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書庫での出来事

「おい、何呆けている!」


 また怒られた。ただ今、先輩と共に禁書庫にて探し物の真っ只中である。

 

「いいか、ここは長くいるとどんどん魔力が吸い取られていくからな。さっさと探しだせ、わかったな!」


 さすが禁書が置いてある特別な書庫ということもあって仕掛けが半端ない様子。

 簡単に持ち出せないように管理されていてなおかつ長居できないようになっている仕組みらしい。

 更には書物にも魔法が掛かっていてすんなり文字が読めないようになってるから探すのにも苦労する。

 かれこれ1時間ほどいるけど先輩の顔色が悪くなっているのが判る。

 うん、これもヒロインチートかな。私にはその辺は全く平気なんだけど見つけられないものは見つけられない。

 それより何より書物に囲まれた片隅にひっそりといる存在が気になって仕方がない。

 書物の背を追う内にふと視界に入る人影。背丈から男の人っぽい感じ。

 制服姿の私たちとは違い黒っぽいマントを羽織り、フードを目深に被っている。

 入室した時から目に留まり、脚立に腰かけるようにしてただ書物を読んでいた。

 居たのかというほど影が薄いといえば影が薄い。先輩は気にする様子もなく目的の書物を探し始めたし。

 向こうもこちらをチラッと見たから軽く会釈してから先輩の指示通り動いたけどさ。

 まあ、微動だにせずただページを静かに捲ってたし、元々先輩たちに声掛けしてもほぼ無視されてるようなもんだしこんなもんかなって。

 ただずっと居る感じで長居して大丈夫? と目につく度気になり、先輩から喝が入るのだ。 


「仕方がない、退室するぞ!」


 先輩が諦めたように急いだ様子で書庫から出ていく。とても具合が悪そうな感じでぐったりしていた。


「……あの、どなたかに尋ねることはできないのですか?」


「はっ? 誰に訊くっていうのだ。バカなのか?」


「いえ、書庫番の方だとか」


「そんなもの、いるわけないだろう。あの部屋は特殊で長時間の滞在は団長クラスでないと無理な場所だ。禁書が置いてあるとはいえ重要な上役を配置できない。だからあそこまで厳重に守られているんだ。団でも高位の我々で何とか耐えられるから任される大事な仕事なのだからな!」

 

 ……あまり耐えてるようには見えんが負荷のかかるお仕事だとは理解したよ。何だあの人は書庫番じゃないのか。

 それにあの部署が高位な集まりだったとは今知りましたわ。


「あの、体調の方は大丈夫ですか?」


「君がバカなせいで余計に疲労させられてしまっただけだ。施術室で休憩後、部署に戻るぞ」


 ヨタヨタとする先輩に付き添いながら言われたとおりにした。

 施術室に着く頃には支えられないと歩けないようになり、施術士に抱えられて運ばれる。

 結局倒れ込んだまま起き上がれない先輩を置いて部署に戻らざるを得なかったけども。

 翌日、寝込んでしまった先輩の代わりに別の先輩と禁書庫に派遣させられる。

 けど同じように小一時間ほどでぐったりし始めた先輩に気付いた時、誰か入ってくるのがちらりと見えた。

 一瞬、目が合った気がして会釈をしたけど、目の前の先輩に気を取られてしまった。


「……あの、大丈夫ですか?」


 もう部屋の外で既に座り込んでしまった先輩は項垂れている。やばそう。

 今度は施術士を呼んできて運んでもらったけど私への配慮が負担になったとかブツブツと呟いてた。

 全くこの人たちゃ~、いい加減にしろよ!

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