表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ダンジョンに敵が居ると思ってるのは大間違い!!

作者: M ZERO

 ここはあるダンジョンでの1日の出来事である。勇者は王様から魔王退治の命令を受け、魔王城に行く道中にあるダンジョンに居た。


 そのダンジョンは薄暗く、勇者は手にランタンを持ち探索をしていた。すると、奥から何やら影が見える。敵かと思い勇者は装備していた剣を抜き構える。だが一方にその影がそこから近づいてくる気配が感じられない。ならばと勇者からその影に近づき攻撃を仕掛けようとした瞬間であった。


「お待ち下さい!! 私は貴方様の敵では有りません!」


両手で顔を隠し、後退りしていた。

影の正体は小さな女の子だった。何故小さな女の子、それも人間がこのダンジョンに居るのか不思議である。


「あ、あの貴方様は勇者様でしょうか?」


「そう言われているが、君は」


「申し遅れました。私はこのダンジョンの案内人のかぐやです。このダンジョンには勇者様を襲う様な敵は御座いませんのでどうか剣をしまって下さい。じゃないと、皆がビックリして逆に攻撃をしかねませんので。」


かぐやと言う案内人に従い、勇者は剣を一先ずしまった。


「ではこのフロアから案内致します。着いてきて下さい」


かぐやは目の前にある扉を開き歩いていく。勇者はかぐやに案内人されるがままに着いて行く。すると辺は明るくなった。


「ここのフロアでは、皆が調達してきた食材を料理しています。一部このダンジョンで育ててる野菜も使ったりしています。そうだ、勇者様も食べてみませんか? 丁度お昼ご飯の時間帯になりますし」


「いや、私は一刻でも早く国の為に魔王城に行かねばならないので、遠慮しておくよ」


「そうですか。仕方ないですよね」


フロアを進んでいくと、香ばしい匂いが漂う。その匂いにつられたのか勇者のお腹の音が鳴った。


「勇者様、腹が減っては戦はできぬですよ。遠慮せずに食べていきなさいな」


「分かった。少しだけ腹ごしらえしてもいいな」


かぐやは部屋に案内する。

その部屋には大きなテーブルと沢山の椅子が並べられている。いつも大人数でここで食事を行っている様だ。


「かぐやちゃん、そこに居るのはお客様ですね」


 そこに現れたのはなんと、スライムだった。スライムと言えば敵キャラで有名な雑魚だ。そんなスライムを見るや勇者は剣を抜きそうになった。それに気がついたかぐやは勇者を止めに入る。


「勇者様! お辞めください。この子は勇者様を襲う様なスライムでは有りません」


「あぁすまない。つい癖で剣を抜きそうになってしまった」


そのやり取りを見てスライムもホッと安心した様だった。


「私達が襲う気がなくても勇者と言うのは直ぐに剣で攻撃してくるから、私達までもが戦わ無くてばならなくなってしまうのです。私達は今はここで平和に暮らしています。魔王の手先に襲撃されることもたまにありますが、それでもこうやって何とか暮らせています。勇者様には是非とも魔王討伐に成功して貰いたいとは思っていますので、私達からは料理で応援させて頂ければと思っています」


次から次へと料理がテーブルに運ばれて来ている。


 テーブルに料理が全て並べられると色々な種族のモンスターが各自席に着いた。


「あれが勇者様なんだ。何だイケメンかと思ってたけど平凡な見た目してるわね」


「勇者様と言えば聖剣(エクスカリバー)を持ってるのかと思ってたけど、普通の鉄剣なんだね。ちょっとガックリしちゃった」


「それは後半で勇者が手に入れる武器でしょ」


「あはは、そう言えばそうだったわ。こんな最初のダンジョンから持ってたら強くてゲームになっちゃっうね」


モンスター達は勇者を目にするや、色々な憶測を話しはじめる。勇者は困った顔をする。


俺、そんなに勇者らしく見えないのか。それはそうだ、別に伝説の勇者の一族と言う訳では無い。けど、俺達の子孫では勇者だった人もいる。それに俺は武術に優れてただけだ、特別能力が尖って優秀なわけもなく、でも、国の為にならこの力を使って魔王討伐をしても良いだろうと思ったから今、魔王討伐をしに行ってる訳では無い。


