第四話
第4話 初のボス戦!そして、・・・ピンチ?
「ほーら、出てこーい。怖くないよぉー。少し痛いだけだよー」
洞窟内を進んでいき、出てきたゴブリンを全部倒していく。
レベルも更に上がっていき、今やレベル10に到達しそうになっていた。
そんな感じで洞窟内を進んでいると、分かれ道にぶちあたった。
「どっちに行きたい?」
「ふっふっふ。私の無敵の勘によると、右に行くと吉と出た!」
「よし、左だな」
そのまま左に進む。
「ちょっとぉ!なんで、さっきから私の行きたい方向と逆の方向に行くのよぉ!」
なんでかって?それはな・・・
「お前の指定した方向に向かうと、良くないことばっかり起こるんだよ!さっきだって、落とし穴のある罠部屋に入っちまったしよぉ!」
「たしかに、そうなんだけどさぁ・・・」
左の道を進んでいくと、すごい立派な門に突き当たった。
「なんだこれ。いかにも、ボスが出てきそうな部屋だな」
いや、ボス部屋だわ、これ。
「少し警戒しておいたほうがいいかもな」
片手剣を右手に持つ。
「スゥーー・・・。ハァーーーー・・・。
・・・よし、やるぞ」
息を整えて、
「おじゃましま~す!」
門を蹴りで開ける。
中は結構広く、他の部屋とは比べ物にならないくらい立派な部屋だった。
部屋の中心には一風変わったゴブリンが佇んでいた。
俺の背と何ら変わらないくらいの身長で、他の奴らは着ていないなかなか良い鎧を着ている。片手には大剣が握られており、頭にはリーダーを象徴するような錆びれた王冠がのっていた。
そいつは俺たちの方をゆっくりと向いた。
血に飢え、殺気に満ちた視線を注ぎながら。
ボスの視線に悪寒が全体を走りまわったので、思わず剣道の五行な構えである、水の構えをとった。
水の構えというのは、剣を相手の目に向ける中段に構えて、様々な攻撃から身を護る構えである、・・・と本で読んだのを思い出した。
「ボス、来たぁー!」
「いや、喜んでるところ悪いが、ソロだとかなり厳しいからな。ましてや、ボス。勝てる確率は結構低いかもしれない。死ぬかもしれないし」
「え?あんただけで戦うと思ってるの?私も多少の回復魔法と、ステータス補正の魔法は使えるわよ。肉弾戦はできないかもしれないかもしれないけど、サポートくらいだったらできるわよ」
サポートか。それだけでもかなりありがたい。
水の構えから、攻撃に特化した上段の構えである火の構えに変える。
このとき、俺はこの構えの意味を思い出していなかった。
「この構えは、剣を極めたものしか使ってはいけない。相手の実力がわからないまま使うと、相手への侮辱になる」
この後、俺は防御に回らなかったことを後悔することになる。
「・・・・・・覚悟!」
覚悟を決め、ボスに向かって突進する。
相手の間合いに入り、そのまま剣を振り下ろす。
・・・が、さすがボスといったところか。剣を途中で受け止められた。
俺はそのまま押し切ろうとして、体重を剣に乗せる・・・。
パリィィィン!、という音が発され、剣が折れた。
さすがだな。良い得物を持っている。
俺の武器が、不良品すぎるというのもあるが。
しかし空中で回避行動を取ろうともしなかった俺に、ゴブリンが放つ左拳の殴打をまともに受け止めることはできなかった。
俺はふっ飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「痛ってえ!ちくしょう、剣が折れちまった」
突如俺の視界に現れたHP、体力ゲージが結構減る。
おそらく、自分のものだろう。
「うわっ!結構減るな。もっと注意しなきゃだめか」
ストレージボックスから予備の片手剣を取り出す。
いや、今のボスには大剣のほうが良いかもしれん。
そう思い、予備の剣をしまい大剣を取り出す。
