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輪廻巡る月夜の果てに  作者: 中沢文人
オーバーチュア
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序奏曲

序楽曲


『ワイヤーは左右の腕両方に搭載されています』


ん?と瑠璃也は首を傾げた。左右の腕には小機関銃とレールガンがあったはずだと。


『操作方法は小機関銃、レールガンとは逆で手を上に折り曲げ、さらに手前に引きます。そうするとワイヤーが射撃されるので、すぐさま手を戻すとそれ以上は射出されず、掴むことができます。ワイヤーを戻す時は親指を伸ばして、同じ手順。手を上に向け、さらに手前に引くことで戻せます。射程は200メートルほど。先端は(もり)のようになっていますが、ワイヤーを伸ばした先で突き刺したものを離したければ、中指を折り曲げることによって逆鉤(さかかぎ)の開閉を操作できます。ワイヤーは遠距離攻撃にも使えますし、突き刺して遠心力を利用して逆鉤(釣り針等、針が容易に抜けないようになっている返しの部分)を閉じて飛ばすということもできます』


なるほど、上と下で別れているのか、と。瑠璃也は実際に飛ばしてみた。直線100メートル。そこからは重力に引っ張られて下に落ちていく。重量は結構あるようで、かなり丈夫に作られているようだった。しかも自動システムにより、絡まったら勝手にほどけてくれる。使い勝手が良いもので、これからかなりお世話になるだろう。


『次に外部武装の使い方を説明します。外部武装は生身で戦っているような操作方法です。以上。続いてポイントについて説明します。ポイントは味方の救援、補給物資の確保、運搬、敵の撃破数、空薬莢や機体の残骸を回収するなどで貯まります。当然、敵の撃破や残骸回収等は撃破した敵の強さ等によって変わりますし、残骸も質によって変わります』


要するに経験値というわけだ。


『次は遠隔会話です』


これだ!と瑠璃也は声を上げた。これでやっと、クワガタ、タクロウと会話しながらチュートリアルを楽しめる。わくわくを共有できる、と。


『遠隔会話の方法は損傷率と残り内臓兵器の上に空白があります。遠隔会話を始めるとここに会話している仲間が表示され、1パーティー最大で50人、4つのパーティーと同時に会話できます』


瑠璃也、クワガタ、タクロウと会話しながらも残り3パーティーと会話できるということだ。

要するに瑠璃也、クワガタ、タクロウで1パーティー目。第23中隊が仮に定員50人だとして、第23中隊を2パーティー目、合同訓練のときの相手…仮に第24中隊だとして、これを3パーティー目、合同訓練が2隊だったとき、第30小隊だとしてこれを4パーティー目にできるということだ。

再三言うが、1000JPで買えるようなゲームではないと瑠璃也は思っている。それも、新作でだ。なにかしら裏があるのかも…とそこまで思ったところで、再び説明が入り、考えはそこで終わった。


『設定方法を説明します。個人会話をしたい場合は相手の名前を何番目のパーティーで設定するかを言ってから応答せよ、と呼びます』


よし、と意気揚々と瑠璃也は説明通りの言葉を言った


「パーティー1、クワガタ、応答せよ!」

「おお!こりゃすげぇな!」


重三もだいぶ興奮しているようで、その声は弾んでいた。


『タクロウさんから応答せよ、と受信しました。応答するならばこちら、あなた自身のプレイヤーネーム、で応答します。パーティーを選択したければ、何番目のパーティーで設定するかを言ってから言ってください』


「パーティー2で設定。こちらラピスラズリ」

「設定できましたね。クワガタは?」


遠士郎も重三と同じように声を弾ませていた。


『既作のパーティーに特定の人物を入れたい場合は、対象のプレイヤーネーム、任意のパーティー入り要請、応答せよと言ってください』


「タクロウのパーティー1入り要請、応答せよ」

「こちらタクロウ。これで1つのパーティーに3人固まれましたかね?」

「みたいだな。それにしてもどうだ、やっぱり面白かっただろ?」

「悔しいが認める。面白いぞこれ」

「だろだろ!はやく実戦積んで貢献ポイントで強化したいぜ!」

「そうですね。この分だと戦闘にも期待できそうです」


買ってよかったなと3人で話していたところ、しばらく反応がなかったシステム音声が鳴った。


『第23中隊から応答せよ、と受信しました』


なるほど、もう中隊のパーティーができたのか、と瑠璃也は感心した。どうやらコミュニケーション能力に長けた人物がいるようだ。

基本身内でしか遊ばない瑠璃也からすれば、大変ありがたい。瑠璃也は今後のこのゲームの周囲の環境が充実していく予感を覚え、さらにわくわくした。


「パーティー3で設定。こちらラピスラズリ」

「こんばんわラピスラズリさん」

「こんばんわ」

「こんばんわ――」


これはすごい、と瑠璃也はニヤリと笑った。最大50人まで同時に話すことができると説明にあったが、これがあれば伝達するのに困らない。しかしパーティー間の会話を選択するときは…


『2パーティー以上を組んでいることを確認しました。パーティー選択はひじ掛けの先端にあるボタンでスイッチで選択できます。左からパーティー1、パーティー2、パーティー3、パーティー4です。メインで設定しているパーティー以外のパーティー音声は小さくなります。音声ログは聞きたいパーティーに対応したスイッチを長押しで流せます』


これはここまで作り込まれていれば当然の機能だろう。便利さを求めて混線し、逆に不便になっては本末転倒だ。


『パーティー3のリーダーがクワガタさんに応答を求めています。承認しますか?』


「承認、と」


『承認しました。パーティーへの参加申請は多数決で決められるのでご了承下さい』


「こんばんわ、タクロウさん」

「こんばんわ」

「こんばんわ」


パーティー1を押して瑠璃也は身内での会話へと移行する。しかし合計4つのパーティーの会話を同時に聞くとなれば、相当疲れるであろう。万人が聖徳太子の真似事をできるとは思えないが…


