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カロン・ファンタジア 『オフ』ライン――鎌倉住みの裁縫士――  作者: 穂積潜
第Ⅰ部 第四章 邪竜プドロティス編
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第76話 役割分担

「じゃあ、もう一度作戦と役割分担を復唱するね」

 喧々諤々の話し合いの下に出た結論を、俺は再び口にする。


「作戦の目的は、プドロティスを陽動し、自衛隊にMPKして時間を稼いでいる間に、石化した冒険者たちを救出すること。陽動部隊は俺と七里。異世界人の操縦する飛空艇にのって、プドロティスを囚われのロックさんたちから引き離す。残りのメンバーは、全員が救出班。一刻も早く、冒険者たちの石化を治すこと。作戦が完了し次第、俺たちは戦線から離脱する。いいね?」

 俺のまとめに皆が頷く。


「すみません。本来なら、一番危険な陽動の役目は、話を持ちかけた私がやるべきなのですが……」

 礫ちゃんが申し訳なさそうに呟く。


「気にしないで。何度も話し合っただろう?」

 俺は礫ちゃんを慰めるように言った。


「仕方ないですよね。本当は、陽動も異世界人に任せられたら良かったら、兄さんとお姉ちゃんを危険な目に遭わせずに済むんですけど、異世界人で陽動に協力してくれるのは二人しかいないんでしょう?」

 由比が難しい顔して確認する。


「はい。私がMPKのために飛空艇を出してくれると確信できたのは、二人だけです」

 礫ちゃんが唇を噛みしめて言った。


 礫ちゃんによれば、俺たちの作戦に積極的に付き合ってくれる――つまり、陽動に協力してくれる異世界人はたた二人しかいないらしい。残りの異世界人は、地球人に好意的な人間でも石化の治療なら協力してもいいという程度の協力しか望めないそうだ。


 積極的な二人は当然、操縦に全神経を注ぐので、敵を引きつける危険な役目は俺たちの内の誰かがやるしかない。


「ねえ、やっぱりウチが、どっちかと変わろうか?」

 瀬成がそわそわとした様子で言う。


「いや、いいんだ。俺と七里が陽動を担当する。これが生存確率を上げる一番確かな方法だよ」


「うん。この中でヘイトを稼ぐスキルを使えるのは私だけだもんね」

 俺の言葉に七里が頷く。


 俺たちの内で誰が陽動の二人になるかという話になった時、まず初めに確定したのは七里だ。その理由は言うまでもなく『案山子』のスキルが使えるからである。俺たちは敵を引きつけるアイテム『臭い袋』を大量に所持していく予定だが、万が一アイテム使用をミスった時にリカバリできた方が良いに決まっているからである。


 残りの一人を決めたのは消去法だ。回復系のスキルが使える石上と由比は、石化した冒険者の救出に回した方が良いに決まってる。礫ちゃんは付与魔術師なので、回復系の職のスキル時間を短縮させたりの援護ができるし、復活させたロックさんたちとの連携をスムーズにさせるためにも絶対に、救出班に入った方がいい。


 となれば、陽動を担当するのは俺か瀬成ということになるが、想定外の事態が発生する可能性のある陽動には、ゲームのコマンド操作に慣れてない瀬成よりは俺の方がまだマシだろう、ということになった。


 皆には言わなかったが、俺としても、危険な役目を瀬成に押しつけるよりは自分でやった方が気が楽だし、何かと危なっかしい七里を目の届く範囲においておくことができる。


「でも――」


「これ以上役割についてあれこれ言うのはやめようぜ。堂々巡りになっちまう」

 まだ口を開きかけた瀬成を石上がやんわりとたしなめる。


「……わかったし」

 瀬成が仕方なさそうに頷いた。


「じゃあ、作戦については以上。出発は明日の夜明け前、午前三時。さっき言った積極的に俺たちに協力してくれるっていう異世界人の二人が、近くの源氏山公園まで迎えに来てくれるんだよね? 連絡は大丈夫?」

「はい。彼女たちとはデバイスでのメッセージのやりとりができることは、遭遇時に確認済みです。国に居場所を悟られないためにデバイスの起動はぎりぎりにするつもりですが」


「よし。じゃあ、今日はこれで解散。みんな、ゆっくり休んで」

 俺の締めの言葉に皆が一斉に立ち上がる。


 俺は一旦、家に帰る石上と瀬成を見送るために、二人と一緒に玄関に向かった。


「じゃ、俺は一回、寺に帰って瞑想でもするか。明日は、頑張ろうぜ。アミーゴ」

 石上がそう言うと、こちらを和ませるアルカイックスマイルを残して、ぶらぶらと手を振りながら去っていく。


「ん、じゃあ、ウチも行くね」


「ああ。またな」

 そう言って別れの言葉を交わした俺たちだったが、瀬成は靴を履いた後、すぐには立ち去ろうとはしなかった。髪をいじったり、服を直したりして、ちらちらと俺の方を見る。


「……どうかしたか?」


「ん――」

 瀬成は小さく息を吐きだして、こちらをじっと見つめ――

「やっぱり何でもない」

 やがて何事もなかったかのように外に向けて歩き出した。



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