ゲームにない設定で困惑
3年生になり、Aグループに所属することになった。
ついに攻略対象者たちとの接触が始まる! こんどこそゲームスタート!
な~んて思っていた矢先、
「学園長がお呼びだ。急ぐように」
担任であるジョージ先生からの個人的な声掛けがこれだった。
攻略対象者の一人というのに実に連れない態度で素っ気ない事務的なやり取り。
うん、ヒロインに対しての反応なんて全く伺えないよね。
仕方なく学園長室へと行ってみると老齢のお爺さんがいてニコニコと私を迎え入れてくれた。
ソファーに腰掛けるよう促され、向かい合わせで座ることに。
「……それで君に声をかけたのは優良能力生として認め、是非特殊魔法を学んでほしいと思ってだね」
この世界では火水風土光闇の6つの適性が基盤にある魔法が使える設定観。
だけど男の子は光の適性はほぼなく、逆に女の子も同じく闇の適性はほぼないようなもの。
魔力のあるほとんどの人間が火水風土の中でどれかの適性が最も強く、光と闇は男女でも弱小程度の貴重な能力で特別枠といえるもの。
つまりその適性が僅かにあったとしても高度な魔法となると難しく、能力的に魔力が豊富で適性が強い存在でないと無理という話。でも全く使えないという訳ではない。
例えば闇適性の魔法だったとしたら男の子であれば初級程度、女の子だとかじる程度という感じ。
闇と言ったら聞こえは悪いけど重力負荷的に身体にかけて筋肉増加! みたいな感じで使ったりするものもある。
私はヒロインということもあってか、もともと光適性が一番強い特別枠。
本来であれば攻略対象者と絡んで各適性を上げていくはずなんだけどそれがなかったため、自力である程度切り開いた面もある。
特に光に関しては王子との絡みで跳ね上がっていくはずだったのに何だかなぁ。
それに未だに悪役令嬢であるアナベルとも出会っていないし、行方不明な実態に不安が過ぎる。
1年次には噂を耳にしてたからいるっちゃいるはずなんだけどね?
「そこで特別枠として君に別室を用意しておるからそちらでしっかりと身に付けて欲しい」
学園長はフォッフォッフォと笑いながら特別許可証を差し出してきた。
「2年続けて光適性の強い生徒に巡り合えるとは実に誇らしい。今年度は君という存在で素晴らしいことだ」
そこで何故か引っ掛かった。光適性は女子の確率が高い。
「……あの、昨年度はどなただったのでしょうか?」
「ああ、公爵家のご令嬢、アナベルくんだよ」
やっぱり予感的中!どおりで教室にいないはず。
とはいえ、悪役令嬢である彼女が光適性が強いとはどうなってる? 確か火の適性が強かったはずなのに?
しかも別室で授業なんてゲーム設定には無かったし。
だけどほぼ強制的に今日から一人だけで個室へ移動し、光魔法でも高度なものを習う羽目になってしまったのはいうまでもない。
こうして3年次が始まり、この1年間はほとんど単独で過ごすはめになる。