駆動"快楽"決戦騎士と艶声姫
カヴァイ王国、王都シルヴァリア
建国600年を越える歴史ある王都。だが、その栄華を誇った美しい都市も、今日、終わりを迎えようとしていた。
入り込んだ巨大な二体の人型駆動騎士によって、街並みが破壊されていく。
騎士団による魔法も、冒険者による攻撃も、古代遺産である人型駆動騎士には意味をなさない。
街が……蹂躙されていく。
その様子を、城のバルコニーから眺めるのは、二人。
一人は、この国のまだ成人前の幼い王女、ララトルテ。
長い睫毛を伏せる。
金髪がふわりと風に舞った。
「ここまで彼らが来たということは、父さま達は……。もう、わたくししか残っておりませんのね……」
ララトルテの隣に立つのは宮廷魔術師のマリー。
紫の長い髪に、木の杖。典型的な魔術師の格好だ。
「お逃げになられますか?今ならまだ間に合いますよ 」
穏やかに言われたマリーの言葉に、しかしララトルテは首をふる。
「わたくし一人、生き残ってどうするというの」
「……では?」
ララトルテは、バルコニーから王座の間を見る。
王座の後ろに悠然と佇むのは、赤い女性型の騎士の巨人。
カヴァイ王家、王妃王女専用、人型駆動騎士。
"アルカンジェラ"
ララトルテが覚悟を決めた顔で言った。
「アンジェででます」
その言葉を聞き、マリーが満足そうに頷く。
「普通なら訓練もしてない姫が駆動騎士に乗っても、役に立たないでしょうが。私が"弄って"おきましたわ。姫様でも乗れるように」
「そうですか。マリー、いままでありがとうございます。わたくしは、王家の最後の一人としての、責務を果たしにいきます」
マリーは目を見開いた。
「……いや、私も最後まで見守らせてもらいますよ。姫様のアルカンジェラなら、敵を殲滅するかもしれませんしね」
「ふふ、ではいって参ります」
ララトルテは王座の後ろにそびえ立つアルカンジェラへと向かう。
歩きながら、指にはめた、アルカンジェラの装甲と同じ色の、深紅の指輪に魔力を込める。
「リンク―アルカンジェラ」
指輪が光り、ララトルテを飲み込む。
次の瞬間、ララトルテはアルカンジェラの中にいた。
いかなる魔法か、五感全てがアルカンジェラへと繋がる。
視界も感覚も。
いつの間にかララトルテは王座を見下ろしていた。
マリーを一瞥し、王座の後ろ、人型駆動騎士用の出入り口から、城を出る。
「くっ!身体が、重いっ、はやく慣らさないと」
歯を食いしばって歩く。
歩くだけでも、訓練されてないララトルテにとっては、痛みのフィードバックで顔が歪む。
腰の剣を引き抜き、盾を構え、道を慎重に進む。
ララトルテは思った。
――ひとり、先行していた人型駆動騎士がいたはず。緑のずんぐりとした、ひとつ目のゴブリンみたいなやつだった。せめてアイツだけでも。まだ、こちらの存在は、バレていないはず。
建物に隠れながら進み、バルコニーから見た敵の位置を思い出し、合流するであろう場所に待ち伏せする。
貴族街、噴水の大広場。
背後を取れる位置から、様子を窺う。
暫くすると……
街を破壊しながら、何かが近づいてくる音がする。
「はっ、はっ、はっ、はっ」
緊張と、僅かな興奮で、自然、息が荒くなる。それは駆動騎士の口からそのまま洩れ出てしまう。
――いけない、深呼吸。
噴水の広場へ入って来る駆動騎士。緑のずんぐりとしたひとつ目の巨人だ。
――来た!
躊躇無く、斜め後ろから飛び出し、剣を振るう。
――駆動騎士に乗った経験が無いとはいえ、剣術の稽古は受けている。この"アンジェ"なら、下級の駆動騎士一体ぐらいやれるはず!
しかし、アンジェのぎこちない一撃は、緑の駆動騎士にかわされてしまった。
「危ない危ない。おや、駆動騎士が一体生き残ってた?赤い駆動騎士…?王家の"アルカンジェラ"か!」
「はっ、はっ、はっ、はっ」
「あっはっは、もう息が上がってるじゃないか!王妃は死んでいる…お前、王女だろ?こいつはついてる!大手柄だ!」
緑の駆動騎士は、ずんぐりとした機体に、斧を構える。
「いくら、上位駆動騎士のアルカンジェラとはいえ、中が小娘なら問題あるまい。その機体、頂いた!」
――来る!
緑の駆動騎士――通称ゴブリン、がその巨人な斧を振り上げ、アルカンジェラに襲いかかる。盾を構え、斬撃を必死に防ぐ。
一撃、二撃
「ハッハー!痛みで死んでくれるなよ!俺の褒美はお前にするからよっ!」
舌舐めずりするかの様な下卑た声。
三撃、四撃、
――う、腕が痛いっ、こ、こんなやつに!
