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輪廻巡る月夜の果てに  作者: 中沢文人
オーバーチュア
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序奏曲

序楽曲


帰宅した瑠璃也はVR機が置いてある専用の部屋へと入り、パッケージを開け、VR機の中に入りゲーム機にセットした。


『ようこそ、ライドトゥーザムーンオンラインへ!まずは所属する国家を選んでね!』


「1000JPの割にはよく出来ているな。所属する国を選択か…電話するか」


VR機に備わった通話機能で、瑠璃也は重三に電話した。他にも瑠璃也が使うVR機には色々と便利な機能が備わっている。


『もしもし?』

「重三、家についた頃だろ?」

『そうだな、ちょうど家についた。んで、電話ということは、なにかすり合わせる必要のあることが?』

「それはあとで話す。いま遠士郎にもかけるからまってくれ」

『了解』


瑠璃也はVR機を操作し、遠士郎にも電話をかけた。1コールしてすぐに、遠士郎が電話にでる。


『もしもし』

「遠士郎、先に重三とも繋げてある」


複数の人物と同時に通話できるシステムだ。この時代に特に珍しいものでもなく、数千年前には既にあった技術だ。


『電話ということはもう開けたのですね。いま家に着いたので、すこしだけまっていてください』

『あぁ、俺もいま部屋に入ったところだ』

「そうか。まぁすぐに分かるだろうが説明すると、所属する国を選ぶんだそうだ。日本製のデイヴは殲滅力、攻撃力、耐久性、支援力、操作性もそこそこでバランスがいいオールラウンダー。アメリカ製のジャスティスは殲滅力、攻撃力全振りのアタッカー。ロシアのシーバは耐久力全振りの壁、イギリスのヴォイドは支援力全振りの補助系、フランスのロティは操作性全振りの戦略家か?ドイツや中国のもあるが…まぁおおまかな役割なのはこれくらいか」

『いま起動しましたよ』

『こっちもだ。そうだな…瑠璃也、お前はどうするんだ?』

「俺は日本のDAVEにしようと思う。カスタムし甲斐がそうだしな」

『了解、俺もお前に合わせるよ』

『僕もそれで』


日本を選択し、先に進む。


『所属は日本だね!名前は?』


「名前を入力するみたいだ」

『名前か…いつものやつでいいか?』

『そうですね』


多くの人が共通の決まった名前を持っているだろう。"キラ"だったり"ルーク"だったり。もちろん瑠璃也もそのような、多くのゲームで共通して使っている名前がある。


「ラピスラズリ、と」

『クワガタ、と』

『タクロウ、と』


瑠璃也は自信の名にある瑠璃の別名、ラピスラズリを使っている。重三は名字の久和(くわ)から、クワガタ。遠士郎は名前の遠いと郎を、遠く郎、とおくろう、とくろう、タクロウという風に変えた形だ。


『ラピスラズリ君っていうんだね?本当に日本人なのか疑わしいけど…』


「…細かいなおい」

『俺も、虫なの?強そうな名前だね!って言われたぞ』

『僕は…うわっ!?びっくりした。気づかなかったよ…タクロウって、平凡な名前だね、と…』


本当に1000JPか疑わしいほどの細かさだ。AIのレベルが相当高く設定されているのだろう。開発に相当な金をかけているとわかる。


『これから君には演習訓練に参加してもらうよ!これで操作に慣れてね。まずは演習訓練を共にする部署を選んでね。これがそのまま所属部隊になるよ!』


「ふむ…特別殲滅部隊か、特別支援部隊か、特別救援部隊か、か。なるべく一緒のとこがいいよな?」

『そうだな。とりあえず特別殲滅部隊にするか?』

『前線で戦う部隊のようなので、僕達としてはそれがいいですよね』

「後方支援とかもよさそうだけどな。そんじゃ、特別殲滅部隊、と」


この三人のうちだけでも、なにかと競い合う瑠璃也達。特別殲滅部隊に入った方が競い合いやすいということもあり、即決で決まった。


『本当にそれでいいの?特別殲滅部隊は危険や恐怖が一杯だよ?』


「年齢制限はなんだったか」

『C。12歳以上対象だった』

「ならそう、刺激的な表現があるとも思えないけど…」

『まぁ僕達です。問題ないので、気にしても仕方ありません』

「それもそうだな」


と、三人同時に"はい"と選択した。瑠璃也達はこれまでにも色々なゲームを遊び尽くしている。そもそも、現実世界でも普通に猟をしたり狩りをしたりして獲物を捌く瑠璃也達にとって、一般生活内にあり得る死のその現場くらいどうってことのないものだった。動揺もしないそれがあるとしても、なんの問題もない。


