第38話 十二才 けっとうじょう 2
試合開始の合図と同時にボクは『ターンステップ』を発動し、回転力を利用してチェーンを思いっきり引っ張った。
大幅に筋力と速度が弱体化されているが、スキルを併用することでそれなりに力を発揮することができる。あくまでそれなりに、であるが。
虚を突かれたダレルがバランスを崩すのを気配で感じ取った。
ぼやけた視界の中、『ダッシュ』を発動して一気に距離を詰める。
「ハーフムーンスラッシュ!!!」
再び『ターンステップ』を併用してダッシュ回転斬りへと繋げる。
さぁ、どうする?何もしないまま終るのか?
「『アイスシールド!』」
ダレルが元素魔法『アイスシールド』を発動すると、氷の塊が斬撃から守るように展開された。
しかしそれだけでボクの攻撃は止めらないぞ!
勢いに乗った大鎌がアイスシールドを簡単に切り裂いていく。
「『結合!』」
しかしそこでダレルが魔法を発動すると、切り裂かれた氷の塊が再び結合し、大鎌の刃に取り付いた。
手にずしりと重みが伝わってくる。
取り付いた氷の所為で完全にボクの扱い切れる重量をオーバーしてしまったようだ。
こいつ、なかなかできるッ!
しかしこちらとて只で終るわけにはいかない。
置き土産だッ!
制御し切れなくなった大鎌に力を掛けて相手に当るように叩きつける。
態勢を崩してしまっているバレルは自分が作った氷の塊ごと身体に叩き付けられ、大きく吹き飛んだ。
ボクはすぐさま大鎌から手を離して武器を放棄する。
さて、相手にダメージを与えることができた変わりにこちらは武器を失ってしまった。
いや、まだあったな。
左手でチェーンを緩ませたところから思いっきり引っ張ることで輪を作り、それが相手の首に絡まるように操作すると手応え有り。よく見えないが見事相手の首に巻きついたようだ。
「ぐっ」
バレルは空いた右手でチェーンを引っ張り対抗しようとしてくるが、こちらは両手でその首を締めにかかる。
「ふふっ、さぁこのまま散歩にでも行くか?」
「ま、まだ勝負は終ってない!ら、『ライトニングボルト!』」
「使い古された手だが悪くない」
元素魔法『ライトニングボルト』がチェーンに向かって放たれる。
しかし魔法が発動する前にチェーンを緩めて地面に垂らすと、電気が地面に向かって逃げていった。
武器でもあればチェーンを緩めずに電気を逃がすことができたんだが、結局チェーンが緩まった隙を突かれ、首からチェーンを外されてしまう。
しかしこちらもその隙に魔法を発動した。
「『サモン・ゾンビ』」
ゾンビを召喚し、すぐさま手刀をゾンビの胸に突き刺して心臓を鷲掴みする。
「がぼっ」
「『ゾンビを生贄に捧げる!代償魔法クリエイトウェポン・ブラッドサイズ!』」
そのまま心臓を握り潰すとゾンビの身体から溢れ出した血流がボクの手の中でどす黒い大鎌を形取る。
代償魔法によるアイテム創造は便利なように見えてその実応急処置でしかない。
なぜならば代償魔法によってできたアイテムは生贄のレベルと憎悪の強さによって性能が決まり、しかも低級な生贄によって造られたアイテムは一定時間しかこの世に姿をとどめることができない。
その存在を保つだけの力がなく、時間と共に自壊していってしまうためだ。
だから一見禍々しく見えるこの大鎌も、生贄が低級なゾンビであるため実はブロンズ製の大鎌より性能は低い。
しかし今はこれで十分だろう。
「『ファイアボール!』」
ダレルによって炎の球が放たれた。
『ファイアーボール』は目標地点で爆発を起こす範囲魔法だ。
こんなものをブラッドサイズなんかで受けてしまえば一瞬でお釈迦になってしまうだろう。
受ければの話だが。
「奥義!!!」
ボクは薄っすらと明るく光って見えるファイアーボールに向かって『ダッシュ』で近づき、『ターンステップ』と『ジャンプ』を併用して『ガードブレイク』を発動した。
「『延髄ニールキーーーーック!!!』」
ファイアーボールに跳び後ろ回し蹴りが炸裂し、霧散する。
そのまま空中で大鎌を振るい、刃先をチェーンに引っ掛けて思いっきり振りぬくと、ダレルがチェーンに引っ張られるまま体勢を崩して地面に倒れる。
そこへブラッドサイズを振り下ろして地面に突き立てた。
ぼやけた視界でよく見えないが、恐らく刃とダレルの首の間は1センチも隙間があいていないはずだ。
