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異世界版でデスゲーム  作者: 妄想日記
第三章 喪失編
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第64話 ??才 要因

 意識が覚醒していく。

 ぼんやりとした意識の中、右手が不思議な温もりに包まれていることを自覚していく。

 目を開くとそこには心配そうに上から顔を覗きこむお嬢様の姿があった。


「シノ!」

「お嬢様…………」


 俺は一体……。

 倒れる前の自分を思い出しながら自分の身体に意識を向けるが、特に異常なところは見当たらない。

 ゆっくりと身体を起こすが特に違和感は感じられない。

 これはやはり。


「お、起き上がってはなりません!」


 慌てたお嬢様によって再びベッドに押し倒されてしまった。


「シノは試合が終わって倒れてしまったのです。覚えてはいませんか?」


 もちろん覚えている。しかし俺の推測が正しければ恐らくあれは…………スタミナ切れである。

 理由は分からないが俺のステータスはステータスカードが示しているとおりレベル1から変動することはない。以前戦いに備えてレベルを上げるためにモンスターを倒してみたが、まるで意味がなかった。

 それはつまり俺にはレベル1程度のスタミナしかないということを意味している。

 そしてあの試合で発動した『ダッシュ』と『ターンステップ』。

 あれはどう考えてもスキルレベル1の動きではなかった。

 アクティブスキルを発動すると魔力かスタミナが消費されるのはこの世界における絶対の法則だ。

 そして何らかの理由によりかなり高レベルであったであろう『ダッシュ』と『ターンステップ』が発動した。

 それによって消費されたスタミナが俺の持つスタミナを上回ってしまった結果、昏倒してしまったのが今回の顛末であると予想される。

 そして休むことによってスタミナが回復した今、肉体的に異常はない

 心配そうにこちらを伺うお嬢様にそれを説明すると安心したようにほっと息をついた。


「そうだったのですか。しかしスタミナ切れ……ですか」

「はい。理由は分かりませんがお嬢様から頂いた剣を手にした瞬間、自然に身体が動いてスキルが発動していました。恐らくはそのスタミナ消費に俺の身体が耐え切れなかったのだと思います」

「剣を…………、もしかするとシノは記憶を失くす前に剣を振るっていたのでしょうか?」

「そうかもしれません。未だ何も思い出せていませんが、両手で剣を握った瞬間まるでその動きを知っているかのように身体が動き出しましたから。いや、あれは動いたというより、知っている動きをなぞったという方が近いかもしれませんね」

「あの有名なサムライマスターを倒してしまうほど強い剣の使い手だったというのであればそれを手がかりにシノの過去が分かるかもしれません!」


 お嬢様は嬉しそうに俺の右手を握る手に力を込めた。

 しかし俺は首を振ってそれを拒絶した。


「その必要はありません」

「え…………」

「今の俺に必要なのは自分の過去を知ることなどではなく、お嬢様の望みを叶えることです」


 そしてお嬢様にしっかりと目を合わせて言葉を続けた。


「何があったとしてもこれだけは忘れないでください。俺はお嬢様の奴隷です。そしてそれは服従の制約があるからではありません。お嬢様が俺を奴隷として求めてくださったからこそ、俺はお嬢様の奴隷でいられるのです」


 そう言うとお嬢様は突然口元に手を添え笑いはじめた。


「…………お嬢様?」

「ふふふっ…………あぁおかしい。シノの所為で奴隷という言葉が好きになりそうで困ります」


 お嬢様は余程おかしかったのか、笑いすぎて目から零れ落ちる涙を指で拭いながら言った。


「それでいいのだと思います。決して奴隷制度が悪いというわけではありません。奴隷制度を悪用する者がいるからこそ悪法と言われるのです」


 お嬢様であれはきっとそれを間違えない。だからこそ俺は迷うことなくこの人を守り続けることができる。


「これより我々が優先すべきことは情報の入手とお嬢様の安全の確保となってくるでしょう。可能性の話ではありますが、お嬢様は今後ご親族から命を狙われる恐れがあります」

「え……、ですがあれだけ派手に目立てば……」

「お忘れですか?この国において侯爵家はかなり強い力を持っています。それこそ並の貴族を殺めようとも『侯爵家だから』で片付くほどに」

「それならその…………シノが……守ってくれますか?」


 そう言って下から俺の顔を見上げるお嬢様の瞳は濡れていた。

 心なしか肌に赤みが増し、少し震えているようにも見える。

 お嬢様と言えどその中身はまだまだ成長途上の歳若い少女。命の危機を告げられて平気なはずがない。

 もう少し言葉を選べば良かったかもしれない。

 しかし現状の危険性を認識していただくためにはそれを伏せておくわけにはいかなかった。とは言え、必要以上に恐怖心を煽ることもないだろう。

 俺はお嬢様が少しでも安心できるように正解を選んでいく。


「もちろんです。何も心配はいりません。俺がいる限りお嬢様に手を出すことなど不可能なのですから」


 そう言って俺はお嬢様の背中を優しくさすった。

 これよりお嬢様は表舞台に上がり、自らの意思で自分の立場を確立しなければならない場面も出てくるだろう。

 元より我々に数の有利はない。

 その上アルマ様もキキも諜報活動を苦手としている。

 そして三人とも確かに戦闘技術は向上しているが、こと暗殺に限って言えばそれに対抗する術がない。

 つまり俺がお嬢様から離れて別行動することにメリットはなく、逆にいくつものデメリットを抱えてしまう結果になってしまう。

 だからこそ俺自身がリリスお嬢様をお守りすることは理に叶っているということだ。

 そう、これはあくまで合理性を重視した結果。

 決して俺がお嬢様の傍を離れたくないからではない。


 そう


 すベては


 おじょうさまの


 ために

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