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輪廻巡る月夜の果てに  作者: 中沢文人
オーバーチュア
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序奏曲

序楽曲


「まずは自己紹介からだな。俺はワーム。一応隊長になったが、ただの社会人だ。気楽に接してくれ」

「次は俺だな。ギリギリデスメタルで、ワームの友人だ。よろしく」

「ココナタデです。私は大学生です。よろしくお願いします」

「俺はチキンハート。ワームとギリギリデスメタルの飲み仲間だ。よろしく」

「タピオカです。ココナタデと一緒にゲームとかやってます。よろしくです」

「トピオだ。ワーム達の飲み仲間だな。よろしく」


チームごとに自己紹介してく感じか。


「次は俺達クリークの番だな。俺はラピスラズリ。ラピスって呼んでくれ。高校生をしている。よろしく」

「俺はクワガタだ。ラピスとタクロウの親友!よろしくな」

「僕はタクロウです。この通り影が薄いですのでDAVEの音声チャットに助けられています。よろしくお願いします」

「俺はキミヒト。ヘルワンワンとニューゲートの友達だ。全員高校生だから、クリークは高校生チームになったな」

「俺はヘルワンワン。2人は親友だ。キミヒトは友達というが恥ずかしいだけだ」

「おい」

「俺はパッキュンニューゲート。キミヒトはムッツリだもんな」

「おい!」

「次は俺達ヘラクレスオオカブトガニかな。俺はカブトガニ。会社員をやっているから毎日歩いてクタクタだ」

「ヘラヘラクです。カブトガニの付き添いで一緒に歩いています。よろしく」

「俺は夜のスポーツレス。名前に後悔はないぞ」

「タッチワイフです。夜のスポーツレスの妻やってます」

「オオーだ。名前の由来はない。よろしく」

「シチューです。別にシチューが好きなわけではありません。よろしくです」

「よし、我らの番だな。怪盗団キットカットの団長、怪盗小市民だ。現実では骨董店を営んでいるが盗品ではないぞ」

「我輩は猫である。名前はワーキット。よろしくである」

「俺はジャックザカッターだ!現実では幼稚園の園長やってるぜ!ひゃっはー!!」

「ルパン御時世だぜぇ。狙った獲物は逃がさない!よろしくな!」

「迷探偵ホームズだ。ルパンを追っていたはずなんだが…まぁよろしく」

「輪と孫君です。ホームズと共にルパンを追っていたのですが、こんなところにまで…よろしくです」

「さて!最後はいよいよ俺達の番だな!いくぜぇ皆!」

「「「おう!!」」」


なんだ?シスロリのメンバーが陣形を組み始めたぞ。


「No.1!幼女をみかけてハァハァと!」

「No.2!!義妹ぎまいを夢みてブヒブヒと!」

「No.3!幼女の脇をペロペロしたいと!!」

「No.4!義妹に踏まれてアヒーと!!」

「No.5!幼女を困らせハフハフと!」

「No.6!義妹の寝具をフガフガと!」

「「いずれも違う心だが!!夢は同じださぁ同士!!!我ら全員義妹(いもうと)に憧れ!幼女に憧れ!!ここに集いし夢みる紳士(変態)!天下無双(夢想)のシスロリよぉ!!」」


バーン!!と背後が爆発しそうなほどの気迫に場が飲まれる。


「す、すげぇ。リハ無しだろ!?趣味(性癖)1つでここまで…」

「俺は応援するぞ!夢を諦めるなよ!!」


と、ここで脳内にピロン、と通知が来る。


『瑠璃也1号が直接メッセージを受信しました』


直接メッセージはVR機に直接文字を打ち込んまれて届くメッセージだ。つまり、VR機がある家にいる者からのメッセージということになる。


「あ、すまん。連絡入った」

「どうした?ラピス」

「確認するから少し待っていてくれ」


『メッセージを確認します。【お兄ちゃん、ご飯出来たよ。ダイニングで待ってるね】』


「あぁ、妹から晩飯できたって」

「「なぁにぃ!?妹持ちかぁぁぁぁ!!」」

「あぁ、すまん。飯落ちだ。いってくる」


待っていると言われれば、すぐに向かうしかない。緋音は何時間でも待つだろうが、それは瑠璃也が良しとしない。


「ちなみにこいつの妹、身長142の中3だぜ?」

「ちょっ、おいクワガタ!」

「「な、なんだと!?妹合法ロリだとぉぉぉぉ!?恨む!怨んでやる!!絶対にだ!!」」

「こいつらは俺が抑えとくからいってこい」

「あ、ありがとうワームさん」


なにか嫌な予感がするので急いでログアウトってどうやるんだ?

