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輪廻巡る月夜の果てに  作者: 中沢文人
アラベスク
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装飾曲

たいっへんお待たせ致しました!!翠沙と緋音の幼少期の物語、本編の装飾である装飾曲です!!物語の設定に深く関わる所なのでなるべく矛盾がないように、装飾曲以前の物語へと繋がるようにと何度も何度も自分が書いた物語を読み返しました。半年以上時間を貰ってしまって申し訳ございません…なにか矛盾点、どうやったらここに繋がるのかという質問等がございましたら感想やレビュー、Twitterにて受け付けております。また誤字についても最大限気をつけておりますが勘違いなどがございますので、そちらについても感想やレビュー、Twitterにて。長くなりましたが、もう一度謝罪を。半年以上待たせてしまって申し訳ございません。

以下装飾曲です。

それは数年前、瑠璃也達が小学5年生の頃まで遡る。彼彼女らの物語の始まりとも言うべき事柄だ。


「るーにい、今日は何するの?」


高校生になった瑠璃也だからこそ落ち着いているが、小学生の頃の瑠璃也の活発さといったら竜也に匹敵するほどだった。


「んー…世界一周でもするか?」

「流石にきついでしょ」


そんな彼彼女らの幼少期の、先に述べた始まりの一周目と救いの三十周目をこの章では描こう。




『――――』


ガバッと勢いよく体を起こす翠沙。かなり悪い夢を見たようで、その体からは冷や汗がだらだらと流れていた。翠沙はずぶ濡れになったシーツと掛け布団の間から身をよじり、悪い夢のせいなのか濡れたパジャマのせいなのか重い体をベッドの外へと出した。だがしかし。


「月の夢…?―あっ」


見た夢の内容を思い出しながら立ち上がろうとしたためか、足をもつれさせて転んでしまう。日頃の厳しい訓練のせいではないことは確かだが、はて。こんなにも世界は歪んでいただろうか。


「…?」


意識すれば、なるほど。若干頭痛と、筋肉痛、関節痛がするようだ。全身が痛いため気にならなかったようで、転んだ拍子に受けた軽い衝撃でやっと意識できる程度の痛みなようだった。どうやら、たちの悪い風邪をひいてしまったらしい。


「ママ」


母を呼び、今日瑠璃也と遊ぶはずだった約束を風邪だからと断る旨を伝える。ついでに持ってきてくれた体温計で熱を計ると、39.8度。やはりたちの悪い風邪を引いたようだった。大人しくベッドへと戻って眠るとしよう。再びあの悪い夢を見ることになるかもしれないと思うと憂鬱だが、お手伝いさんが変えてくれたシーツと布団の寝心地は最高で、パジャマも肌触りがいい。よく眠れそうではある。そんな事を考えていると、すぐに深い眠りへと誘われたようだった。寝起きが悪かったため、寝足りなかったのだろう。だが、それでも。


『――――――――――――――』

「翠沙!」

「―っ!」


またあの悪い夢をみてしまった。だが、聞こえるはずのない…いや、逆に風邪を引いたとあれば駆けつけてくれる人物の声のおかげで、目が覚めた。


「るーくん、どうしてここに?」


返ってくる答えが決まった質問をする。翠沙が風邪を引くことなどそうそうあるものでは無いが、彼は必ずこうして来てくれるのだ。


「決まってるだろ、翠沙が風邪を引いたからだ」


自分でも驚くほどに心が落ち着いた。やはり無意識のうちに不安に思っていたのだろう。そんな翠沙を知ってか知らずか。瑠璃也は翠沙の手を握っていた両の手の片方を離し翠沙の頭へと近付け、前髪を避けて額に置いた。そして瑠璃也は心底驚いたように言う。


「大分熱いな」


そんな瑠璃也が珍しくて面白くて、つい『あはは』と笑ってしまった翠沙。しかし、漏れてしまった笑いは、もしかすると精一杯の強がりだったのかもしれない。瑠璃也は額に置いた手をそのままに、優しく頭を撫でる。その心地よさと同時に、より顕著になる全身の痛み。耐えられないほどではないが、苦悶の顔を表したいくらいには痛い。

