第3話 三ヶ月 おっぱい
俺たちが生まれて三ヶ月が経過した。
ときどき鏡に映る自分の姿を見ると、順調に可愛らしく育っていっているのがよく分かる。俺もこんな子供が欲しい。もちろん姫との間に。
そしてご飯は母さんのおっきく柔らかなおっぱい。
俺はこの世界に生まれ落ちたことを心の底から涙して感謝した。
俺たちを召喚してくれた人間たち!本当にありがとう!
勇者の召喚に失敗して滅んでいないことを祈るばかりである。
それにしてもこのルックス。この地位。前世では現実世界で友達ができなかったけど、今世ではきっとたくさんの友達に囲まれることになるのは想像に難くない。
ビバッ!リア充生活!!
そしてきっとジークのような心友ができるに違いない。
ジーク…………元気でやってるのかな。(警察に)捕まってなきゃいいんだけど。
そんなことを考えているうちに母さん付のメイド様にオムツを取り替えられる。
ダークエルフは寿命がかなり長いらしく、卓越した育児技術を持つベテランメイドにも関わらず見た目はとても若々しい。そして凛とした雰囲気を持つ母さんとは違い、少したれ目気味のおっとりとした優しい雰囲気を持つ美人様であった。それでいて何事にも動じることなく、今も俺が粗相をしてしまったオムツをテキパキと替えてくれている。
最初の頃はこれが噂のオムツプレイか!と歓喜して思う存分羞恥心に悶えまくっていたけど、あるときニーフェ改めリーゼロッテから白い目で見られていることに気がづいた。
なぜバレたんだろうか…………。
姫と再会を果たしたときにバラされたら怖いので、仕方なくそれ以来自重することになってしまった…………。
産まれてから半年が経過する頃には、俺たちはハイハイができるようになっていた。
この世界で生き抜いていくにはきっと体力が必要となって来ることだろう。
だからトレーニングのためにと、メイド様のスカートの下を目指してハイハイしていると、なぜか後ろから付いて来ていたリーゼロッテに邪魔をされた。
母さんはそれを見て『いつもヴァレリアの後を追いかけてリーゼは本当にヴァレリアのことが好きなのね』なんて笑っていたが、どう考えてもリーゼロッテは俺の邪魔をしたいだけであることは明白である。
母さんたちからはリーゼロッテがきゃっきゃきゃっきゃと笑っているように見えているのかもしれないが、俺には分かる!あれは上手くいったとほくそ笑んでいるだけだ!
くそっ!リーゼさえいなければあんなことやこんなことがし放題なのに……。
ちなみに母さんがヴァレリアと呼んだ赤子が俺、ヴァレリア・ヴォルドシュミットである。
実に強そうな名前だ。名前だけで世界征服に乗り出せるかもしれない。
そしてニーフェは、リーゼロッテ・ヴォルドシュミット。
これはヤバイ!
ヤバすぎる!
何がヤバイって二人とも名前が変わりすぎてしまったことだ!
完全に以前の面影すら残ってない!
下手をするとこれは別人の話と思われてしまうかもしれない!
だから改めてここに宣言しよう!
忍こと俺がヴァレリアであり、ニーフェがリーゼロッテ(愛称リーゼ)であると!
もう駄目だ…………。自分で言っておいて完全に別人のイメージしか浮かんで来ない…………。
俺はこの日、心の中で振り仮名を振っておこうと心の中で固く誓ったである。
そして俺たちにそんな名前を付けたのが、俺たちの父親にしてこの国の国王でもあるリヒター・ヴォルドシュミットであり、その国王ですら頭が上がらないのが俺たちので母親であるアンネリーゼ・ヴォルドシュミットであった。
なぜか今の国王は男であるが、ダークエルフの世界は基本的に女系社会らしい。
何でもダークエルフは男に比べて女の方が強い魔力をそなえ、プライドも残虐性がひじょーに高い。
そしてそんな国だからこそ、女は逆ハーレムを作って男を何人も従えていることがステータスになったりするとかしないとか。
なんて爛れた種族なんだろう。
黒ビッチさんもこれを知ったらきっと涙を流して羨ましがるに違いない。
いや、むしろこの世界のダークエルフにこそ黒ビッチの称号が相応しいかもしれない。ダークだけに。
ぷっ。
今のはちょっと面白かったかもしれないと思ってにんまり笑いを堪えていると、ニーフェが突然身体を震わせて寒さを訴えはじめた。
相変わらず失礼な奴である。
とは言え王族に輿入れしてきた者は、一族の魔力の質を保つため他所で子作りをするようなことはまずありえないらしい。
王族を選んで心底よかったと思う。
日本人としての貞操観念をもつ俺としては自分の母親が色んな男を侍らせていたりなんかしてたら、軽くトラウマになるところだった。
とまぁ、ある程度前情報を持って転生してみたが今のところ特に問題なくすくすくと育っている。
現在気になっているのは何歳まで母さんのおっぱいを飲むことができるだろうかという一点だけ。
一体どうすれば少しでも長く引き伸ばすことができるのだろうか。