05
「……眩しい。」
閉ざされたはずのカーテンの隙間から、顔に紅い光が差し込み、目を覚ます。
朦朧とする頭で先ほどまでのことを思い出し、寝返りをうって天井を仰いだ。
「どうしよう……。」
彼に映画に誘われた。あまりの出来事に思考が追いついていかない。
想定していなかったわけじゃない。避けられない、いつかは通る道だろうとは覚悟していたつもりだ。
けれど、この身体はどうにも言うことを聞いてくれないらしい。頭の中はどうやって断るか、その一点しか考えていなかった。
「馬鹿馬鹿しい……。」
自分にそう言い聞かせるように吐き出し、空腹感を覚えつつある身体を起こしてキッチンへ向かう。
携帯を見る勇気はなかった。
幸いこの家には私と母しか住んでおらず、母も時々しか帰ってこない。接点と言えば、月に一回送られてくる生活費くらいのものだろう。
おかげで私が倒れても騒ぎになることはない。優良物件だ。
冷蔵庫の中を確認するも、これと言ってめぼしい食べ物は入っていない。在庫切れ……と言う奴だ。
テレビで言っていた、日光に当たると気分が良くなる。と言う噂が頭をよぎり、コンビニに買い物でも行こうか、と言う気になる。
「面倒くさい……。」
洗面所の鏡で自分の姿を確認する。ひどい顔、死んだ魚の目をしているとは、正に今の私のような人を指すのだろう。
顔を冷水で流し、長く伸びすぎた髪を纏めて縛り、眼鏡をかけ、最低限の身だしなみを整えてから財布を持って家を出る。
扉の鍵を開けて外に出ると、赤い夕陽が沈んでいくのが目に入る。
家の目の前にある川に夕陽が映り込むが、私にはどうでもいいことにしか思えないので、さっさとコンビニの方へ歩き出す。
この辺りは都会と言うわけでもないので人の通りは少ないが、全く無いと言うわけでも無い。
誰かが横を通っていく度、こちらをみている気がする。
「気のせいだ……、気のせいだ……。」
自分に言い聞かせ、10分程の歩道を歩けば何時ものコンビニが見えてくる。
ネットで使えるお金、ウェブマネーを買うのに頻繁に足を運ぶため、最早常連となってしまい、顔を覚えられている店だ。
ここの店員は時間帯で決まっているから、夕方や深夜にしか顔を出さない私は、初対面で無駄に緊張することもなく通える。
一呼吸ついて店内に足を踏み入れれば、お馴染みの音楽とともに。
「いらっしゃい!」
と、若い男性の大きな挨拶が飛んでくる。
いらっしゃいませだろう…と内心苦笑いしつつ片手を上げて礼を返す。
「今日もウェブマネー? それとも弁当かな?」
高校生…いや、大学生だろうか。すっかり慣れた口調で話しかけてくる。
「両方。」
完結に答えて商品を見に行く。先ほども言ったとおり、私はここの常連で、彼とは顔見知りだ。
そして、この青年はこの近所で唯一私が少しだけ話せる、「友人」だった。




