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魔法使いの弟子の女子高生  作者: アニマルSP
1/4

冒頭・出会い

教室の窓際、一番後ろの席


アニメや漫画で主人公が座っている席。


大抵その前には腐れ縁的な友人が座って、休み時間にはくだらない話を持ちかける。


もしくは、その隣はいつも空席で、突然の転校生がその席に座る。


あるいは、先生から目につきにくい席ということで、授業中に下らないけど壮大な事をこっそり行う。


そんなのはフィクションの話。


現実はもっと退屈で窮屈。


後ろの席だから毎回前の人のプリントの回収をしなくてはいけないし。


試しに教壇に立って見ればわかるが、窓際の後ろの席だからと言って隠れて何かするのに向いているわけではない。


むしろ教壇の目の前の席の方がよっぽど先生の死角である。


だから、窓際後ろの席が自分の場所になったとしても大人しく授業は受けなくてはいけない。


高校2年になり、クラス替えがあった。


新年度がはじまった当初は出席番号順で席は決まっていて、私の場所は今とは違うところだったが、担任の意向で五月のゴールデンウィーク明けに席替えを行うこととなり。


晴れて今の場所になったのだ。


前の席には話したこともない静かな男子。


隣の席は空席ではなく、クラスの中心人物の腰巾着な女子。


退屈で窮屈な私の居場所。


いじめられてるわけでもなければ、受験勉強に神経をすり減らし、必死に勉強してる訳でもないのにこんな風に考えるのは私のわがままだろうか。


「そんなのワガママだよ!」


脳内にえっちゃんの声が響く。


えっちゃんは私の友達。


3月まではクラスメイトだった。


席替えのあった日に明日からの私の場所を話したところ、そう言われた。


窓際なんて最高じゃん!私なんて最前列の真ん中の左隣。何かある度に当てられるんだから….


教壇の目の前が死角なのを教えてくれたのもえっちゃんだ。


漫画やアニメが大好きなえっちゃん。


私の席が羨ましいと言っていた。


「そもそも窓際ってだけで最高だよ!いくらでも妄想にふけれるよ」


えっちゃん曰く、都会の人は電車の車窓から見える景色に忍者を走らせるらしい。


こんな田舎じゃ忍者が走り続けられるほど建物がないけど。


窓の外を眺めながら妄想にふける。


ある時は忍者を走らせ。


ある時はテロリストが学校に攻め込む(校舎から見えるところから侵入するテロリストがいるのか?)