「勇者って言えばお国の為に魔王を倒すんだよね? やっぱ勇者様もお国の為に魔王討伐をする事にしたんだよね?」


一人のゴブリンが話しかけてきた。雌のゴブリンの様だ。何故か頭にはリボンが着いてる。


「え? いやそういう訳では無くてな……」


「えぇ?! そうなの? じゃあ、何の為に魔王討伐しに行くの?」


「もしかして、勇者という宿命的な何かの理由で、ですか?」


かぐやも興味を向けた。


「……お金の為にだ」


その一言に周りのモンスターも、かぐやも凍りついた。


そりゃそうだよな。普通勇者がお金の為に魔王討伐します何て言う人居るわけねぇよな。それに皆さっきまでとは違い、少し引いてる様にも感じる。


「勇者様ってお金の為に魔王討伐してるのですか? 良く世界を救うためとか運命とかその、ありきたりな物かと思っていましたが」


「そんな事を言われてもなぁ。俺は勇者だけど、お金以外に興味が無いんだ。まぁ、家ぶっ壊されるよりかはましだろ? だから魔王城に向かってるわけで」


「ま、まぁ人ぞれぞれですからね。腹ごしらえも終わりましたし、次のフロアが最後のフロアなんですがご案内しますね」


「ごめんねー。ここのダンジョン始まりのダンジョンって言われてる程中が狭くてね」


 どうやらここは、始まりのダンジョンだったらしい。国から1番近いし間違いでは無いが。


 かぐやに案内され、次のフロア、即ち最後のフロアへと移動する。かぐやは扉をノックをし部屋に入る。


「かぐや来客が来た様だな」


「はい、こちらが勇者様です」


その部屋にいたのは、ここのダンジョンのボスであろう風格をまとった、オーガがいた。手には棍棒を持っており、バンダナを頭につけ、ガタイが良い雄のオーガの様だ。


「最近の勇者は見た目では分からねぇ物なんだな。お前が勇者様か。なんだ普通の格好じゃねぇか。何か無いのかよ、例えば鎧とかマントとかよ」


「そんなもの持っていないんだけど」


「はは、まぁ仕方ないか」


その後も俺に対する見た目のクレームは続いた。


1時間後。


「おっと申し訳ねぇ、そろそろ魔王城に行かなければならないんだよな? ならここで1戦付き合ってくれや。最近は平和でよ、腕が鈍って仕方ないんだ」


「オーガ様そんな事をして宜しいのでしょうか」


「大丈夫だって」


「まぁ、良いだろう」


剣を抜こうとした時だった。


「あっその剣は抜かなくていいからな」


「え?」


「ちょっとそこ座れや」


オーガに言われるがままに椅子に座ると、正面にオーガは座った。


「よし、腕相撲で勝負や」


「え?」


オーガと腕相撲だと?


「よしやるぞ、手を握れや、かぐや合図宜しくな」


「はい、では、よーいスタート」


かぐやの合図と共に腕相撲がスタートした。が、勝敗は一瞬でついた。


「やっぱり人間だな。オーガの力にはお呼ばねぇよな。流石の勇者も人間だったか」


「いや無理があるでしょう」


こんなのやる前から決まってるじゃないか。


「はは、まぁいいや。楽しかったぞ勇者よ、さぁここがダンジョンの出口だ。何時でも帰って来てもいいぞ」


「はぁ、こんなダンジョン初めてだよ」


「勇者様。魔王討伐頑張って下さいね」


「あぁ、そういやかぐやは何処の人間だったんだ?」


かぐや以外の人間はこのダンジョンには居ない様子だった。なら人間のかぐやがここに馴染めてるのが不思議であった。


「私は、その」


「かぐや隠さなくてもいいじゃねぇか」


かぐやはもじもじと恥ずかしそうにしていた。


「私ね? 実は姫なの。姫のランと申します。勇者様の国の姫です。きっと国では失踪か誘拐されたとなっているはずです」


「え? まじかよ!? 国に連絡しなかったのかよ」


「えへへ、私、姫であることが嫌で国から姿を消したら即兵士の皆様が探し始めて少しビックリしました。でも国に戻るつもりも無くって、連絡すると直ぐにでも城に戻されてしまうから」


「はぁ、だから姫が3年も行方不明だったんだな」


まさかここの案内人が姫だったとは。


「このことはナイショでお願いします」


「分かった」


ナイショの約束をし、俺はこのダンジョンを後にした。



そういや、結局戦闘ってやってねぇな。まぁ、いいっか。そもそもダンジョンが戦闘するのが当たり前なんてルールねぇしな!!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