ兄貴、今暇?」

「全然」



 脱ごうとした学ランを全速力で再び着込む。

 ノックもなしに入ってきた中学二年生の弟――遠山遊馬は今日も嘘くさいおば様キラースマイル全開だ。


「ちっ。外したか」

「おい」

「うん? 何か聞こえた?」


 なぜか帰宅後着替えだすときを見計らってやってくる弟。ここまで下心丸出しだといっそのこと尊敬する。


 俺の中学二年の『あのとき』までは、そんなことはなかったはずなのに。じりじり下がると、弟は、そそそ、と近寄ってきた。


「何だよ」

「別に。可愛い弟が兄貴と仲良く遊ぼうとしているだけさ」

「可愛いとか、そんな言葉は小学校までで終わりだ馬鹿やろう!」

「別に。昔散々あちこち連れ回されて生傷絶えなかったあげく、放置されたことを根にもっているとか、そんなことは全然ないから」

「………」


 やばい。目がマジだ。


 昔は物静かな大人しい良い子だったのに。今は外面だけが良い腹黒中学生。

 確かに俺の子供時代はおいたが過ぎた気もするが、なんて執念深いやろうだ、こいつ。



 三時のオヤツの時間だったから裏山に遊馬を忘れてきたとか、ケルベロス(隣家のブルドッグ)を遊馬にけしかけたりとか、某アニメの必殺技をガチで試したりとか、野球のボールが窓を割ったとき全速力で逃げて遊馬だけが取り残されたりとか…………まあ、色々あったけど。



 なんて執念深い奴だ!


 部屋にあるベッドを境に牽制しつつ、しばらく鬼ごっこ。行ったり来たりを繰り返していると、弟が突然ベッドを飛び越えて俺の腕を掴んだ!


「捕まえた!」

「ぎゃあああああああああ。ちょ、だめだって。おい、離せ!」

「ふふふふ。昔ならいざ知らず。今の俺と兄貴の腕力はもうすでに逆転しているのだよ!」


 手をワキワキさせながら遊馬は俺をベッドに押し倒し、馬乗りする。おい、ベッドかよ。おいおいおいおい。わー、わー、わー。駄目だろ。規制が入るよ。ちょっと、おい。


 そして、その遊馬の手が近づいて………。




「ぎゃははっははははっははははははっはははっは」

「こちょこちょこちょこちょこちょ」

「だ、だめ……お、おおおおお、おねがあああああああああああああああ!」








 少々お待ちください。










 散々脇やらわき腹やらをくすぐられバタンキュー。


 ご丁寧に学ランは脱がされ、胸に巻いたサラシが解け掛かっている。馬鹿。危ないだろ。ぐでんぐでんになりながらも、学ランを胸の前に抱く。


「バーカ、バーカ。遊馬のバーカ」

「記念」


 パシャ、と携帯でベッドに横たわる俺の姿を撮られる。え? ちょっと。


「ば、消せよ! おい、こら。どこ行く!」

「何って。もう用済んだし。ごちそうさまでした」


 まさしくそれは嵐。

 ばたん、と扉が閉まり、弟のいない部屋にあるのはただ惨状だけ。呆然としつつ、ピロリロリン☆、と鳴り出した携帯を無意識のまま開き、メールちぇっく。


 差出人。弟。

 題名。エロっ^−^

 そして貼り付けられた、写メ。


 シナをつけたままベッドに横たわり、裸の肩を晒し、抱いた学ランの合間からはサラシに巻かれた大きな胸の谷間が見え、頬を赤く蒸気させた男装女らしき人物がそこに居た。


 うん。俺だ。



「遊馬ぁぁぁっぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!」



 それから遊馬の部屋で死闘を繰り広げられるどころか、返り討ちにあって、あげくに更なる汚点を残してしまったのは語らない。語らないったら、語らない!





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