ある時は校門に大量のゾンビが押し寄せる。


目をキラキラさせながらそんな妄想を垂れ流すえっちゃんを思い出し、この子は本当にアホだなぁなんて考えて、なんだか微笑ましくなって心の中で笑ってしまう。


せっかくだから私も窓の外を眺めてみる。


えっちゃんのような微笑ましい妄想は出来ないけど。


遠くに見える木が何か考える。


それにとまっている鳥の気持ちになってみる。


カートを押しながら歩く腰の曲がった老婆を見つける。


あの人はこれからどこに向かうのだろう。


雪は溶けたもののまだまだ寒いこの町で一人でどこに行ってしまうのだろう。


老婆が見えなくなったので、空を見上げる。


雲ひとつない五月の空。


真っ青な空を見つめていると吸い込まれそうな気持ちになる。


数学の菅野の声がどんどん遠くなる。


あと少し


上と下の瞼が合わさってしまう。


その時だった。


ひかり


確かに何かが光った。


太陽ではない。


青空の上。


暮れかけの空で見る金星のような一粒の光。


あれは一体…


鳥か飛行機か、はたまた遠くの国からのミサイルか。


それともただの見間違いか。


また光った。


五月の空は眩しいから必死に目をこらす。


また光った。


どうやら謎の"なにか"は点滅しているのか、その光は瞬いている。


もっとよく見よう。


顔だけでなく身体も窓に向けるために静かに椅子を引いた。






あまりに一瞬の事だった。


椅子を引く時に音が出ないように両手で椅子を押さえる。


そして尻に密着させたまま持ち上げて後ろに引く。


この時おかしな事をしている事がバレないように数学の菅野を見ていた。


黒板に数式を書くのに夢中である。


文章にすればこれくらい。


実際にはほぼ一瞬。


椅子を引くために窓から目を離した、その一瞬の後。


轟音と衝撃は私の場所から私を吹き飛ばす。


耳がよく聞こえない。


周りを見回すと、私だけじゃなくてクラスメイトみんなが窓と真逆の廊下側へと吹き飛ばされていた。


前の席の男子も、隣の女子も。


隣の女子はスカートが捲れて下着が丸見えだ。


それを見て突然我に返り立ち上がる。


こんな状況だ、誰も下着なんて見ようと思ってなんかいないのに。


教室を見渡すと机やロッカー、生徒も菅野もみんな吹き飛ばされている。


中には頭から血が流れてる人もいた。


窓ガラスは全て割れ、退屈で窮屈な私の場所は風通しの良い何もない場所になっている。


一体何があったのか。


まだ耳はよく聞こえない。


さっきの光のことを思い出す。


あれはまさか本当にミサイルだったのか。


えっちゃんの妄想も真っ青の現実が降ってきたのか。


制服についた汚れを手で払い、私の場所に歩く。


菅野が何か叫んでいるがよく聞こえない。


多分、「動くな」とか「落ち着け」とか言っているんだろう。


私の場所に立ち、先ほどの光があった場所を見つめる。


そこには、同じ光がまだあり、より強く瞬いている様に見える。


またさっきのミサイルが来るのかも知れない。


急いで逃げなきゃ。


みんなにも教えなきゃ。


