ウェザーズ・ギャング
「また雨が降る――」
そう私が確信していたのはいつの頃だっただろうか?
私自身が物心付いていた時には、そうなっていたから分からない。
誰の物でもない天気と経済を牛耳る奴らの事なんて、知らない方が良かったのかもしれない。
「天気を自由自在に操って、経済を牛耳ろうなんてバカげた話よね!?」
と、姉のミシェルは言った。
「確かにそうだけど――」
そう私は答えるしかなかった。
実際にバカげた話だ。
8月なのに誰が好き好んで、こんなどんよりとした天気を毎日拝まなきゃいけないのか?
それを知るのは“ウェザーズ・ギャング”だけだと思う。
ウェザーズ・ギャング――
それは、お天気で経済を牛耳る者たちの事。
圧倒的な資金と軍事力を持っている。
彼ら(彼女ら)は、13人しかいない。
噂によると13人の彼ら(彼女ら)は、魔法使い又は特殊能力者と呼ばれる者達らしい。
その力を使って、天候を自在に操って経済を牛耳る。
単純だ。そんな単純なことでも脅威なのだから、世も末だと思う。
「でもしょうがないよお姉ちゃん、ウェザーズ・ギャングに歯向かったらうちの農場は大打撃を受けるんだから」
私はそう答えるしかなかった。
そう、ここはウェザーズ・ギャングの管轄地。
歯向かえば一家が路頭に迷うほどだから……。
そんな力を持つ者に誰が好き好んで歯向かうのだろう?
ヒーロー気取りのお調子者か?
はたまた稀代の愚か者か?
そんな奴は最初のうちに間引かれる。
目先のハエみたいな害虫はことごとく潰される運命なんだから……。
奴らは何せ、ギャングなんだ。
障害となるものを潰さなければ気がすまない。
そんな状況でも先週ある男がウェザーズ・ギャングに歯向かった。
結果は、お分かりの通り始末された。
しかし、その後が大変だった。
『一ヶ月間、雨にする』
うちの農場に通達が来たのだから――
そんな奴らの信条は、ルールなんてクソくらえ力こそが正義だ。
パワーこそが歴史である。
まぁ現時点でそうなのだから仕方がないけど。
愚か者のおかげで被害を被るのは、うちの農場なのだから止めてほしい。
「もう少し、周りのことを考えて欲しかったよね?」
「そうね。こんなどんよりとした天気を毎日拝まなければならないなんて気が引けるわよ」
「でも――今度何かしたら、毎日ハリケーンとかになっちゃうね」
「それ言えてるわね」
そんなんで毎日が退屈しない日々を過ごしている。
だが、勘違いしないで欲しい。
私たち姉妹は“ウェザーズ・ギャング”ではないということを。