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10.あり合わせメンバー(2)

 ***


 ロビーに移動してきた。

 ギルドメンバーというのは、何も無い時に大抵ロビーにいるものだからだ。


 なんて、冗談めいた考えだったが、幸運にもオルヴァーのパーティを発見。いつも通りの様子でテーブルに腰掛け会話をしているのが伺える。仏頂面のオルヴァー、無表情のシーラ、表面上はにこやかなルグレに常にどこか楽しげなアリシア。遠目に見て異変は一切無いし、急ぎの用事も無さそうだ。


「ごめん、今ちょっといい? オルヴァーさん」


 歩いて行ってそう声を掛けると、一瞬だけ卓が静まり返った。何だろう、珍しい雰囲気に話し掛けた側である私まで閉口してしまう。が、最初に我に返ったのはアリシアだった。ニヤニヤとした笑みを何故かオルヴァーに向けている。


「おら、用事だってよオルヴァー」

「俺も目の前にいるんだから分かってる」


 ――もしかして、私の噂話でもしてたのかな?

 そんな空気感だった。ここでそれを突くのは文字通り藪蛇だと、前世の私の記憶がそう告げるので気付かないふりを貫く。悲しき学校のクラスカースト下位勢の性である。

 因みに、対天秤においては強者と弱者のバランスが重要なのでオルヴァーにのみ声を掛けた。4人全員来られては、強いギルドメンバーが増えすぎる。

 ピンポイントでオルヴァーを指名したのは当然、推しだからというのもあるが4人の中で適任なのが彼しかいないからだ。シーラは性格上の問題は一切無いが、陸上戦が苦手。アリシア&ルグレはあの面子にブチ込むには色々と問題が多い。

 ただ、現状を見るにもしかしたらオルヴァーは誘わない方が良かったのかもしれないな、と不意にそう思った。後出しにはなってしまうが、言葉を付け加える。


「アリシアさんでも大丈夫なんだけれど……。実は、この間取り逃がしてしまった変わった魔物の討伐をマスターから頼まれていて。今、天秤の魔物の居場所が分かったから討伐メンバーを募っているんだよね。勿論、マスターから別途報酬があるよ」


 ははっ、とアリシアが快活に笑う。


「私でも良いの? というか、全員連れて行くって選択肢もあるけど」

「ちょっとバランスを重視していて。この中から一人くらいが丁度良いんだけど」


 ここで珍しくルグレが私に絡んで来た。いつもならばアリシアとのやり取りをただただ静観しているだけだったのに。


「おや、シーラを連れて行けない理由は分かるとして、僕に声が掛からないのは何故でしょう? 正直、僕とアリシアの戦闘能力なんて違いはありませんよ」

「えっ……!? あ、いや」


 ――貴方とはそういう仲じゃないし。

 と言いたい所をぐっと堪える。ルグレにちょっかいを掛けられ始めると失踪ルートがチラ見えしてくるので勘弁願いたい。人外達の玩具もしくはペットにされるなど恐ろしくて許容出来ない事間違い無しだ。

 非常に困っていると、これまた意外な事にそれまで黙っていたオルヴァーが助け船を出してくれた。


「何言ってんだ。お前とシキミはほとんどまともな会話なんざした事ねぇだろ。赤の他人を危険なクエストに誘うか」

「手厳しいですね。ま、それは確かにその通りですけど」


 どこか意地悪くも上品に微笑んだルグレは、それっきり引いたのか口を噤んだ。アリシアはまだ直線的なフレンドリーさなので緊張はしないのだが、ルグレに好感を持たれ始めると地獄の入り口に立つような心境になるのは何故なのか。

 そして、今日のオルヴァーパーティは全体的に少しばかり歪だ。ルグレが引いたと思えば、今度はアリシアが今までに無い絡み方をしてくる。


「ええー、じゃあ私がシキミと親睦を深める為にクエストに出掛けるとするかな。自分で言うのも何だけど、私は使える奴だぞ。天秤の魔物なんて片手でプチッと虫みたいにぺちゃんこにしてやるよ」

「え? それは物理的にって事?」

「うん? それでもいいけど」


 ルグレ&アリシアは人外指定されている。

 が、オルヴァーやシーラと違って人間の皮の下に何があるのかは終ぞ分からなかった。そういうルートが存在しなかったからだ。もしかして、彼女等は源身に戻るとかなり巨大なのだろうか。想像すると少しだけ恐い。

 なんて現実逃避していると、低く唸ったオルヴァーがしっしとアリシアへ向かって手を振る。


「俺へのクエストだろうが、お前等は横槍を入れるな……。話がややこしくなる」

「はぁん? お前が返事しないからじゃん」

「クエストに参加する。これでいいだろ、もう静かにしていろ」

「おうさ、応援してるよ。色んな意味でね」


 クスクスと笑うアリシアに対し、オルヴァーは溜息を返した。相変わらずフランクな仲のようだ。私がいない間に何かがどうにかなったりなどはしていないらしい。

 そうして、オルヴァーの少しばかり苛ついているであろう双眸が私へと移動する。


「それで? 他の連中もいるんだろう?」

「あ、そうそう。一応、明日すぐに出発しようと思ってるから打ち合わせしようと思っているんだよね。今いいかな? 無理ならいいけど……」


 溜息を一つ吐いたオルヴァーは椅子から腰を浮かせた。

 この後、メンバー全員に行き先といつも通りの装備で来ていい事を伝え、この日は解散。明日を待つばかりとなったのだった。


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