でも、それ以上にあの、光を見つめていたい。


さっきは目を離して見れなかったけど、今回は瞬きすらしないで、絶対に見逃したくない。


その考えが勝ってしまう。


下手すれば命を落とすかもしれない。


今みんなに教えればクラスメイトの命を救う事ができるかもしれない。


そんな自己保身や英雄願望よりも好奇心が勝ってしまう。


本当にミサイルなのか。


いったい何がこの惨状を作ったのか。


やがて光から一粒の影が現れた。


逆光だ、加えて先ほどの衝撃で頭も打っているのか、目を凝らしてもそれが何かはハッキリと分からない。


もっと近く。


もっと近く。


影は粒から塊へ。


これは…


そう思った時、後ろから肩を掴まれる。


「早く来い!」


菅野だ。


振り返るとクラスメイトはみんな二列に並び、教室から避難する準備をしている。


いつの間にか聴力も戻っていて、校内には避難訓練でしか聞かない様な放送が流れ、泣いている声や、痛みを叫ぶ声がいたるところから聞こえている。


「一番後ろに並べ!」


菅野に促されるまま列の最後尾に加わる。


「決して押さないで、落ち着いて、グラウンドに避難するからな」


菅野の指揮で二列になった私たちは校舎を歩く、


周りを見渡すと他のクラスの生徒も、同じ様に列を成し歩いている。


中には先生に肩を貸してもらっている人や、担架で運ばれる人、校内の窓ガラスは、いたるところで割れていて、衝撃の凄さを物語っている。


えっちゃん、大丈夫かな


避難中にえっちゃんの姿を見つけることはできなかった。




グラウンドに各クラスごとに整列して担任が点呼をとる。


幸い私のクラスは全員いるようだった。


隣の隣のクラスの列には、えっちゃんもいた。


後ろ姿しか見えないけど、あれは間違いなくえっちゃんだ。


良かった、一安心だ


でも本当の事を言えばえっちゃんよりも気になる事がある。


謎の光とそこから出た影。


菅野に止められてしまったが、あれは間違いなく、人間だ。


明星のような光の点滅と、突然の衝撃。


そして、そこから現れた人。


私以外誰も見ていないのか、それともそんなこと爆音と衝撃で記憶から消えてしまったのか、他に空を見上げる人はいない。


私だけ、光のあった一点を強く見つめている。


すると、グラウンドに避難してからは見つけられなかった光がまた現れたではないか。


それもさっきより更に激しく、瞬いている。


私は目を凝らして光の方を見つめ、影を探す。


周りはざわついていて、全てのクラスの避難が完了していないのか、先生達が慌ただしく、動き回っている。


私はただただ光を見つめていた。


光は徐々にその瞬きを強めているように見える、遠くから迫るパトカーのサイレンのように。


だんどんと光は強くなる、まるで私たちに危険が迫っていると知らせるように。


「なにあれ!」


一人の女子が声を上げる。


視線の先には光があった。


確かに光は、もう目を凝らして探さずとも明らかにその異常性を示していた。


他の生徒も見つめる。


先生も。


なんだあれ…


なんの光なんだ…


まさか隕石?


