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機械仕掛けの恋心  作者: 芝桜 綾乃
6/9

05

「……眩しい。」


閉ざされたはずのカーテンの隙間から、顔に紅い光が差し込み、目を覚ます。

朦朧とする頭で先ほどまでのことを思い出し、寝返りをうって天井を仰いだ。


「どうしよう……。」


彼に映画に誘われた。あまりの出来事に思考が追いついていかない。

想定していなかったわけじゃない。避けられない、いつかは通る道だろうとは覚悟していたつもりだ。

けれど、この身体はどうにも言うことを聞いてくれないらしい。頭の中はどうやって断るか、その一点しか考えていなかった。


「馬鹿馬鹿しい……。」


自分にそう言い聞かせるように吐き出し、空腹感を覚えつつある身体を起こしてキッチンへ向かう。

携帯を見る勇気はなかった。

幸いこの家には私と母しか住んでおらず、母も時々しか帰ってこない。接点と言えば、月に一回送られてくる生活費くらいのものだろう。

おかげで私が倒れても騒ぎになることはない。優良物件だ。

冷蔵庫の中を確認するも、これと言ってめぼしい食べ物は入っていない。在庫切れ……と言う奴だ。

テレビで言っていた、日光に当たると気分が良くなる。と言う噂が頭をよぎり、コンビニに買い物でも行こうか、と言う気になる。


「面倒くさい……。」


洗面所の鏡で自分の姿を確認する。ひどい顔、死んだ魚の目をしているとは、正に今の私のような人を指すのだろう。

顔を冷水で流し、長く伸びすぎた髪を纏めて縛り、眼鏡をかけ、最低限の身だしなみを整えてから財布を持って家を出る。

扉の鍵を開けて外に出ると、赤い夕陽が沈んでいくのが目に入る。

家の目の前にある川に夕陽が映り込むが、私にはどうでもいいことにしか思えないので、さっさとコンビニの方へ歩き出す。

この辺りは都会と言うわけでもないので人の通りは少ないが、全く無いと言うわけでも無い。

誰かが横を通っていく度、こちらをみている気がする。


「気のせいだ……、気のせいだ……。」


自分に言い聞かせ、10分程の歩道を歩けば何時ものコンビニが見えてくる。

ネットで使えるお金、ウェブマネーを買うのに頻繁に足を運ぶため、最早常連となってしまい、顔を覚えられている店だ。

ここの店員は時間帯で決まっているから、夕方や深夜にしか顔を出さない私は、初対面で無駄に緊張することもなく通える。

一呼吸ついて店内に足を踏み入れれば、お馴染みの音楽とともに。


「いらっしゃい!」


と、若い男性の大きな挨拶が飛んでくる。

いらっしゃいませだろう…と内心苦笑いしつつ片手を上げて礼を返す。


「今日もウェブマネー? それとも弁当かな?」


高校生…いや、大学生だろうか。すっかり慣れた口調で話しかけてくる。


「両方。」


完結に答えて商品を見に行く。先ほども言ったとおり、私はここの常連で、彼とは顔見知りだ。

そして、この青年はこの近所で唯一私が少しだけ話せる、「友人」だった。

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