チェックメイト、だな。
「まだ続ける?」
「ま、参りました」
「勝者!ヴァレリア・ヴォルドシュミット!」
セフィリアによって声高らかにボクの勝利を告げる。
それと共にボクに掛けられていた呪いが消え、徐々に視界が戻ってくる。
ボクは大鎌を引き抜くと唖然としているダレルに手を差し伸べた。
「いい勝負だったよ。うん、満足だ」
「え……でも俺、手も足も出なかったし……」
「実はそうでもないんだなぁ」
「え?」
実際追い詰められていたと言ってもいい。まだレベルの低いボクにはあまりスタミナがない。筋力低下とスピード低下の呪いがかけられてしまえば、その分スキルに頼らないとまともな戦闘にならない。
いくら技術が卓越していようが、見てから回避余裕です。なのだ。
だから燃費も恐ろしく悪い。こんな戦い方ができるのは、現時点では恐らく2分がリミットだろう。
今の決闘だけでももうスタミナはすっからかんだ。
とは言え、このことを教えるつもりはない。
攻略法とは人から教えて貰うものじゃなく、自分で試行錯誤しながら編み出していくもの。
彼には是非その楽しさを知ってもらいたい。決闘仲間として。
「次も楽しみにしてるよ」
「それって…………は、はい!」
そう言って彼は満面の笑みでボクの手を取って立ち上がった。
うむ、満足してもらえたみたいで何よりだな。
こうやって決闘の楽しさを知ってもらえたら、いつかこのシルフィードが決闘天国になるんじゃないか?
それはいい。決闘し放題か……じゅるり。
「ああ、ヴァレリア様が天然の悪女に……」
「お姉様は昔から無自覚でああいうことを言うんです」
「「はぁ……」」
リーゼとセフィがこちらを見て何やらため息をついているが気にしない。
どうせ決闘馬鹿だとか思ってるんだろう。
この楽しさが分からないなんて残念な奴らめ。
しかし、ここでボクはとんでもないことに思い出してしまった。
「あ、悪い。手が血みどろだった」
ゾンビの胸を突いた手も血みどろだし、ブラッドサイズを持っていた手も血みどろだ。
しかもゾンビの血とかこの上なく衛生的に悪そうである。
それなのに彼の口から想像もしない言葉が飛び出てきた。
「ぜんっぜん気にしません!むしろもう二度と手を洗わなくていいくらいです!」
どん引きである。
ガチホモのロリコンかと思ったらグロにまで手を出していたなんて……。
今まで数多くの変態を見てきたボクだけど、ここまで超越している奴は見たことがない。
こいつと比べたら心友ジークですら常識人に見えてくる。
「そ、そうか……」
ボクは戸惑いながらもその手を離した。
「あ……」
そこで残念そうな顔をするなんてやっぱり……。もしかして世の中のためにも決闘に託つけて始末してしまった方が良かったのかもしれない。
そしてそんなボクの想いが届いたのか、先ほど教室でこの犯罪者予備軍を連行しようとしていた者たちによって再び彼の両腕をがっしりと抱えた。
彼がまるで助けを求めるような目をこちらへと向けてくるが気付かない振りをする。
消毒されてくれ。世の中のためにも。
こうしてボクの決闘人生は幕を開けたのである。
名前 ヴァレリア・ヴォルドシュミット
種族 ダークエルフ
性別 女
戦歴 1戦1勝0敗0引分(1連勝中)
職業 養殖プリンセスLv6
筋力 8(決闘中パワーダウン-25%)
体力 4
器用 6
敏捷 9(決闘中スピードダウン-25%)
魔力 12(決闘中マジックダウン-25%)
精神 6
魅力 5
スキル
大鎌Lv60
ガードインパクトLv54
受け流しLv57
ブリングLv46
ターンステップLv61
ダッシュLv64
索敵Lv48
罠察知Lv34
追跡Lv50
ステルスLv58
召喚魔法Lv32
代償魔法Lv28
変身魔法Lv22
時空魔法Lv21
性奥義Lv69
Ex神我顕現
Ex殺刃
Csかりちゅま
スキルは全て書くと分かりにくくなるため、細かいものは省略しています。
前話では突然今回の話を導入し、時系列に関する内容が書かれていなかったことで、読者の皆さんに混乱を与えてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
パーティー結成から一ヵ月後の話という記載を37話の文章の頭に追記しましたのでどうぞご確認ください。