みんな口々に光について話す。


でも誰もあれが何だか分からない。


「…ねぇ、あれ近づいてきてない?」


誰かが言った。


光は瞬きを強めているのではなく、近づいているから徐々に明るさを増しているのだ。


本当だ…


近づいてるよ…


こっちに向かってないか…?


皆の声には不安の色がハッキリと現れている。


私はというと、光が近づいているという事は影も近づいているんじゃないかと思って、ひたすらあたりをキョロキョロと見回していた。


と、その時。


「キャー!!!!」


一人の女子がけたたましい悲鳴を上げた。


やだ!こっちに来てる!近づいてるよ!!早く逃げなきゃ!!!


一人のパニックはあっという間にその場にいる皆に伝わる。


同じように嘆き叫ぶもの、怒号をあげるもの、その場に座り込み動けなくなるもの。


先輩も後輩も、先生も生徒も関係ない、皆が恐怖によっておかしくなっている。


何人かの生徒が校門に向かって走り出した。


それに続くように何人も、何人も走り出す。


いまだパニック状態になっていない先生が必死に止めようとするのを振り切り、数十人の生徒が列を離れかけて行った。


そのパニックに誰もが気を取られている隙に、光はもう私たちの頭上に迫っていた。


駆け出した生徒を見つめる人の中に、私以外に光りがすぐそこまで来ていることに気づいている人はいただろうか。


誰一人として声は上げていない。


きっと気づいていても、誰も声を上げることはできなかったと思う。


頭上十数メートルまでいつの間にか迫っていた光は、その大きさは校舎の半分もどもあり、金星のようだと思った光は、もっと暖かく焚き火のような色だった。


きっと気づいていてもその姿に見惚れてなにも言えなくなるに違いない。


そんな光だった。



その光は不意に動き始めると、私たちの頭上を離れ、走り出した人たちの頭上に移動し、そして落下した。


光の中心から私までの距離は100メートル近くあった。


それでも、ものすごい振動と風、それも熱風が身体を包む。


瞼を閉じなきゃ眼球が蒸発してしまう、そんな事を考えてしまうような熱さの風。


その熱が風と共に去ったあと、瞼を開けると、そこには巨大な穴があった。


さっきまで数十人の人がいたところには、ぽっかりとボウルのような黒い穴が空いていて、ところどころから煙が上がっている。


何かが焦げた、嫌なニオイがする。


残された私たちは誰もが叫んだりはしなかった。


それもそうだろう。


突然、謎の爆発で校舎が破壊。


みんなで避難したら、巨大な光の球が降ってきて、知り合い十数人が死んだんだ。


何が起こったのかは、自分で見ているから分かる。


だけど、頭の理解が追いつかない。


私はというと、相変わらず影を探していた。


落ちた光のこと、最初の爆発のこと、なにも分かっていないけど、その影は人で、そいつが現れれば全部の謎は分かるって。


理由はないけど確信していた。


だから探す。


その時、ボウル状の穴から音が聞こえた。


みしぃ、みしぃとまるで古い床板を力を込めてゆっくりと踏みしめるような音。


周りのみんなも気づいている。


なんの音だろう。


近づいてみるにはあの穴は恐ろしすぎる。


音の感覚は徐々に短く、そして大きくなっていく。


そして…


突然の破裂音。


穴の中心からはモクモクと黒い煙が上がっている。


私たちはそれをただ見つめていた。


煙は高く高く立ち上る。途中で消えることなく、月まで届くのではないかという勢いで上っていく。


突然、煙が上昇をやめた。


それどころか、折り返して戻ってきたではないか。


そして、立ち上る煙と下りてきた煙、二つは合わさり巨大な黒い塊になった。


真っ黒な塊。


最初は球状のかたまりだったそれは、徐々に形が崩れていく。


塊のなかから二本の煙が飛び出す。


それはまるで、巨大な腕のようで、この煙が命を持った生き物のように見えてくる。


すると、突然、塊は腕の一つを大きく振りかぶり、校舎へと下ろす。


驚いたことに煙の腕がぶつかった校舎は、何か巨大なモノに押しつぶされたかのように真っ二つに壊れてしまった。


気づけば煙はスッカリと人の形を成していて、穴の中心から立ち上がり、まっすぐとこちらを見つめている。


厳密には、その煙の顔に当たる部分には目も口も鼻もないから、本当に見つめているのかは分からないが。


私には見つめているように思えてならなかった。


その煙の巨人は穴から這い出すと、こちらに向かって歩いてくる。


さっきまで現実と非現実の狭間で停止していた思考も、命の危機では動き出す。


周りの人たちは叫び、逃げ惑う。


巨人はあっという間に私たちの側まで来ていて、逃げ出した人を腕で掴み、投げる、踏み潰す。


悲鳴と血しぶきと地震のような振動と。


地獄絵図とはこう言うものかと思わずにはいられない。


逃げ惑う人の中にえっちゃんがいた。


良かった。光の球につぶされてなかったんだね


でも、なんでそんなに怯えた顔をするの?


えっちゃんが妄想してたことよりも、もっと現実離れした事が起こってるんだよ!


リアリティなんてどこにも無い。


そんな出来事が目の前で起こっている。


創作の世界に憧れていたえっちゃん。


そのえっちゃんがこんなに怯えるなんて。


なら、私は…


非現実に憧れなんて無かった。


ただ毎日がつまらなかった。


それだけの私は…


いま、どんな顔をしているのだろう。




急いでえっちゃんを連れて逃げよう。


急に冷静になる。


さっきまでだってパニックになっていたわけでは無いが。何故か、自分の命が危ないという事まで考えられなかった。


まずは、急いでこの場から逃げる。


あの巨人もこれだけの人数、一人も逃さずに殺せるわけなんかない。


「えっちゃん!」


怯えて座り込んでしまった、えっちゃんを呼ぶ。


この騒ぎだ、なかなか私に気づいてくれない。


もう一度呼ぼう。今度はありったけの声で叫ぼうとしたその時、目の前を猛スピードで何かが通った。


一瞬のことだが私には分かる。


あの影だ!


通り過ぎた影を目で追う。


しかし、そこには何もいない。


…そうだ!早くえっちゃんと逃げなきゃ!


