第一話 【 オタバレ 】
思い付きで書き始めました。
よろしくお願い致します。
―――魔界。
そこに生命は存在しない。
光と呼べる明かりもない。
ずっと続く闇だけが広がり、照らすのは真っ赤に染まった三日月のみ。
水は腐食して泥となり、土地は腐臭を漂わせ、植物だったものは毒を放出する。
そこは正に悪魔が住まう世界そのものだ。
しかし
そんな世界でも国が存在した。
魑魅魍魎、妖怪、魔獣、魔族、ありとあらゆる負の概念だけで実態を作り上げ存在する生命体が集結して築き上げられている。
彼らに光などない。
彼女らに絆などない。
あるのはただ1つ。
・・・・破壊。
すべてを犯す。
すべてを殺す。
すべてを壊す。
魔界に住まう住人は、ただ破壊と呼ぶ本能に従う。
だからこそ、彼ら彼女らは目指すのだ。
光がある世界へ。
希望に満ちた世界へ。
それらをただ、破壊する衝動を解放する為だけの為に。
◆ ◇ ◆ ◇
コツ、コツ、コツと固い岩石が綺麗に並べ整えられた床を歩く音だけが反響する。
明かりは手に持つ黒い火種が燃えるランプのみ。
人間であれば足元しか見えない廊下を、その人物はまるで先が見えてるかのように容易に進む。
「ふぅ・・・さて」
他の物よりも一際大きく頑丈な形をした扉の前に立ち止まり、男は身なりを整えて扉をノックする。
「お忙しいところ失礼致します。 ご報告があり参上いたしました」
一秒・・五秒・・十秒・・待てど暮らせど扉の向こうにいる人物の返事は返ってこない。
男は再度、扉をノックする。
「お忙しいところ失礼致しますッ! ご報告があり参上いたしました!!」
今度は先の見えない廊下全体が響き渡る大声を上げてノックをする。
しかし、扉の向こうの人物はやはり返事をしない。
「・・・・・・・・ふ」
男は小さく笑う。
そして再度身なりを整えると右手を握り絞め、それを大きく扉に向かって振り下ろした。
「お忙しいところ失礼致しますぅッ!? ご報告がありィッ!! 参上いたしましたァッ!! ゼェ! ゼェ! ゼェ!」
息を切らして呼吸を整えていると、さっきまで反応のなかった扉が小さく開いた。
『・・・・・・何用ダ』
ほんの小さな扉の隙間であるはずなのに、そこから聞こえる声と呼べる物は殺気に満ち溢れていた。
一歩間違えばすぐに殺されるのではないかと錯覚するくらいの圧に、男は思わず足を一歩後ろに下げる。
「お忙しいところ恐縮ですが、定例会のお時間です。 どうかご準備のほどを」
『ホゥ・・ソウカ。 モウソンナ時間カ』
「はい。 本日は四天王の一人が遂に勇者に倒されてしまった件について。 その者の処遇を決定する会議でございます。 どうか貴方様の御意見を頂きたく」
男は扉の隙間にいる人物に対して深々と頭を下げる。
そこからしばらく沈黙が続く。
扉の隙間から感じ取れる殺気は消える事がなく、まるで目の前に刃物を突き付けられている感覚が肌に感じ取れる。
それでも男はその場から退散する事無く、ただ頭を下げ続けた。
『・・・・え? 別によくない?』
「そうですよね。 やはり彼は処分するという事で・・・はい? いまなんと??」
急に潰されるよな圧がなくなり、扉の隙間にする人物は不思議そうな声をだす。
『え? だって彼は彼なりに頑張って勇者に倒されたんでしょ?』
「は、はぁ・・まぁ、そうですが・・・」
『じゃあいいよいいよ。 それよりも彼は大丈夫? 倒されたって事はそれなりにやられたんでしょ?』
「え、えぇ。 命に別状はないと、医療班は言っております」
『そっかそっか! じゃあ彼への処遇はキズが治るまでの自宅待機で! はい! 会議終わり! それじゃ!!』
返事を聞く間もなく扉を閉めようとする人物に男は思わず足を扉に挟みこみ閉める動作を止める。
『ちょっ何ッ! 我これでも忙しいんですけどッ?!』
「いい加減にしてくださいッ! 貴方様がそうやって甘やかすから部下達も勇者討伐への士気がさがるんですッ! 少しは威厳を見せてくださいッ!」
『うっるさいなぁーッ! いいじゃん別に! 人生ってのは負けても生きていれば勝ち組なんだよ! 諦めなけらばいつか勇者を倒す事だって出来るって! それが何の問題があるって言うんだいッ!!』
「それが甘いと言っているんですよッ! 彼は四天王でありながら貴方様の命令も守れずに生きて戻ってきた! これは魔族にとって・・いいえ。 魔界にとって恥です! 彼はこれからの魔界の為にも見せしめに処分するのが妥当でございます!!」
『う~わ怖ッ! このカウンセラー怖すぎるッ! アンタ本当に父上の元右腕かッ?!』
「神に警戒され、人間を恐怖に陥れ、世界を支配する魔界の王。 それが貴方様でしょう! 魔王様ッ!!」
『うわッ! ちょちょちょちょッ!!』
カウンセラーの意地で無理矢理扉をこじ開けられ魔王と呼ばれた人物の部屋が明らかになる。
勢いに負けて尻もちをついていたカウンセラーは尻を擦りながら腰を上げ、魔王の部屋が視界に入る。
「な、なんですか・・・これは・・」
カウンセラーは絶句する。
神に警戒され、人間を恐怖に陥れ、世界を支配する魔界の王。
先代の魔王もそれを体現されたような方であり、正に魔王の中に魔王と呼ばれるに相応しい人物だった。
しかし
数年前に他界してしまい、現魔王が玉座を引き継いでからという物、そういう威厳は世界から消えかけていた。
それは、この部屋の中に理由があった。
『あ・・ははははは』
歳にしてまだ15歳という若さで魔王と呼ばれた子供は、カウンセラーの絶句する表情に思わず苦笑いを見せる。
カウンセラーが見た魔王の部屋は拷問危惧が並べられているわけでも、禁忌魔法の実験を行われているわけでもない。
その部屋に広がるのはおびただしい本の数だった。
床にも、棚にも、机にも、すべて本で埋め尽くされている。
それは魔導書でも、禁忌目録でもない。
魔王の部屋に埋め尽くされている本の正体は、すべてマンガと呼ばれる人間が創作した本だった。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
この作品はお風呂に入っている時に思いついてすぐに書き始めた物語なのでオチと呼べる物は何も考えていません。
思いついて書いていきたい作品にしたいと思いますので、どうかよろしくお願い致し舞うs。
次回、オタクがばれた魔王が・・・・