悪役令嬢と接触しない日々
「アナベルさまは素敵でお優しいわよね」
「淑女の鏡ですわね、さすが将来の王子妃ですわね」
入学してからというもの、そういった声を周囲で耳にした。
アナベルといえばアイリに嫌がらせをする大ボス的存在、つまりは悪役令嬢。おまけに王子の婚約者。
設定では序盤で同じクラスではないものの、攻略対象者たちとは出会っているため、遠巻きに目を付けられた存在になる状況のはず。
だけど全く出会ってないためにその認識がどうなってるか分からない。
しかもエクストラキャラであるカイルとは同じクラスだったはずなのにいないし。
クラスは1組から3組となっていてそのクラス内で能力別グループに分類されている。
つまり1組はAとBグループ。2組はCグループが4分割、3組はDとEグループというように。
これは個人の能力や適性が異なることが理由。先頭のクラスが優秀となる。
私みたいに魔力があるけど今まで魔法の基礎を碌に知らない生徒とある程度使いこなせる生徒が同じクラスだと教える内容が偏るため分かれている。
1組は基礎も魔力もクリアできていて高度な魔法が習える生徒だけが集まっている。
2組は基礎を学びながら上位クラスを目標に学習する人向けで一番多い。←私が今ここ。
3組は基礎を学ぶ前に魔力不足など魔法を習う以前の問題を解消するためといったとこ。
魔法は魔力不足だと使えないのでいくら習ったとしても発揮できない。
高度な魔法を使いこなすためにはそれに相応しい魔力が必要だから仕方がないこと。
ゲームでは魔力量を増やして新しい魔法をゲットしてたっけ。
私の初期値は魔力があるものの魔法を知らないから全く使えない。だからまずは基礎を学ぶことからスタート。
そうやって個々のパラメータを上げていくことで攻略対象者とルートが決まってくる。
知力・体力・魔力・魔法力・精神力を基本に好感度の影響がそれぞれの恋愛へと発展。
例えば知力が高ければカミルルート、体力だとレオナルドルート、みたいに。
高いといっても特化したその値が8割程度で他は低くてもルートが確定するから難しくない。
基本は乙女ゲームなんだから恋愛しないとお話にならないからゆるかった。
ただパラメータを高める作業がめんどくさいだけ。妨害ですぐに削られるから甘かったのかも。
ちなみに必ず誰かと結ばれるようになっていてバッドエンドは存在しない。
ゲーム開始から早一年。
何事もなく、というより、攻略対象者との接触はおろか妨害すらなく自力でパラメータが上がりまくり。
いや、何もないからそっちに集中するしかなかったし。クラスでは常にトップになってるし。
おかげで2年生からはあっさりと1組に昇格。ゲームでは結構必死だったのにな。
もしかしてバグって私の存在が認識されてない、とか? そもそも誰とも出会ってないし。
次年度は同じクラスになるから今度こそ何らかのイベントが発生するはず。
もし何も起こらなければ嫌がらせの根源である悪役令嬢に近づくしかないってこと?