「クワガタ、パーティー1がメインか?」

「おう、そうだが?」

「僕もですよ」

「ならパーティー2の音声はどれくらいの大きさだ?」

「聞こえないほどじゃないが聞き分けられるくらいだな」

「おなじです」


こうしている間にも音声が小さくなったパーティー2の会話が流れてきている。


『メインパーティーの変更を説明します。同時にパーティーの優先度を説明します。パーティー1、パーティー2、パーティー3、パーティー4が同時にある場合、ひじ掛けのボタンをダブルプッシュで選択、置き換えたいパーティーのボタンをダブルプッシュで換えられます。パーティー1を最大ボリュームとし、優先度1をパーティー2、優先度2をパーティー3、優先度3をパーティー4にするとパーティー1の音声を聞き取りやすく、次にパーティー2の音声を聞き取りやすく、最後にパーティー4の音声が聞き取りやすくなります。また、『システムコール、設定』と言うことによってパーティー2以下の音声を流さないようにすることもできます。各パーティーを長押ししながらすぐにスライドで設定できます』


「こりゃ当たりひいたな!」

「だな!」

「……なぜこれほどまでのゲームが1000ポイントなのか…裏でなにかあるんじゃないですかね…怪しい」

「まぁゲームなんだし心配すんなって!」

「そうだな。VRゲーム機自体にも強制ログアウトが出来るようになっているしな」

「そう…ですね」


昔に一度、不具合でログアウトができないゲームがあった。そのときは強制ログアウト機能なんてものはVR機自体になかったから、プレイヤー200万人ほどが二日間、ゲーム内に捕らわれたままだった。もちろん、その不具合のせいで、小さかった会社は倒産。VR機自体の不具合ではなかったので黒藤財閥側からはなんの賠償もなかったが、これをきっかけにVR機自体に強制ログアウト機能をつけることになったのだ。


『最後に演習訓練の達成条件をお知らせします。上空に出現した仮想敵のフォログラムを殲滅してください』


瑠璃也は第23中隊をメインにし、部隊の方針を聞く。


「聞いたか?協力して仮想敵を撃破するぞ。まずは隊長をきめないとな」

「あなたでいいと思いますよ」


他に纏められる人物がいるとは思えないし、いま他の人がリーダーシップを発揮しても少なからず反発が起きると予想できる。よって、いま指揮をとってる人物がそのまま隊長うぃ務めるのが最善だ。というわけで瑠璃也はいま部隊を仕切っている人を推薦した。


「そうか?異論がなければそれでいい。俺はワームだ」

「了解、ワーム隊長」

「いま説明が入ったが、中隊の定員は30人だそうだ。これより6人チームを5つ作ってもらうが、いいか?」

「問題ない」

「まずは知り合い同士で組んでくれ。息も合いやすいしな」


スムーズに事が進んでいく。


「こちらラピスラズリ。知り合いはタクロウ、クワガタだ。残り3人余るが、誰かいないか?」

「こちらキミヒト。ヘルワンワンとパッキュンニューゲートが知人だ。よかったら組まないか?」

「もちろんだ。よろしくな、キミヒト、ヘルワンワン、パッキュンニューゲート」

「よし、1チームできたようだな。チーム名を決めておいてくれ」

「了解、隊長」


「パーティー3、クワガタ、タクロウ、キミヒト、ヘルワンワン、パッキュンニューゲート、応答せよ!」

「こちらクワガタ」

「こちらタクロウ」

「こちらキミヒト」

「こちらヘルワンワン」

「こちらパッキュンニューゲート」

「よし、全員繋がったな。どうする?チーム名」


チームの名前といえば、自分たちのこれからを象徴する大事なものだ。適当に決められるものではないが…。


「こちらタクロウ。僕はなんでもいいですよ」

「了解した、タクロウ」


もちろん、こだわりがない人は一定数いる。だがこだわる人が全員ならば、易々と決まるようなものでもない。


「こちらクワガタ。ちょっとかっこよくしようぜ!そうだな…たとえば、皆の名前使ってとか?」

「こちらキミヒト。おっ、それいいな」

「こちらゲート。それぞれのイニシャル取って、ヘラクパキタはどうだ?」

「こちらラピス。たしかにそうにもなるが…パキタが少しなぁ。ヘラクはすごくいいのだが」

「こちらゲート。ダメかぁ」

「こちらヘルワンワン。クリークというのは?」

「普通にいいな、それ」

「決まりだな!」

「了解。ラピス、隊長に伝えてくれ」

「OK」


パーティー2をメインにして、瑠璃也はワームに伝える。ワームからは参考になると言われ、瑠璃也も満足した。


「こちらラピス。伝えたぞ」

「こちらキミヒト。あぁ、確認したぞ」

「こちらクワガタ。キミヒト、ヘルワンワン、パッキュンニューゲート、お前らもこのゲーム、1000ポイントで買ったのか?」

「こちらヘルワンワン。そうそう。やっすいから暇潰しとしか考えてなかったけど、当たり引いたよな」

「こちらタクロウ。怪しいほどですがね」

「こちらラピス。タクロウ、さっきから怪しいとかいってるんだよな」

「こちらゲート。まぁ、俺も少しはそう思うが、ゲームって割りきっちゃえばいいだろ?」

「こちらタクロウ。それもそうですね」

「こちらラピス。それじゃ皆、これからよろしくな」

「あぁ、よろしく頼むぜ」

「おうよ!」

「よろしくです」

「よろしく!」

「よろしくな!」


こうして、『RTTMO』は始まった。

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