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異世界版でデスゲーム  作者: 妄想日記
第一章 幼児編
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Sideセフィリア 一才の贈り物

 この日、私は第四王妃アンネリーゼ様のご息女ヴァレリア様とリーゼロッテ様の専属メイドへの昇進が言い渡されました。

 他の国ではどうか知りませんが、この国における王族付きのメイドには「王族を守り、共に戦うことのできる戦闘技術及び魔法技術」と「王族の体調やスケジュール等を管理することのできる知性」が求められます。

 さらに年若い王族に付くとなれば、模範となれるだけの礼儀作法と、専門とまではいかなくとも各分野の勉学を教えることができるだけの教養を身に付けておかなければなりません。

 その上これは王族付きのメイドに限った話ではありませんが、主人に求められれば夜伽の相手もしなくてはいけないのがダークエルフのメイドなのです。

 つまり王族付きのメイドには、護衛と秘書、教師と娼婦、そして本来のメイドの仕事をこなすことのできる人材が選出されることとなります。

 望んだところで誰でもなれるというものではないのです。

 ゆえに私が王族付きのメイドとして選ばれたということは、それら全ての条件を満たしていると認められたということに他ならないということになります。

 そして私たちのような王族付きのメイドは、王族のご子息またはご息女が1歳になった暁に国王からのプレゼントとして送られるのがこの国の慣例となっています。

 本来であれは一人の対して一人のみ。


 だから私は昇進の話が来た時、自らの耳を疑いました。


「セフィリア・ローレンス。あなたはヴァレリア様、リーゼロッテ様の生誕日にお二人の専属メイドとして贈られることが承認されました」


 なんと私は二人の王女様の専属メイドとして召し上げられることになったそうなのです。

 それも聞いた話によると王女様方のご希望によって。

 まだ生まれて一年も満たない王女様のご希望って何ですか?

 自分には一歳のときの記憶はありませんが、同期の友達に産まれた子供の一歳の誕生日のことはよく覚えています。

 その時の子供の様子を思い出しても、まだ、「ま~」やら「あ~」やらようやく泣き声以外の言葉を発し始めたところだったはずです。

 そのような赤子が、何らかの理由を以って私一人を専属メイドとして召し上げようとしているとは到底思えませんでした。そう、実際に会うまでは。


 そしてついにお二人の誕生パーティーにて、私は王女様たちと引き合わされることになったのです。とはいえそれは身内のみで開かれるささやかなものでした。


「ヴァレリア、リーゼロッテ。誕生日おめでとう」

「「ありあとうごちゃいましゅ」」

「お前たちのためにお前たちだけの最高のメイドを用意した。セフィリア、挨拶しろ」


 国王陛下の命に従い、私は王女たちの前に跪き、口上を述べた。


「お初にお目にかかります。ヴァレリア王女殿下、リーゼロッテ王女殿下。本日よりお二方に仕えさせていただくメイドのセフィリア・ローレンスです。何なりと御用をもうしつけください」

「めいど……めいどしゃま!」


 ヴァレリア様が喜びを顕にする。

 めいどしゃま……メイド様?なぜ王族の方が私たちメイド如きに様付けなさるのでしょう?もしかしてメイドさんって言おうとしたのでしょうか?

 仔細は分かりませんが、このお顔を拝見するに、どうやら歓迎されているように見受けられます。


「おねえしゃまがむちゃをいっちゃらゃ、じぇんぶむししてくだしゃい」

「しょ、しょんにゃ!」


 リーゼロッテ様の言葉にヴァレリア様がたいへんショックを受けていらっしゃるご様子です。


 お姉さまが無茶をいったら、全部無視してください?

 そ、そんな?


 ちょ、ちょっと待ってもらえないでしょうか!今王女様たちは明らかに会話をされていませんでしたか!?


「うむうむ、分かる。分かるぞ。確かにこんな綺麗なメイドがいたら手……を…………」


 国王陛下が何やら不用意なことを言おうとした瞬間、部屋中が殺気に包み込まれた。

 その殺気の矛先は私と国王陛下。

 そして殺気の主は第四王妃アンネリーゼ様。

 どうやら、私は夫婦喧嘩に巻き込まれてしまったようです。

 とはいえ、私の任務はヴァレリア様とリーゼロッテ様の護衛。そして既に私の任務は始まっているのです。


「失礼致します」


 私は二人を抱えあげると、国王陛下から離れるようにその場を飛びのいた。


「あなた、昨夜の調教がまだ足らなかったようね」

「い、いや、違うんだ。綺麗な人を見るとつい言葉に出してしまうのが男というかなんというか、も、もちろんお前が一番だとも」

「その言葉を聞いた者がこの王城で何人いることやら。あなたの言葉はあなたの命と同じで空気よりも軽いのね」


 アンネリーゼ様に集まる魔力……これは危険です。

 防御魔法を張らなければ。

 そう思って魔法を使おうとしたところで、ヴァレリア様に後ろから手を引かれました。


「もういっぽそとでしゅ」


 私は手に引かれるままアンネリーゼ様から一歩離れた。


「『アイスプリズン!』」


 アンネリーゼ様が魔法を発動すると、アンネリーゼ様から国王陛下への直線に太く床が凍り付き、国王陛下が氷の檻の中へと閉じ込められてしまった。

 足元もみて見ると、氷が私の足先で止まっている。これは…………ギリギリでアンネリーゼ様の魔法範囲外に出られたということでしょうか…………。

 そんな馬鹿な…………。ヴァレリア様はアンネリーゼ様の魔法の影響範囲を完全に見切っているとでもいうのですか?

 このお年で?

 額から一筋の汗が流れ落ちた。


「おばかなとうしゃまにまきこまりぇなくてよかったでしゅね」


 リーゼロッテ様がクスクスと可笑しそうに笑っている。この状況で。

 もしかして私はとんでもない方々に召し上げられてしまったのではないでしょうか。


「さぁ、あんなのは放っておいて美味しいディナーを楽しみましょう」

「かあしゃまのおっぱい!」


 目を爛々と輝かせながらアンネリーゼ様の下へとよちよちと歩いていくヴァレリア様。

 それを見てため息をつくリーゼロッテ様。

 そして国王陛下に背を向け、惜しみなく出される豊満な乳房ちぶさ


「うぅ……俺もアンネリーゼのおっぱい欲しい……羨ましいぞ!二人とも!」


 この日アンネリーゼ様の部屋から、国王陛下の何とも情けない悲痛な叫びが響くことになったのでした。

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