そういえば、と瑠璃也はチュートリアルがないことに気づく。DAVEの操作方法のチュートリアルはあったが、ゲームの操作方法のチュートリアルがない。


「…ログアウトってどうするんだ?」


『それは私から説明するよ!」


ああ、これは葵木だな。と瑠璃也は思った。思えばシステム音声と同じ声だが、葵木には独特のなまりがある。そういえば、と瑠璃也は葵木が旧大阪があった、いわゆる関西地方と呼ばれていた第4地区の出身だったなと思い出した。


『ログアウトは基本、各部隊部屋でしか出来ないの。右手の人差し指と中指で空中を縦になぞってね』


人差し指と中指を合わせて、空中を縦に振る。いろいろなコマンドがロゴで表示されている。上から順にDAVE、地球、繋がれている手、歯車、マネキンだ。


『空中にロゴが見えるでしょ?目当てのロゴを横からなぞるんだ。ちなみに自分のロゴは他人からは見れないよ。その逆もしかり』


おそらくこれであろうマネキンのロゴを横からなぞる様にそのままの指で腕を横に振る。


『そこにログアウトの選択肢が出たと思うんだけど、それをタッチするとログアウトできるよ』

『あと、プレイヤーが抜けたあとの人形はNPCとなって、会話をしないただ動いたりDAVEを操れる人形になるから。これにも思考誘導がかけられてるから安心してね』


ほう、なら俺がログアウトしたことによってパーティーに穴ができ、それが原因で隊列が乱されたりはしないのか。それなら少しの気兼ねだけでログアウトできるな。


「おっ、それなら俺達も休憩にするか。23:00に集合な。言われた通りにログアウト、と。」


ワームの号令で、第23中隊は一時解散となった。



機械の駆動音とともにVRゲーム機から出る。瑠璃也のVRゲーム機はDAVEを操作するときの箱に似て…いや、あれはおそらくVRゲーム機を参考に作ったのだろうと瑠璃也は予想する。VRゲーム機は使用者が中に入るタイプで、使用者がVR空間内で何かしらのショックが原因で急性心不全等で死にそうになっても素早く心肺蘇生をするためにこのような形になっている。むしろ何かあった時のためにこのVR機を寝具にするほどの人物も一定数いると言う。もちろん、コスト削減のためにVR機能だけの端末もあるが、それはデスサービスが厚くても問題ないような鋼の心臓の持ち主という自信があるやつだけが使用する。

瑠璃也のVRゲーム機の名前は、瑠璃也1号だ。一般的に出回っているのは瑠璃也3号…世間ではザクシスと呼ばれている量産型。ちなみに、緋音が使っているのは緋音零式で、翠沙が使っているのは翠沙派生改壱(みさはせいかいいち)(翠沙は世界一)。いずれも生産性度外視で身内の為だけに安全性・操作性・感度性・機能性・通気性に優れた物だった。

部屋から出て、ダイニングに降りる。


「あ、お兄ちゃん早かったね。今日はカルボナーラだよ。いまよそうから少し待っててね」

「あぁ、呼ばれてすぐ来た。待たせるのも悪いし、せっかく作ってくれた料理が冷めるもんな。冷めても美味いが」

「もう、そんなこといっても美味しいのしかでないよ?」

「それがいいんだよ」

「そっか。それじゃ、食べよっか」

「そうだな。いただきます」

「いただきます」


あぁ、本当に緋音が作る料理は美味しいな。さすが忙しい両親の代わりに家事をやってきただけある。


「そういえばお兄ちゃん。入学式寝てたでしょ」

「うっ」

「…図星なんだ。ステージの上からよく見えてたよ」


一瞬だけ、緋音が暗い表情をする。それに俺は、少しだけ罪悪感を覚えた。なんせ緋音の晴れ舞台。緋音からすれば、兄として妹の成長を見届けてほしいという思いがあったのだろう。

