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帰るための戦い

魔王城

空は厚い雲で覆われ赤黒く昼と夜の境がない、敷地は村程度の広さな上に住人は魔王を合わせ数えるほどしかいない。

しかし数多の転移者がここを目指しその多数がたどり着くことすらできなかった城。


そこに今300人程の軍勢を率いて三人の転移者が城門までたどり着いた。

「正直こんなにあっさり着くとはな」

ツヴァイが頭を掻きながら言う、道中魔王の手下を自称する奴らと交戦することはあったが五重殺と会うことはなかった。

「たしかに妙ですね、僕たちがここを目指していたのはわかっていたはずなのになにもしかけてこないなんて」

アインは右手で顎をつまむようにして言う、今まではここにたどり着くことすら許さなかったのに。

魔王たちは何を考えているのかアインはたどり着いた喜びよりもえもいわれぬ不安にかられている。

「僕たちはこのチャンスを逃すわけにはいかない、城門を打ち破りそのまま全軍突撃、反撃の機会も与えぬまま魔王を討つ」

アインが号令をかけると同時に兵たちが「おおおおお」と歓声をあげる。



ツヴァイが手に持っていたハンマーを振り上げると門は静かに開いた、ツヴァイが打ち破る前に。






クソッたれな転移者は俺を殺すために地下でこそこそと策略を練っていたらしい、ムカつきすぎて頭の中が業務用の電子レンジみたいだぜ。

ファッキン転移者共が兵も集めたことで「あれ?これいけんじゃね?」とか勘違いしているところを地面はおろかマントルまでたたき落としてやる。

「そろそろ着きますぜ」

ドクロが目を光らせながら報告する、作戦はこうだやつらが調子に乗って城までたどり着いたところで城の中と外で挟み撃ち、サンドイッチの出来上がりだ。

「あれ?転移者四人いますね、一人どこか紛れ込んでます」

ドクロが少し慌てて報告する。

「じゃあてめぇがその一人を見つけてこい」

今更転移者が一人増えたってどうしようもねぇんだよ、やつらが助かる道は転移の謎を知ってる以外にない。

「それでは前からヴィンク、後ろからスバイ、ドクロとトリスは転移者を炙り出しなさい」

シュタインハイムが指示を出し各自持ち場へと駈ける。


俺の命を狙ったことを最大限後悔させてやる。





城門が勝手に開き呆気に取られる一同、先陣をきっていたツヴァイはいち早く異変に気づく。

「な……こども?」

ヴィンクが笑みを浮かべて立っている。

「ようこそ魔王城へ、でもすぐ地獄に行っちゃうんだけどね」

ヴィンクはそう言うと両手の指に挟んだナイフを前方へ投げる、ツヴァイを除いた前線の兵に突き刺さることはおろか貫通して後ろの兵も倒れていく。

「な、なんだてめぇはぁ」

恐怖を押し消すように怒声をあげハンマーを振り下ろすがヴィンクは容易くバクテンで避ける、叩いた床は粉々になりバチバチと電気が走っているのが目に見える。

「あー、お城壊さないでよ」

緊張感の欠片もないヴィンクの後ろから馬鹿でかい鎧を着た男が走り抜ける、鷲頭のトリスだ。

「うぬらに用はない」

ツヴァイにつづこうとした兵たちをハルバードで凪払う、鎧を装備した鍛え上げられた屈強な戦士達がまるで紙吹雪のように宙に舞う。




前線の兵が宙を舞うのを後方でアインとドライが確認する。

「一体何が起こっているんだ」

アインが呟くと後ろから声が返ってくる。

「わからないんだったら同じ目にあわせてあげる」

真っ赤なチャイナドレスを着たスバイが後ろから近づく、深く入ったスリット襟詰めをとめているが胸元は開いており黒の下着が見えている。

「誰だ」

アインは剣を構え問うがスバイは気にすることなく続ける。

「あなた達魔王様を狙って楽に死ねるなんて思わないことね、あぁでも転移してきた理由を知ってるなら苦しまずに殺してあげるわ」

「アインくん先に行って」

ドライがアインの前に立つ「でも」

「行って」

普段のドライからは想像もつかない強い口調にアインは背中を押され前線へと走っていく。

「あらあら女を残して行っちゃうなんて彼薄情なのね」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

唸りを上げドライが殴りかかる、人の領域を越えた速さで攻めるがスバイは軽々と避ける。