『OK了解したよ!君は特別殲滅部隊第23中隊に所属する訓練生だよ!』


「うっわまじか。第何隊とかあるのかよ。お前らはどうだった?」

『抜かりなく23だぜ』

『僕もです』

「ふぅ、ひとまずは大丈夫か。それにしてもこのゲーム、安物にしては設定が細かすぎないか?所属国家選んで部隊選んで第何隊かに設定されて、軍事階級まで設定できて。1000JPとは思えないぞ」


このクオリティでオンラインゲームなら、瑠璃也なら5倍のJPに設定する。いくらVR技術やAI技術が発展したところで、結局、システムは人間が1から作っている。そして黒藤財閥がその開発に携わってないとなると、その費用は軽く2倍、10000JPはかかるのではないか?


『それに第23中隊っていうのも気になるな。俺らが一緒になったのも加味すると1つの隊に定員がいて、その定員が満杯になると別の隊になるとか?』

『オンラインですものね。しかしよくコストに余裕がありましたね。これではプレイヤー(・・・・・)を増やす(・・・・)のが(・・)目的(・・)にしか思えません。売り上げは考えていないのでしょうね』

『ここでプレイヤーやファンを集めて次回作への乗り換えか?』

『それも考えられるでしょう』


まぁそんなこと、いまはどうでもいいかと考えを切り替える瑠璃也。

暗転した視界が再び明るくなると、視界いっぱいにVR機のような箱がずらっと並ぶ空間が広がっていた。


『演習訓練、スタート!まずは目の前の遠隔操作型無人戦闘機、DAVEを操作する機械に入ってね!』


「お、クワガタ。タクロウも」

「おっす」

「こんばんわ。中隊ですのでそれなりに人がいますね」

「あぁ、そうだな。とりあえずはあの箱に入ればいいんだろ?」

「そのようですね。では入りましょうか」


瑠璃也はキャラクター(作った覚えのない)を自身の体のように動かして、箱に入る。箱の中は真っ暗だったが、両手を広げて余りある広さがある。

ヴゥンという音とともに視界が明るくなり、視界が明瞭になる。画面には高速具に繋がれている全長13メートルほどの、人間を模したような機械が映った。


ここは…DAVEの保管庫か?


『DAVEの操作方法を説明します。目の前にヘッドセットがあるはずです。それを装着してください』


装着方法は詳しく説明されなかったが、それは見ればわかるものだった。瑠璃也はそのヘッドセットを頭の上からヘルメットのように装着する。しかし、特にこれと言った変化もなかった。これでいいのか…?という疑念もそのままに、説明は続く。


『画面左下にある六腑(頭、胴体、左右の腕と脚)に別れたDAVEを模した半透明の絵が損傷率…いわばHPです。そしてその周辺にある銃弾やランチャーを模した絵が残存する内蔵兵器の数です』


意識すると透明度が弱くなり絵が濃く、意識を外すか薄れろと思うと透明度が強くなり絵が薄くなる。戦闘時でも邪魔になることがないだろうと思えた。


『次にDAVEを動かしてみましょう。DAVEはこの倉庫では自由に動かすことが出来ません。一度外にでないと操作できないのです。ではDAVEを起動してみましょう。上部を見てください。そこには取っ手があるはずです』


上を見れば確かに、引っ張りやすそうな取っ手と、その隣にレバーがあった。瑠璃也は逸る気持ちを抑えきれずにその取っ手を引っ張ってみた。


『その取っ手を引っ張ると箱から出られます』


その一言と同時に、箱の扉が入る時と同じように音を発てて開いた。一緒に、いくつかの箱も開いていることから瑠璃也と同じように逸った気持ちを抑え切れなかった者がいたのだろう。

瑠璃也はそっと、開いた扉を閉めた。


『そしてその隣にレバーがあるはずです。それを前に倒すとDAVEを起動できます』


こっちが本命か、と瑠璃也は反省する。話は最後まで聞こうと。


『ではレバーを手前に倒してみましょう』


言われた通り、レバーを手前に倒し、DAVEを起動した。


『DAVE起動…搭乗者バイタル…正常。損傷率…クリア。残存兵器…十分。これにて出動準備体勢へと入ります。……準備完了、随時出動できます』


『全員出動できるようになったみたいですね。先ほど手前に引いたレバーの下にボタンがあるはずです。それを押すと出動します。カウントダウンをしますので、0になったらボタンを押してください。それでは…3、2、1、0!』


