第6話 一才 見放された子
おい!何だよこの能力値の高さは!
まるで俺が出来損ないみたいじゃないか!
え?何?何でこいつこんなに魔力とか高いの?
それにEx竜化って竜にでもなるつもりかこいつは。
いやちょっとまて、一見凄そうな名前だが、実はあのちっこい爬虫類になるだけっていうオチも十分に考えられる。
てか何で俺だけ『ぷりんせす』がひらがななの?なんで俺が『かりちゅま』なのにこいつが『王族の気品』なの?むしろどっちかっていうとこいつは下品じゃないか?
「どれどれ」
父さんと母さんが俺たちのステータスカードを覗き込んできた。
「「え!!!」」
二人が酷く驚いている。なんだろう……なんか0点のテストの答案用紙を見せているような気分になってきた……。
「まさか王家から『見放された子』が産まれるとは……」
見放された子…………何それ?俺のこと?
確かに俺のステータスはまるで神に見放されたかのような貧弱さだが。
「みはなしゃれたこってなんでしゅか?(見放された子って何?)」
「この世の生き物は本来であればリーゼのように神の祝福を受けてステータスが上昇した状態で産まれてくるんだ。いや、リーゼの場合は明らかに上昇しすぎだが…………才能のある者でも10ポイントくらいだからな」
それってつまり、キャラクター作成時に割り振れるステータスボーナスのこと?
「それが、ヴァレリア…………極稀にだがお前のように全く祝福を受けられずに産まれて来る者がいるのだ…………。そしてそういった者たちは成長してもその分ステータスが低くなってしまう…………」
「しょ、しょんな……(そ、そんな……)」
思わずしょんぼりと俯いてしまう。
俺は王族だ。本来であれば魔力がそこそこ高いはずだった。それが平均どころかもし最低値だったら、爪弾きにされて隅っこの部屋を宛がわれて、学校行っても誰も相手にしてくれなくて、便所飯を食べるなんて暗い人生を送る羽目になるかもしれない…………。
いや、それどころか王家の恥を隠すために一人だけ隔離されたり、最悪殺されるなんてことも……。
「ふ、ふええええええん…………」
もう姫に会えないかもしれない。そう思うと途端に涙が溢れてきた。
駄目だ。涙が止められない。本当なら一刻も早くこの場から逃げたほうがいいのに。
しかしそんな俺を優しい温もりが包み込んだ。
「大丈夫。きっと大丈夫。ステータスは確かに大事だけど、本人の持つ技術やスキルの方がもっと大事なのよ。ステータスに胡坐を掻いてダメになっていく者を私は何人も見てきたわ。お前ならきっと努力して自分の力で強くなっていける。もちろんリーゼもね。何と言っても二人は私の娘なんだから」
うぅ…………こんな低スペの娘でも生きていていいんですね。
母さんの娘で本当によかった…………。
「それに女神様はあなたに何も与えなかったわけじゃないと思うの。エクストラスキルを持って産まれてくる子なんて本当に少ないのよ?よかったら今から試してみない?女神様からステータス以上にすごいものを貰っているのかもしれないわよ」
「ぐすん…………ん!」
そうだ。俺には『Ex戦神化』があったんだ。鬼神化であれだけのステータスを上げることができたんだ。もしかすると『戦神化』もステータスを上げることができるのかもしれない。
「ちゅかってみゆ!(使ってみる!)」
「よし、頑張りなさい。スキルは名前を呼ぶことで使うことができるわ。スキルの名前は『戦神化』。できるわね?」
「ん!」
そういうと母さんは腕の中から俺を解放した。
よし、使ってみよう!
みんなから少し離れ、周囲に見守られる中、俺はスキルを発動した。
「『しぇんしんか!』」
言葉を発した瞬間、突然俺の身体は黒い闇に包みこまれた。
なんだこれ……。ま、周りが見えない!?一体どうなっているんだ!?
鬼神化を使ったときはこんなことにはならなかったのに…………。
ち、力が、み…………………。
みwwwなwwwぎwwwっwwwてwwwきwwwたwww
馴染み深く心地良い重みが手に伝わってくる。
右手から懐かしい温もりを感じる。
まるでそれは「大丈夫」と語りかけてくれているようだった。
何が起こっているのかよく分からない…………だが、不安は既におさまっていた。
やがて黒い闇が空気に溶けるように消え、視界が晴れてきた。
あれ、視線が…………高い?