暗躍する双方
スバイとドクロとトリスは転移者を殺しただろう、いつも通り転移者は俺の望む情報は持っていないクソ役立たずってわけだ。
館は特にすることもなくブラブラと歩くしかない、家の中を徘徊するなんて呆けた老人みたいだなと思うが今の俺はそれ以下かもしれないな。
俺の部屋は地下にあり扉を出ると目の前に螺旋階段がある、ほかに道はなく階段を上ると空き室に着く、カモフラージュのため人が使っているように見せかけてるというかたまにファッキンビッチが使ってるみたいだ、部屋を出ると五重殺たちの部屋が並んでいて俺の足音が聞こえるといちいち出てきて挨拶しやがるから鬱陶しいことこの上ない。
その廊下を行くと大広間があり一日の大半を俺はそこで過ごす、大広間からは別の部屋に行く道や厨房など様々あるが俺はほとんど行くことはない、庭にでることすら叶わない俺だが玄関にはたまに行く、太陽や星を見て思いを馳せたい時ぐらい俺にだってあるってことだ。
まさに今がその時で玄関に向かってる途中だ。
「シューゼン様はどうして外に出てはいけないんでしょうね」
横について歩くヴィンクが両手を後頭部に当てながら聞いてくる、ヴィンクは肩に掛からない程度の長さの金髪で濃い茶色のタキシードを着ている、真っ赤な目が特徴的で背が小さく男の子と間違われることが多い、ヴィンク本人はなんで男と間違われるのかわかってないがとりあえず一人称を僕から変えるべきだと思う。
「さぁな、シュタインハイムが口うるさく言うからな」
あいつは危険だとかなんだ言いやがるがお前等に恐れてこの辺はほかの生き物は近寄らないって聞いてるぞ俺は。
「たまには外で遊びたいですね、いつもポーカーとかしてますけどシューゼン様は顔が見えないからずるいですもん」
唇を尖らせヴィンクは言う、退屈な館の中だがこいつとは遊んだりもする、他の奴らに比べてかしこまっていないから俺も接しやすいのだろう、ただその態度をシュタインハイムやスバイによく注意されその度に喧嘩している特にスバイとは仲が悪いように感じる。
「スバイたちは転移者のとこに行ったしシュタインハイムは調べ物があるとか行って出て行ったから外に出て遊びませんか?」
なんて魅力的な提案だろうか飛び跳ねて喜びたい気持ちを抑えることができた自分自身に驚く。
「そうだな、たまにはいいだろう」
やったぁと喜ぶヴィンクを見た後扉に手をかけようとした時不意に扉が開く、まだ俺は開けていないのに。
「まぁ、シューゼン様自らお出迎えなんて私感激です」
最悪のタイミングで帰ってきやがった、俺もヴィンクもげんなりとした表情で出迎えているがそんなことはお構いなしに喜ぶスバイに苛立ちを覚える。
「転移者が三人も仲間を連れててすごく恐かったです、でも私がんばりました」
返り血塗れのお前の方がよっぽど恐いわ
「シューゼン様、今回もお目当ての情報を持ち帰ることができず誠に申し訳ございません」
トリスが深々と頭を下げる、こいつはいつも堅苦しくて苦手だ顔も恐いし。
「ちょっと返り血塗れの体でシューゼン様に近づかないでよスバイ」
ヴィンクがスバイに突っかかる
「あら、いたの?ごめんなさい背も胸も小さいから気づかなかったわ」
「な、胸は関係ないだろ、そんな脂肪の塊なんてこうだ」
ヴィンクがスバイの胸をバシンッと叩く、真っ黒な水着の中でアメリカンクラッカーのように動き回る。
「やれやれ、巻き込まれない内に広間の方に行きますか」
ドクロが提案する、同時に俺の外にでる野望は打ち砕かれた。
取っ組み合いをしている二人をよそに俺とドクロと取トリスは広間に向かう、あぁ外に出たかったなぁ。
広間でドクロとトリスが報告をするが情報を持っていなかったのなら興味はない、俺は適当に聞き流しながら今日の夕飯はなんだろうなとか考えて時間を潰していた、クソ無駄な時間の使い方だ。
「ただいま戻りました」
シュタインハイムが広間に入ってくる、こいつはどこでなにをしていたんだ?
「ユーどこ行っちゃってたわけ?」
ドクロがシュタインハイムを指さし問いかける、こいつはいちいち身振り手振りが大きくているだけで邪魔くさいな。
「少し調べ物をな、転移者は各地に点々と現れていたがここ最近王都ヴァレイでの発生を聞かなくてな」
たしかに転移者は今までいろんな街に現れていたが王都ヴァレイでの転移者の話はここの所聞いていない、クソッたれ雲行きが怪しいぞ。
「転移者の大半はここを目指してきましたが中には平穏に暮らすものもいました、ただ最近行方を眩ます転移者もチラホラと出てきました」
「ヴァレイを覗いてみたけど転移者らしいやつはいないぜ」
「つまり王都で転移者を秘密裏に集めなにか暗躍しているかもしれないということです」
たしかにドクロの能力ではここから街を見渡すことはできても城の中まで見ることはできない、ドアーフが束ねる街ということもあって武器なんかも沢山あるし開発することだってできる、ファッキン面倒なことになってきやがったな。
「今回残念ながら尻尾を掴むことはできませんでしたがいかがいたしましょうシューゼン様」
思い違いかもしれないしクソッたれ共が俺を殺す作戦を国絡みで企んでるかもしれない
「王都ヴァレイが総力をあげてここを攻めてきても貴様等にとっては赤子のようなものだろう、これはチャンスだ転移者共を一斉に捕らえなんとしても情報を手に入れるのだ」
攻めても守っても結果は同じなのだ、ならばこちらから動かずに転移者共を一斉に捕らえその後に馬鹿な夢を見た群衆を根絶やしにしてやる、王都ごとな。