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あの世とこの世

作者: みなづき

 この世に来てからもう半年になる。初めてのお盆が近づくが、あの世の家族は僕が帰る準備をしてくれているだろうか?この世の人々は家族に会える、あの世へ帰れると浮足立っている。僕はこの世に来て初めて帰るから不安でいっぱいだ。中にはあの世へ帰って、この世に戻ってこられない人もいるト聞いている。この世に戻ってこられない人があの世でどうなっているか知らない。この世からあの世は見えない。

 僕はまだ、この世に来て半年。あの世にいたときも人と関わるのが苦手だった僕が、知らない世界に来て、知らない人と仲良くなれるはずがなかった。

 僕は早くあの世にもう一度生まれたい。そのためにあの世へ行って、あの世の情報を得て、生まれ変わる時期、生まれ変わる場所を間違えないようにする。そのような重要な任務もあるから余計不安だ。

 

 そんなことをうだうだと考えていたらあの世がお盆になった。道に迷わないよう、みんなの後についていく。中にはあの世へ帰らない人もいた。そういう人たちはあの世に会いたい人がいなかったり、家族みんながあの世からこの世へ移っていたりしている。

 いつか僕もこの世で家族と暮らしたい。そしてみんなと一緒にあの世へ生まれ変わりたい。

 そんなことを考えていたら、目的地に着いた。僕の家族は僕のことが見えないようだ。残念だな。妻はよく、霊感があるなどと言っていたのにな。生まれたばかりの娘は半年でだいぶ大きくなっているように見える。見えるだけなのか。妻は親族を連れ、娘を抱え、僕のお墓参りに来てくれた。僕の好きな花も供えてくれた。お菓子も供えてくれた。長く手をあわせてくれた。僕は愛されていたようだ。

 

 それがわかったら、あの世へ帰らなくては行けなくなった。帰り道、家族を連れている人がいた。


「あの……すみません。その人、ご家族ですよね?この世の人ですよね?連れて行くんですか?」


「あ………はい。やっぱりあの世で一人はさみしくて。連れて行こうかと」


「そんなこと、できるんですか」 


「はい」


 僕はあの世へ帰る前にもう一度妻と娘の元へ帰った。この二人と一緒にいたい。もっともっと一緒にいたい。そうだ、僕もやっぱり二人をあの世へ連れて行こう。

 

 僕は妻の手を取り、娘を抱え、あの世へ帰った。


ありがとうございます

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[一言] おぉ…急に怖くなった
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