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第六話

夢を見た。

俺は元の世界の、自分の部屋にいた。

そこでゲームをして、友達と電話で話して、アニメを見て、ポテチを食って、コーラを飲んで、漫画を読んで。

そんな夢のような・・・・・・・・・・・・

待て。待て待て待て待て待て。

これ、走馬灯じゃないか?

ということは、俺、死ぬの?

死ぬ直前なの?

いやだ、死にたくない。死んでたまるか。でも、・・・いいなあ。こういう自堕落な世界。

いや、いかん。俺には使命がある。絶対に、元の世界に帰るんだ。

「うわー!やめろ!」

俺の好きなネットゲームが近寄ってくる。どういう誘惑だ、これは。

「よせって、あっちいけ!たのむ!ホントに向こうに行ってくれ!!誘惑に負ける!」

俺の周りには、いろんなゲーム、アニメ、漫画がさらに近寄ってくる。

ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

「・・・アアアアアアアアアアアアアアあぁぁぁ・・・?」

絶叫しながら目が覚めた。

良かった、死んでなかった。

というかどこだここ?

なぜかベッドの上に乗ってる。

病院みたいな場所だな。いや、病院なんだろうな。

もっと周りを見渡したくなったので、身体を起こす。

「うぎっ!痛ってえええ!」

なんだなんだ。右脇腹がめちゃくちゃ痛いぞ。

服をめくり、見てみると、包帯でぐるぐるに巻かれていた。

これって。・・・あー、ボスから受けたあの攻撃のせいか。

思い出した。よくあの攻撃を受けて、よく生き残れたものだな、俺。

でも、よく生き残ってくれた俺。

まてよ、そういえばハデスはどうしたんだ?

「おい、ハデス!」

「そんなに大きな声を出さなくてもここにいるわよ」

「うわっ!」

すぐ隣にいた。こんな近くにいたのか。

「大丈夫?あんた、もう少し助けられるのが遅かったら、出血多量で死んでたらしいわよ」

「へー・・・・・・」

走馬灯を見たからか、精神が麻痺していて、死にそうだったという事実を聞いてもそんなに驚かなかった。

「でも、俺なんでこんなところにいるんだ?」

「あぁ。それはね・・・」

「クロノス・D・オーメン様、いらっしゃいますでしょうか?」

病室に入ってきた人から名前を呼ばれた。

でも、この声どこかで聞いたことがいるような・・・。

「あぁー!あんた、俺に革鎧をくれた受付の!」

「覚えてくれていましたか。ちなみに、申し遅れました。私、『ハルカ』と申します」

「はいはい。ところで、どのような要件で?」

なぜここに来たのだろうか。特に、問題行動は起こしていない・・・・・・起こしまくったけど。

「はい。今回のことで、お詫びがございまして」

え?この人、特になんにも悪いことしてくれてないよね。何で詫びなんか?

「本当に申し訳ございませんでした!我がギルドの調査隊の腕前が足らないばかりに・・・。本当に、本当に申し訳ございませんでした!」

「いや、頭を上げてください。・・・でも、ことの詳細を話していただきたいのですが」

調査隊の腕前不足だと?どういうことだ?

「はい。実はですね、我々のギルドには、依頼の難易度を決めるための調査隊がおりまして」

「ふむふむ」

「今回は、その調査隊の腕の悪さのために、中級依頼を、間違えて初級依頼にしてしまったのです」

「ほうほう。それで?」

「それに気づき、すぐにあなた達を救助しに行こうとしたら。・・・洞窟は跡形もなく消し飛んでいるではないですか!しかも、周りの木々は焼失してますし。で、その中心に貴方が倒れていたので、このように病院に運び込んだ、という始末でございます」

「あー、なるほど。じゃあ、俺を病院に運んでくれたのはあなた達だったのか。ありがとうございます」

「いや、まさか洞窟がなくなるほどの攻撃をしてくるゴブリンキングがいたとは。生き残っていたのが奇跡と呼べますよ」

「ぜんぜん平気でしたよ。あれ、俺がやったんで」

「は!?」

なんか、驚かれた。

口が大きく空いたままですよ。レディーなんだから気をつけないと。

「どうしました?」

「い、いえ」

やっと、大きく開けていた口を閉じてくれた。

「あれ程の力を発揮するなんて。もしや、あなたは『勇者』様の一人ではございませんか?」

うーん。まあ、間違ってはいないんだが、残念ながら・・・

「残念ながら、俺は『番外』です。勇者なんですけど、・・・・・・勇者ではないんです、ハイ」

おれは勇者ではない。番外という、勇者であって勇者ではない者なのだ。

「・・・・・・。とにかく、これは今回の報酬です。ここに置いておきます。登録料などは、結構ですので」

そう言って、布でできた袋を置いていき、去っていった。

ギルド職員の人が去っていった後、医師と看護師が入ってきた。

「・・・・・・」

しばらく、俺の身体の怪我の確認をした後。

「もう退院しても大丈夫ですよ」

と言われた。

よっしゃあ!退院だ!さあ、早くいろんな依頼を解決して、金持ちになるぞ!