「あなた達以外にも魔法を使う人間はいたわ、でもあなたみたいな女は大抵回復魔法を使ってきたわ、あなたギャップ萌えを狙っているの?」

闘志で髪が逆立ち獣のような声をあげ攻めるドライをあしらいながらスバイは語る。

「私が二番目に嫌いな物は転移者、すぐ愛する魔王様の命を狙ってくるんだもの」

後ろに大きく飛び距離を取るスバイ。

「そして一番嫌いなモノは人間の女よ、魔王様は転移者にご執心だもの不安の種は叩き潰してあげる」






「おじさんさぁ、どうやってこの世界にきたの?」

ナイフで地面に張り付けられたツヴァイの上に座りヴィンクが言う。

「クソがっ、誰がおじさんだガッ」

太股にナイフを突き刺され悶絶する

「てめぇ殺してやる絶対殺してやる」

血走った目で叫ぶがヴィンクは顔色一つ変えずにまたナイフで刺す。

「早く答えないとチーズみたいに穴だらけになっちゃうよ」

シュッとナイフを投げ命からがら逃げ出そうとしていた兵の頭を貫く。

「知らねえよ、気づいたらこの世界にいたんだ」

血を吐きながらツヴァイは叫ぶ。

「じゃあこれが最後の一本ね」

目を合わせ笑いながら腕を振り上げる。

「バカッやめろっやめろやめろぉぉぉぉ」

眉間にナイフを突き刺し立ち上がる、兵はあらかた殺しあとは転移者を探すだけだ。

「あーあ玄関汚れちゃった、魔王様怒るかなぁ」




アインが跪き剣を支えにして体が倒れるのを堪えている。

「ふむ、策自体は悪くなかったが如何せん個々の力が無さ過ぎたな」

トリスが悠然とアインの前に立ち言う。

「最後になにか言うことはあるか転移者よ」

ハルバードを首に当てアインに問う。

「死んだら元の世界に戻れるかなぁ」

泣きながらトリスに問いかける。

「武人が泣くでない」

そう言ってトリスはアインの首を刎ねた。

「この者も転移の謎を知らなかったか」

トリスはアインを見つめ呟く、遠くから甲高い笑い声と重く響く破壊音が聞こえる。

「スバイのほうも終わったようだな」





スバイとトリスとヴィンクが玉座に戻ってきた、あーあなんで転移した理由誰も知らねえんだよクソがっ。

「みんなお待たせー、とっておきのモノを見つけたから隠れて待ってたぜ」

ドクロが一人の兵士を引き吊りながら走ってくる、兵士は後ろ手に骨を刺され固定されている。

「そいつは転移者か」

シュタインハイムがドクロに問いかけるがドクロは煙草に火をつけ返事をしない。

「みんな見ててよー、ダダーン」

兜を取ると髭面のドワーフが血塗れになっていた。

「ヴァレイの王がなぜ」

シュタインハイムが驚く、こいつが今回のファッキン主謀者か、しかしなぜ王が戦場にいるんだ。

「驚くのはまだはやいですよ、この指輪を外すと」

王が光に包まれると人間の姿になっていた、クレイジーすぎて頭が追いつかない。

「どう、ミーお手柄でしょ」

俺は立ち上がり前のめりに倒れている王に近づく

「貴様はなぜこの世界にきた」

コヒューコヒューと息を吐くことすら辛そうな王がこちらを睨みつけてくる。

「貴様が私たち人間を呼び寄せたんだろうが」

こいつは何を言っているんだ、俺にそんな力はないってのに。

「貴様を殺せば私たちは元の世界に帰れるんだ」

意味不明なことを大声で言いやがって妄想癖もここまでくると病院送りだ。

「俺を殺しても元の世界に戻れない、勘違いがきっかけで死ぬんだな」

「嘘を吐けっ、貴様さえっ貴様さえ殺せば」

「ドクロ下がれ」

ドクロを玉座の方へやり座り込み王に顔を近づける。

「冥土の土産だ」

フードを取り顔を見せてやる、顔を見せるのは初めてだ。

「なっ……貴様っ…貴様はっ……」

フードを被り直し「殺れ」と命令する、シュタインハイムが風のように動き王の顔を踏みつけて殺す。

しかしヴァレイを作った男でさえ転移の謎はわからないか、やはりこの世界では人間は無力だ、転移した俺が言うんだから間違いない。

第一部完!!

一応この後の話も考えてますがすぐ書くかはわかりません(´д`)

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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