表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/16

よし、出会いイベントだ!

 全寮制である魔法学園。魔力持ち平民の特待生として制服も支給され、準備万端の初日。

 いざ行かん、門をくぐれはそこは学園内。ゲームスタートの第一歩。

 そう、入学式が行われる講堂へと向かう途中で出会いイベントが発生するはず!

 意気込んで門扉をくぐると綺麗に整えられた植樹が両脇にあり、レンガの敷き詰められた道が続いている。

 前方には何人かの人たちが歩みを進めているのがちらほら見える。

 

「ぎゃ!」


 見事にレンガに躓き、派手にひっくりこけた。それこそヤラセかよといわんばかりの転びっぷり。

 でもわざとじゃないし。よそ見して注意散漫だったのが悪くて本当に引っかけたんだから。

 ヒロインらしからぬ悲鳴を上げてしまったけど、驚き転んだのだから仕方がない。

 これは強制力というべき、出会いイベントの一環という出来事で発生すべき事象だったと思うよ。

 で、このまま倒れていると差し伸べてくる優しい手が現れるはずで……。


 ってあれ? 誰も来ないんですけど?

 ここで攻略対象の一人であるエリン王子が現れるはずでしょう? なんで?


 しばらく動けずにいたけどずっとうつぶせたままではいられない。

 周囲の冷たい視線を肌で感じつつ、パタパタとスカートを払う。

 手助けもないから自分で起きるしかなったよ!

 全く何も起こらないし、戸惑いながらも講堂に向かうしかなかったもんね。


 会場の入り口に立ち、目の前の光景に圧倒される。

 既に同じ制服を身に纏ったたくさんの生徒たちが着席し、その時を待っている。

 うう、緊張する。ほぼ貴族の御子息息女の皆様だから漂うオーラが違う。

 何故か多量に汗が出てきたのでポケットからハンカチを取り出してぬぐう。

 それから自分の席を目指すものの、躓いてバランスを崩すという技が勝手に繰り広げられた。


「あ!」


 弾みで握ってたハンカチが手から離れてひらりと舞う。

 その行方は誰かの足元へと舞い落ちた……、舞い落ちるはず、なのに?

 誰の気配もない床へと舞い広がった、だけ……。


 ん、ここでは公爵子息ノアが拾ってくれるはずなのに!

 ものの見事に出て来やしないっ! なんで? どして?


 グズグズしているわけにもいかないので拾い上げるとさっさと席に着いた。

 こうじゃなかったっけ? 記憶違いなの?

 不思議に思いながらも入学式が始まる。


 変だな。攻略対象者が出てこない。ここはまほスクの世界じゃないの?

 前世の記憶は勘違いなのかと不安に思い始めた頃。

 新入生代表としてエリンが挨拶し、生徒会長としてノアが現れた。

 うん、スチルで見た場面の対象者が存在してる!

 本来ならこの時、手を差し伸べてくれたのが王子だったのね♡とかさっき拾ってくれたのは公爵子息さまだったの♡という乙女な感情が巻き起こるところなのに。

 そんな接触すらないまま、何のとりとめのない無難な入学式が終了した。

 ここから先もジョージ先生や宰相の息子カミル、騎士団長の息子レオナルドと出会うはずなのに全くない。

 故意ではないのに無駄に転びまくって膝は擦り傷だらけだし、落としたハンカチはどこかへ消えて無くなったしで踏んだり蹴ったり。

 それぞれのキャラは遠巻きに確認はできたものの、個人的な出会いイベントなど全く起こらずに入学初日が終わっちまったよーん。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