五撃、斧が盾を撃つ度に衝撃と痛みがララトルテを襲う。
「ほらほら、嬢ちゃん、そろそろ、限界だろ?俺が大事にしてやるよ、おもちゃとしてだけどな!」
――くっ耐えないと!気絶したら機体から排出されてしまう!このくらいならまだ……、本体に直接攻撃を喰らわなければ!
「これで……終わりだっ!」
そろそろ攻撃に慣れ始めてきた、とララトルテが思った矢先のフェイントに、アンジェの盾は弾き飛ばされ、バンザイさせられてしまった。
「ヒャッハー!ゲームセット!」
無防備なアンジェの体に、袈裟懸けに巨大な斧が、装甲を切り裂き貫いていく!
「きゃあああああああ!」
頑丈な上位駆動騎士は、このくらいでは破壊されない。だが、装甲を貫いて本体にダメージが入れば鍛えて居ない搭乗者なら、それだけで気絶する痛みに襲われる。
が、その瞬間。
アルカンジェラを囲うように、いくつもの魔法陣が展開する。
「なにっ!?自爆かっ!?」
慌てて、ゴブリンが後ろに下がる。
魔法陣はアルカンジェラに吸い込まれていくと…アルカンジェラの身体がビクンと跳ねた。
「あああんっ」
ララトルテの艶っぽい声が、アンジェから漏れ出た。
王城のバルコニーから、遠見の魔法で、アンジェとゴブリンの戦いを見学している者がいた。
宮廷魔術師のマリーだ。
「無事、発動したようだ。あはは。機体からの衝撃をフィードバックさせる古代の技術。どうやっても排除出来ないならねぇ、変換、させてもらったよ!私は天才だからねぇ!あはははは」
ララトルテはアルカンジェラの中で身悶えていた。痛みではない。袈裟懸けにされた時、一瞬の痛みの後、とんでもない"快感"が袈裟懸けをされた箇所に襲い掛かってきたのだ。
ララトルテは涙目になり、
「ん、ん、ん、ん、んぅ~~~~!!」
ずくり、ずくり、と、襲ってくる痛みではない感覚に、気絶しそうなまでに、昂ぶった感情を必死で抑える。
必死に意識を保ち、目の前の敵を排除するために、アルカンジェラを操作する。
無理な姿勢を支えるために、踏み抜いた脚に走った痛みさえも、快感に変換され、思わず声が出る。
「あんっ!!!」
「き、気の抜ける声しやがって!」
剣を、ゴブリンに向かって叩き付ける。無茶苦茶に、何度も何度も。腕に掛かる衝撃が、フィードバックする。
「んっ、んっ、んっ、んっ、んぁ、」
「ま、まて、う、や、やめろ、ぐ、ぐうぅ」
止まらない。普通なら、腕の限界が先に来るような、無茶苦茶な攻撃も、止まるどころかますます激しくなっていく。
「あ、あっ、あっ、あっ、あっ、」
まるで、攻撃を叩き付けることが目的となっているかのように。
アルカンジェラは剣をゴブリンに叩き付ける!
「あんっ、あんっ、あんっ、あああああ〜〜!」
「や、やめっ、ろ、やめ、ください、ぐぷっ…………」
アンジェから漏れる艶めく声と、ゴブリンから漏れるアンバランスな必死な声が戦場にこだまする。
いつの間にか、ゴブリンはぼろぼろになり、足元に倒れていた。
気絶し、足元に排出された操縦者を、付近の住人がいい笑顔で縛り上げていくのが見える。
こちらに振られた手を、アンジェで振り返しながら、ララトルテは身体を襲う未知の感覚をなんとかなだめすかす。
「ん〜〜!ん〜〜!はぁはぁ、んっ、ん、んっ。…確かにうごける!確かにうごけるんだけどもぉー!」
ララトルテは涙目になりながら、我が頼りになる魔術師殿の言葉を思い出す。
『私が"弄って"おきましたわ。姫様でも乗れるように』
「せめて、声が漏れないようにぐらいはしてよぉー!もう、お嫁に行けないよぅ……」
王都に侵入した敵はもう一体。
後に無敵を誇る、艶声姫最初の戦闘は、こうして幕を開けたのだった。
ロボット物は人気が出ない、と言われるなろうで、どうにかして面白いロボ物を書きたいと思い、この設定を考えました!
姫様が必死に耐えながら戦う姿を楽しんでいただければ幸いです!
一気に書き上げた物ですが、設定かなり考えてあるので、万が一、人気が出るようなら続きを書きます。
ブックマークと高評価で、ランキング載るようなことがあれば…
ないよね…?




