【幻風景】ブラインド
冒険者の使う「くらやみ」の魔法あるでしょう。あれはいけない。あの魔法の本来の名前は「よとばり」と言うのです。
「よとばり」の魔法はまさしく、この地方で生まれた魔法でしてね。ここいらは冬至になると、太陽が昇らず一日中夜になる日があるのです。
その時、太陽は地の底で生まれ直している。自らの炎で、自らの身を焼いているのです。
そんな太陽の苦しみに思いを馳せるため、冬至の祭りでは我らも祈りを捧げる。
まぶたを閉じて、自らに闇を下ろす。ゆえに「夜帳」。
本当にそれだけの魔法なのですよ。なのに、強制的に目をつむらせる魔法として、冒険者たちが戦いに使いだした。便利だからと。
けど、そこには太陽への敬意がないでしょう。ましてや「くらやみ」の魔法だなんて勝手に呼んで。
そう司祭が怒りながら語っていると、礼拝所に村人たちが入ってきた。
「ちょうど、これからその冬至の祭りなのです。あなたもいかがですか」
確かに自分もその、便利に使う冒険者の側の人間だ。たまにはいいか。
俺は村人たちに交じって、太陽へ祈りを捧げた。
と同時に司祭の聖句も魔法として発動する。俺は自ずと目を閉じた。