瑠璃也からすれば苦しいことは一目瞭然で、それを隠そうとしていることもわかっていた。そんな翠沙を心配する気持ちはなおのこと増すが、自分ではどうしようもないことはわかっているので自然に治ることを願うしかない。まさか、不治の病でもないだろう。こんな場所で、こんな時代に、こんなピンポイントで翠沙を狙う病などあってたまるか。


「るーくん。もう少しだけ手、握っててくれるかな」

「もちろん」


今度は軽く力を入れて手を握る。それを感じ取った翠沙は儚い笑顔で微笑み、やがて再び眠りについてしまった。どうやら今度は安らかに眠れているようだ。ただ、気のせいか体温は上がっている。早く治ればいいのだが…。




「翠沙がいなくなった?」


あれから二週間経っているが、翠沙の容態は治るどころか徐々に悪くなっているようで、誰から見てもかなり苦しそうであった。そのため、外出できるような体力など残っていないはずなのだが、翠沙は数十分前にいなくなったという。


「わかった。こちらで探してみる」


この近辺には黒藤財閥の者が多くいる。瑠璃也と翠沙と緋音の護衛のためだ。連絡すればすぐにでも発見できるだろう。まさか、この短時間で遠出できるような容態でもあるまい。


「もしもし、瑠璃也だ。誰か翠沙を見ていないか?」


共有回線電話へと繋げ、護衛の者に一斉に連絡を入れる。すると、数十人から翠沙を見たという報告があった。全て東の方角で潜んでいる者だ。察するに、翠沙は東の方角へと進んでいると予測できる。が、不可解な点が一つ。


「翠沙が重い風邪を引いていると連絡していたはずだが」


なぜ、誰も止めなかったのかだ。だが返ってきた返答は更に不可解だった。


「なに?元気そうに歩いていたから、治ったのかと思っただって?」


そう、先日までもう少しで死んでしまうのではないかと言うほどに苦しんでいた翠沙が、いまは健康そのもので涼しい顔をして歩いていたというのだ。瑠璃也にはそれが信じられない。軽く人間に投与できる限界まで麻酔を入れてなお楽になった様子はなかった。検査も厳重なものを重ねに重ねて、それでいて原因不明の病だそうだった。心配は杞憂に終わらなかったのだ。だがそんな翠沙が涼しい顔で歩いていた等と…いや、まて。目撃報告があったのは東に潜伏している者。一応名は聞いたが、最後の報告者はなんといったか?たしか潜伏地は、二キロメートルほど、我が家ないしは翠沙の家から離れていたはずだが。なにか、嫌な予感がする。最初からそんな予感はしていたが、それがより顕著になった。


「わかった。各員東側を重点的に探してくれ」


そう指示を飛ばし、瑠璃也自身もバイクをとばす。車も運転できることはできるし、公道は全て黒藤財閥の庭ともいっていいほどだ。だが法では、十六歳未満の運転は禁止されているため、今の瑠璃也でも法を犯さないという理性くらいは持ち合わせている。だが、いちいち侍従を呼んで乗せてもらうというほど楽観視してもないし、悠長なことも言っていられない。そう感じた。故に瑠璃也は十歳から法で許可されるバイクに自らが乗り、東の方角へと飛ばしているのだ。もちろん、考えなしに飛ばしているわけではない。普段は日本全ての車のナビを連動して万が一にでも渋滞は起きないようにしているが、今回はさらに、瑠璃也の進行方向に車を寄せないようにしている。

現代社会では車は全て自動運転で、システムによって管理されているがために渋滞や事故など起こりようもない。そして市民はその管理体制に疑問をもたない。二百年前から続いているからだ。そしてそれは黒藤財閥の幹部およびトップと、瑠璃也と緋音だけが好きなように支配できる特権だった。もちろん、幹部達が使おうと思えば正当な理由がなければならないし、瑠璃也や緋音も好んで使おうとは思わない。だが、今回は非常事態だ。存分に利用させてもらう。

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