聞こえないなら、引きずってでもここから連れ出さなきゃ。


かけよろうとする私に、巨人は視線を向ける。


目はないけど確かにそう感じた。


巨人は声なのか、ただの音なのか分からない叫びをあげ、その腕を私に向かって振り下ろす。


終わった。


自分だけが死なないなんて事はないのに。


巨人が暴れ、同級生も先生も死んでいく中、私だけは冷静でいた。


頭のどこかに根拠のない自信があった。


でも、それも終わり。


えっちゃんは、まだ私に気づいていない。


恐怖と諦めから目を瞑る。


さようなら、私。


真っ暗な世界の中で自分自身に別れを告げる。


次の瞬間、身体に物凄い浮遊感があった。


あぁ、死ぬってこんな感じなのか。


まるでジェットコースターに乗ってるみたいだ。


暗闇の中を右へ左へ、上へ下へと凄い早さで動いている。


いつまでこれが続くのだろう、これが終われば三途の川に到着するのかなんて可笑しな事を考えてしまう。


もしかして、今目を開ければあの世に行く途中の景色を見る事ができるのかもしれない。


私は恐る恐る瞼を開けた。


そこには、さっきまでと同じ光景が広がっていて。


巨人が暴れ、同級生が殺させている。


ただひとつ違うのが、その光景を私は俯瞰で見ていることだ。


どういうこと。


「起きたのか、おとなしくしていろよ」


声が聞こえる。


よく見てみると、私は誰かに抱きかかえられていて。


その誰かは、物凄い勢いで、巨人よりも高い所を飛び回っているのだ。


正確には巨人の手がギリギリ届きそうな所を飛び回っている。


人間が飛んでいる蚊でも潰すように、巨人はその腕を私たちに向けて伸ばしてくる。


さっきから、右へ左へと動いていたのは、巨人の腕から逃げていたのか。


「ちっ、流石にもうもたねぇな」


そう言うとその人は、私を抱きしめる力を強くして、これまで以上のスピードで、あっという間に学校から飛び去ってしまった。


着いた先は、学校の裏にある山の神社で乱暴に私を地面に下ろすと、スタスタと古い納屋の前に歩いていく。


私はというと、手足はガクガク震えて立てないし、抱きしめられてたお腹周りは痺れてるしで、産まれたての仔鹿よろしく、不思議な動きをしていた。


本当なら今すぐにでもその人にかけよって聞きたいことが沢山あるのに。


その人は納屋の扉の前で何かつぶやくと、扉に両手をかざした。


「よし、行くぞ」


こっちを見て、どこかに行くように促している。


そんな知らない人と、どこかも分からないところに行けないし、ていうか、こんな状態で歩くなんて無理だし、そもそも何が良しなのか


「きゃぁ!」


正当な文句を言う私を、しゃらくさいとばかりに抱きかかえると、そのまま納屋に向かって歩き出す。


「まさか、ここでいやらしい事しようって事なんですか!助けてもらってなんですけど、あなた最低で


最後まで言えずに納屋に押し込まれた。


納屋の中は真っ暗で少しの明かりもなく。


というか、押し込まれて背中から納屋の中に倒れこんでいるはずなのにいつまでたっても、床に当たらない。


背中からすっと落ち続ける様な感覚。やっぱり私は死んだのだろうか?


そのうち真っ暗闇の中にさっきの人が現れた。


「もうすぐ着くから、しっかり着地しろよ」


着地?一体なんの事なのか。


じゃあ、俺は先に行く。


そう言ってその男の人?は、また見えなくなった。


一人称が俺だし、声も男の人の声に聞こえるし。


抱きしめれた腕には結構筋肉があったから男の人で違いないとは思うけど…


つまり、私は男の人に二度も抱きかかえられて、しかも制服ってことは、パンツも見られた可能性があって、ていうか巨人の上を飛び回ってる時、下から丸見えだったじゃん。


なんて考えて、あまりの恥ずかしさに顔が火照ったように熱くなり、誰かに自分の赤ら顔を見られるのが恥ずかしく、周囲を見渡したが、相変わらず何もない暗闇の中に私一人だ。


とりあえず、あの人が男の人だったら、度重なるセクハラへの抗議として問答無用でビンタしなきゃな。





時間にするとどれくらいだろう。


真っ暗な中で身体が落ちる感覚だけがあるから、正しい時間が分からない。


でも、もう1時間はこのままのような気がする。


ふいに目の前に細い光が見えた。


身体は背中から下に落ちているのに、その光は遠ざかるどころがどんどん近づき大きくなっていく。


何も考えずに私はその光に手を伸ばす。


そして意識がホワイトアウト。





臀部の激痛で目が覚めた。


イテテ…


真っ暗な中で突然現れた光を見つめたからか、周りの景色がボンヤリしている。


お尻をさすりながら立ち上がり、目をこする。、


「よう、遅かったな」


さっきも聞いた声がする。


晴れてきた視界に映る光景に私は驚かずにいられなかった。


そこは、場末のスナックのようなところで、ボンヤリとした暖色系のライトに照らされる沢山の洋酒の便と、ところどころ補修のあとがある皮のソファ。


カウンターには中年のおばさんが和服を着て、パイプをくゆらせながら、訝しげに私を見ている。


よう!


あの声だ。私は声の主を見る。


そこには二十代中盤くらいの、細身の男が立っていて。


「助かって良かった。俺に感謝してくれて良いんだぞ」


なんてしたり顔で言っている。


あの影の正体がこの人なのか、あの光の球は、あの巨人は、なぜ飛べるのか、納屋の中がなぜスナックなのか。


聞きたい事は山ほどあるけど、とりあえず全力でビンタした。


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