そして、立ち上がろうとしたとき。

「痛ってえええ!」

右脇腹が痛くなり、うずくまった。

そうだった、急に動かしちゃいけないんだった。

「だ、大丈夫ですか?」

「ええ。へ、平気です」

「・・・そうですか」

痛たたたたたたた。痛い、痛い。こんな重傷を負ったの初めてだよ。

退院して良いそうなので、カーテンを閉めて、制服に着替える。

・・・うわ。あのボスの攻撃のせいで、制服に穴が空いちゃった。裁縫道具とか無いから直せないじゃん。どうしよう。

今はなんの処置もできないので、これを着ているしかない。

革鎧は、・・・だめだな。完全にぶっ壊れてる。

今の俺、紙装甲だから下手したら死ぬ。

そ、そうだ。さっきもらった報酬金。

急いで、さっきもらった袋の中を覗き込む。

入っていたのは、大きめの銀貨が5枚と、少し小振りな銀貨が3枚。大きめの銅貨が8枚と、小振りの銅貨が2枚。大きめのものと小振りのものの中間くらいの大きさの銅貨が、6枚。

この世界のお金の単位がわからないから、大金なのかどうかわからない。

後で少し調べてみるか。

着替えが終わったので、看護師に伝え、病院を出た。




うーむ、どうしようか。今の俺は怪我をしているから、モンスターの討伐をできるような状態じゃないしなぁ。

「ねぇ。これからどうするの?」

「今の俺は怪我をしているから、下手したら死ぬ。モンスターの討伐とかが、今は怖いな。することがない」

本当に困った。これでは、路頭に迷うことになる。

「じゃあ、私が一肌脱ぐしか無いわね。私が戦うから、武器貸して」

「ハァッ!?」

え?・・・え?今こいつ、自分で戦う、って言ったよな。

「え?お前戦えるの?」

「なに?私が、戦えない軟弱者だと思ってた?残念でしたー。そんな、軟弱者ではありませーん。少なくとも、今の貴方に負けることはありませーん」

「ほう?じゃあ、ステータス見せてくれよ」

めっちゃ苛つく声で煽られたので、喧嘩腰で尋ねる。

「いいわよ。ほら」

そう言って、自分自身がスキルのくせに、メニューを開いて、ステータス欄を俺に見せてくる。

レベルは、・・・俺と同じ14。だが、ステータスは・・・・・・。

・・・俺と同じレベルのくせして、とんでもないステータスをしていた。

どれくらいかって?うん。教えてやろう。

全てのステータスに0が6個以上は付いていた。

つまり、すべての数値が、100万超えであるということである。

俺のステータスの最大値であるHPの「3056」を大幅に超えている。

「・・・なんでお前こんなに強いの?」

「当たり前でしょ、神様なんだから。これでも結構弱体化されてる方だけどね」

いや、あの数値で弱体化されてるって・・・。

本領を発揮したら、この星消えるんじゃねえか?

「うーん・・・・・・。じゃあ、お前に頼もうかな?」

「よっしゃー!久々の、戦闘だわ!腕が鳴るってんでい!」

あれくらいのステータス値だったら・・・。俺の推測だが、中級の下くらいは、簡単に攻略できるんじゃないか?

「さて、準備ができたからギルドに・・・」

「ちょっとまって!」

「ん?どうした?」

ハデスが、神妙な面持ちでストップをかけてきた。

な、なんなのだろうか?なにか重要なことが・・・。

「・・・・・・お腹すいたよぉ」

こけっ、とズッコケてしまう。

「なんだそんなことか。たしかに俺もお腹が空いてきたしなぁ。・・・先に飯にするか」

「やったぁ〜!腹が減っちゃあ戦ができぬ!腹ごしらえじゃー!」

そういえば、ギルドの近くにスーパーマーケット的なものがあったよな。あそこで買うか。

あ、でも俺金持ってねえや。

「あ~。お金がないんだった」

「コーセー、報酬金もらってたじゃん。あのお金を使ったら?」

あ、そうだったそうだった。報酬金があった。

「・・・・・・何食べたい?」

「お肉!」

「そんな大層なものを買える金があると思うか?」

「えー。じゃあ、・・・・・・えーっと、魚!大きいの!」

魚か。だったら、釣りでもすれば手に入るよな。それだったら良いか。

さて、この辺に川や海があったかなっと。

地図を取り出し、確認してみる。

うーん。この辺にはなさそうだな。

いや、この城下町の外に大きめの池がある。ここなら、釣れるんじゃないか?

少し遠いが・・・。

ハデスの意見を聞くとしよう。

「えーっと、少し遠出になるけど大丈夫か?」

「そこに食べ物がいるんでしょう?だったら、たとえ火の中水の中!」

良かった。歩きたくないとか言われたらどうしようか、と考えてしまった。

うむ、その意気やよろしい。

「この城下町の周辺に、大きな池があるんだ。そこに行けば、魚が手に入ると思うんだよ」

「よし、行きましょう。今すぐ行きましょう。早く!」

「まあ、待て待て。釣り竿がないから。簡易的だが木の枝とかで作るから、少し待っててくれ」

釣具屋があれば良いのだが、この地図には載ってなかった。

糸は、・・・・・・買っとくか。少し丈夫な糸があれば良いんだが。

「そんな物いらないわよ。手づかみで取れるから」

は?手づかみ?

「いやいやいやいや。濡れたときの変えの洋服がないから。というか、お前泳げるの?」

「失礼ね。私は神様なんだから、服くらい魔力で創り出せるわよ。あと、泳げるもん」

「あ、そうなの?だったらいいや」

ふーむ。じゃあ、こいつに魚を取ってくるのを任せて、俺は調理の準備でもしておくか。

「こんな話をしてる最中じゃないわ。魚が私を呼んでいる!早く行くわよ!」

「はいはい」

ハデスが走り出したので、俺も後についていった。


ああ、待て待て!そっちじゃない!逆だよ!


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