うおおおっと、かなり重いな。少しよろけてしまった。
と、俺が大剣を構えるのに手こずってる間に、ボスが攻撃してきた。
単純な振り下ろし。
しかし、当たると痛そうだ。
「うわっとっと」
横に転がり避ける。
おいおい。転がって避けるとか初めてだぞ。結構、身体のあちこちとかが痛い。
立て続けに横薙ぎをしてきたので、うつ伏せになって回避する。
すぐに立ち上がり、腕を持ち上げ、振り下ろす。
大剣は相手の腕に少し食い込んだ。相手の頭上に表示されたHPバーが10分の1くらい減る。
いまさらだが個体名を見てみる。
『ゴブリンキング(nothing)』と書かれていた。この、「(nothing)」という語尾についてるものは何なのだろう。
まあ、いい。
今は、こいつを倒すことに集中だ。
剣をゴブリンキングの腕から引き抜き、少し下がる。
ゴブリンキングは、怒り狂い、剣を振り回してきた。
大振りの攻撃は比較的避けやすい。
もう一度、相手の懐に飛び込み、今度は足の付け根を狙って剣を振り下ろす。
完全に足を断ち切る勢いで。
「どっせぇぇぇぇぇぇい!」
今度は、食い込むことなく切り離すことができた。
足の付け根からは、鮮血が激しく吹き出す。
「うわぁ、グロテスクぅ」
だが、これで体勢を崩すことはできた。
ゴブリンキングは、そのまま倒れ込み、大きな隙を見せる。
チャンスである。首に向かって剣を振り下ろす。
流石に急所なだけあって、対策されているのかなかなか斬れない。
だが、HPバーは確実に減り続け、ついに3分の1を切ろうとしていた。
よし、いける。倒せるぞ。
そう思い、とどめを刺すために腕を再度振り上げる。
だが、過信というのはいつでも人を絶望の奥底に突き落とすものだ。
俺はこのとき、首しか見ていなかった。
持っていた視野が狭かった。
そのせいで、反撃してきたゴブリンキングの剣に反応できなかった。
首しか見ていなかった俺は、その一撃を右脇腹に食らってしまった。
俺に攻撃を加えた剣は、深く身体に入り込み、大きなダメージを俺に与えた。
革鎧は壊され、効果を成さなかった。
幸いにも。ゴブリンキングは、切れ味が悪い剣を使っていたこともあってか完全に身体が真っ二つになることはなかった。
だが、慣性の法則に則って、俺の体は部屋の壁に叩きつけられてしまう。
HPが、赤色の警告域にまで下がる。
「コウセイ!」
ハデスが、なにか言っているが、聞こえない。
いや、耳に入らない。
ちくしょう、過信した。あと少しだったのに。
なんとか立ち上がる。しかし、俺の右脇腹に激痛が走り、膝から崩れ落ちてしまった。
さらに吐血。
ああ、血の味ってこんなのだったんだな。
・・・俺は死ぬのか?こんな世界に飛ばされて、戦わされて?さらに、仲間はずれにされて?なんで?
ゴブリンキングは片足だけで立ち上がり、俺のそばまで近づき、剣を自身の頭上に構えた。
あ、俺、死んだわ。あーあ。まだ、なんにも楽しめてないのにな。
つまらない人生だったなぁ。パシリにされて。ATMにされて。
俺の事を侮辱したあいつらの顔が、脳裏に浮かんだ。
俺のスキルの使用方法も頭に浮かんでこない。
もう、死ぬことしか無いのか。
残念だなぁ。
・・・・・・いや。
なぜ俺は死ぬのだ?
死ぬわけない。
こんな運命に縛られたままで良いのか?
なんで俺は死ぬ?
なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?
俺の中で何かが外れた。
なにが外れたのか?その時の俺には、それを確認する術がなかった。
だが、そんなことはどうでもいい。
「殺す」
その言葉しか俺の頭の中にはなかった。
俺がその考えに思い至った瞬間、ゴブリンキングの剣が振り下ろされた・・・・・・。