レバーに付いているボタンを押す。


『DAVE、出動!」


するとサイレン音の後にガコッという音がした瞬間、ガシュッという射出音がし、景色が一気に下へと流れる。おそらくDAVEが固定されていたのは発射台かなにかだったのだろう。そして、発射された先は上空。


『あ、浮遊の仕方を教えてませんでした。まずは…』

「おい…おいおいおいおい」


既に重力に引っ張られている機体は、逆再生のように景色を巻き戻している途中だった。幸い重力に引っ張られるだけなら最大速度は決まっている…問題は、下がっている時の最大速度の方が上がった時の最大速度より体感早いってことだが。

射出から空中で停止するまで25秒。かなりの威力で射出されたのが幸い…か?


『足元にある踏み台のうち、左の方の踏み台を踏みます』


瑠璃也はすぐさま、おもいっきり踏んだ。すると上に流れていた景色が射出時同様、一気に下に流れる。慣性がかなりかかっただろう。これは有人だったらできない動きだ。


『踏むときの力加減で浮く力が調整できます』


なるほど、おもいきり踏んだ瑠璃也は最大出力で浮上したようだった。


『次に移動の仕方を説明します。移動は右の踏み台を左右に動かすことでできます。前に動かすと前方に、左に動かすと左に向かいます。では空中を移動してみてください』


とりあえず。左の踏み台もあわせて操作することで宙返りをすることもできる。ガンダ◯でもできたが、やはりこの辺は無いと面白くない。現実の肉体のように動くことができなければ、現代のゲームとしてはかなりの型落ちとなるだろう。


『次にアームの操作方法を説明します。アームは操作機、いまあなた方が入っている機械のなかにあるかなり長めの手袋を装着して操作します。これを装着することでDAVEと連動して自分の腕のような動きができます』


ちょうど、瑠璃也が座っている座席のひじ掛けのような部分にそれはあった。胴が丸々入りそうなサイズだったが、腕を突っ込むとシュスッと音を発てて腕にぴったりフィットした。

軽く手を握り、開きを繰り返す。操作感はばっちりだ。ラグも少ない。かなり無理な操作をしても思い描いた動きをしてくれるだろう。


『次に兵器の使い方を説明します。兵器は外部武装と内蔵兵器があり、外部武装はいわば装備です。外部武装はDAVEのヘッドパーツやアーム、レッグや飛行ユニット、内蔵兵器の強化と共に貢献ポイントで交換できるので、是非貢献ポイントを貯めて強化していってください。貢献ポイントの説明は後程します。外部武装はソードやライフル、シールドなど様々ですが、歯こぼれや破損、弾などは貢献ポイントを消費しなければ直したり補充できません。内蔵兵器は国からの支給なので、無駄に消費しなければ貢献ポイントは減らないので安心してください。内蔵兵器とは初期飛行ユニットやDAVE内に搭載された遠隔操作用受信デバイス、手首から発射する小機関銃等です』


初心者の武器は保証されてるというわけだった。その初心者用の武装で貢献ポイントなるものを貯め、強い武器へと交換してより強くなっていく。最終的にランキング上位を目指してリアル特典を貰うことを目的とする。進め方としてはこんなものか。


『内臓兵器の使い方は飛行ユニットや遠隔操作用受信デバイスは現在使っているので省くとして、小機関銃の撃ち方を説明します。小機関銃は手袋を装着した右手を下に折り曲げ、手首で照準を合わせます。さらに手を手前に引こうとすると、弾が射てます。今回は演習訓練なのでゴム弾を装填してあります。射出してみましょう』


手を下に向け、さらに引く。するとダダダッという音と共に弾が飛んで行った。直線飛距離は300メートルと言ったところか。


『射出できましたか?次にレールガンの撃ち方を説明します』


レールガンか、と瑠璃也は納得する。手軽で高威力。コスパがいい兵器である。初心者には持ってこいの武器だろう。


『レールガンは左腕に搭載されています。射出方法は右腕と同じで左手を下に折り曲げ、さらに手前に引くという簡単なものですが、腕を真っ直ぐ直線にしなければ発射できません。レールガンは低コストで遠距離射撃ができますし、威力もありますがその分、懐に入られると射てません。注意してください』


左腕がレールの役割をしているようで、腕を曲げては撃てないのは説明通りだった。全長13mほどのDAVEならではだ。


『次にワイヤーの操作方法を説明します』


移動にも拘束にも、さまざまな用途で使えるワイヤー。これは期待できる。そう思うと同時に、これが本当に1000JPなのか、本気で疑わしくなってきた瑠璃也だった。

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