その少しの罪悪感に、すこし言い訳してみる。


「眠くなる話をするのが悪い」

「否定はできないけど、我慢しないと。中学生の間では、お兄ちゃん、評判いいんだよ?成績もいいし、運動できるし、格好いいしで憧れるって」

「へぇ~そうなのか。こっちも緋音の評判はよく聞くぞ。神聖なる天使妹(てんしまい)キャラだってな」

「もう、やめてよ、お兄ちゃん」

「俺をからかった仕返しだ」

「もう、お兄ちゃんの噂流しちゃうよ?本当はちょっと抜けてるって」

「なんだ、そういうことするのか?ならこっちは、緋音は甘えん坊だって言いふらすぞ」

「むっ、ごめんなさい」

「はは、こっちもむきになったな。すまん」


緋音と談笑しながら飯を食う。 お互いにお互いを信頼しきった会話だ。が、いくら話ながらゆっくり食べているとはいえ、美味いものは早くなくなるものだ。


「うん、ごちそうさま」

「ごちそうさま、手伝うよ」

「あ、ありがと、お兄ちゃん」


食器をかたし、流し台に入れる。緋音が食器を洗い、俺が食器を拭く分担だ。今の時代、自動食器洗浄機も当然あるが、自分の手で洗った方が安心で確実というこだわりだ。


「さて、風呂いれてる間にテレビでも見てるか」

「うん、お風呂いれてくるね」


リビングに行き、ソファーに座る。


「テレビ降下。ch1」


機械音を出しながらテレビが下がってくる。画面が明るくなり、2D画面が見える。世間ではホログラフィーの3Dテレビが普及しているが、黒藤家では見辛いからと旧時代のテレビだ。

3D技術は1200年前もあったというが、現代でも3D以上の技術はない。核兵器?地下シェルター等をアダマンタイト合金等にする事でほとんど無力化されている。そして水爆以上のものはない。そして、放射線を克服した現人類にとって汚染された空気は汚染たりえない。

人類はこれ以上、人類文明が発展できる一線を越えられない。火星にはいけた。月から採掘したより強い金属を手にいれ、それを元に合金も作り、深海へももっと深く行けるようになった。VR機も作り、A(オーグメンテッド)R(リアリティ)の装着式のチップ型電話PCなんて名前の物も500年前に出来ている。そう、500年だ。500年間大した進歩はない。人類は停滞している。だからこそ今の子供には発想力が求められる。いずれ月の資源も枯渇する。世界に求められているのは…あたらしいなにかだ。だから俺がこの世界を…


「ちゃん…いちゃん…お兄ちゃん!」

「うおっ、なんだ!?」


いつの間にか緋音が顔を近づけていた。


「もう、呼んでも反応が無いんだもん。どうしたの?」

「あぁ、いや。なんでもない」

「本当に?」


まだ疑っているのか、目を覗き込んで来る。緋色の瞳が文字通り目の前にあって、瑠璃也の瑠璃色の瞳の奥を見透かすように覗いてくる。


「あぁ、本当だ。というか何を考えていたのか忘れた」

「そう…それならまぁ…でも、何か困ったことがあったら言ってね。これでも妹なんだから」


やっと緋音が顔を遠ざける。しかしよほど心配していたのか、さらに心配を重ねる。が、瑠璃也は受け流すように返事を返した。

妹を心配することはあっても、妹に心配されることはない。兄妹だからではない。それは、瑠璃也が出来のいい人間で、緋音が一般人だからだ。


「あぁ、頼らせてもらうさ。なにかあったらな」


だから、これは本当に建前だった。


「お兄ちゃんが困るようなことじゃ私が入っても無意味どころか邪魔なだけかもしれないけど。隣失礼するね」

「緋音は居てくれるだけでいいんだよ」

「もう、そんな事言ったら翠沙お姉ちゃんはどうするの?」

「当然、守るさ。緋音も翠沙も家族なんだからな」

「へぇ?結婚前提なんだ。ヒューヒュー」


緋音がおちょくってくるが、華麗に受け流す。


「そういう緋音こそ好きな男子はいないのか?」

「うーん、友達にはいないね」

「そうか。いつかできたら連れてこいよ。俺が試してやる」

「いじめて追い出す気でしょ」

「はっはっは!それもあるが、俺から逃げてるようじゃ緋音も守れないからな」


もし、私に好きな人が出来たとしても、お兄ちゃんの前には連れてけないよ。と、緋音は少し…寂しげな表情ではにかんだ。

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