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輪廻巡る月夜の果てに  作者: 中沢文人
オーバーチュア
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序奏曲

*書き直し済み*


必要に応じて随時書き直ししていきます。

序楽曲


地獄を現実に再現しろと言われたら、まさしくこれだろう。周囲は業火に包まれ、噎せ返るような匂いが辺りを充満している。そこらに転がっているのは、麒麟の――、玄武の――、青龍の――、忍者一族最強の存在――の亡骸…そして、原形をとどめていない死体死体死体死体死体――


全てが極光に蹂躙され崩壊していく世界の中で、唯――だけが立っていた。地獄のような世界で、――は最後の能力を使う。






チリリリリリという目覚まし時計の音を消すと共に布団を剥ぐ。もはや習慣づいた行動だ。


「…」


鈍色(にびいろ)の景色が相も変わらず窓から覗いている。瑠璃也はベッドから降り、制服に着替えてから階段を降りる。ダイニングには作ったばかりであろう朝食を食べ終える妹の姿があった。


「今日は早いな」

「入学式だからね。早く行かないといけないの」

「そうか、生徒会長だもんな。ご苦労さん、緋音」

「お兄ちゃん達に手伝ってもらってやっとって感じだけどね」


一見すると小学生にしか見えないこの少女は黒藤緋音(くろふじあかね)。瑠璃也の双子の妹(瑠璃也は出産予定日の4月2日より早く産まれ、緋音は遅く産まれた。)で、今日で中学3年生だ。しっとりとした艶のある黒髪を綺麗に束ねていて、スラッとした眉、すこしだけ低い鼻に艶やかな唇。しかし顔立ちは未発達な体型と連動して幼い。本人はそれをかなり気にしているようだ。


「ごちそうさま。それじゃお兄ちゃん、先にいってるね」

「あぁ、気をつけてな」


今日は4月8日、入学式の日だ。瑠璃也達は中高一貫校に通っているので中等部の入学式に参加するだけだが、緋音は中等部の生徒会長なので仕事がある。緋音は人望ともに信頼も厚く、瑠璃也は会員ではないがファンクラブまであるほどだった。


「あ、翠沙お姉ちゃん。おはよー」

「緋音ちゃん、おはよう」


玄関口で緋音が瑠璃也の待ち人と会った。


「お兄ちゃんならいま、朝ごはん食べてるよ」

「了解。いってらっしゃい、緋音ちゃん」

「行ってきまーす」


緋音は通学路を走っていく。歩くには若干遠い距離なのだが、少しは運動をしないといけないということで緋音は歩いて行く。瑠璃也達は別に車で行きたい理由もなし。緋音に合わせて、1時間ほどの通学路を話ながら歩いていくのだ。


「るーくんおはよ」

「おはよう、翠沙」


慣じんだ様子でドアを開け、まるで自分の家の様にリビングへと進んでいく。彼女は瑠璃也の幼なじみで婚約者(・・・)白江翠沙(しろえみさ)だ。サラサラで白金(プラチナ)のように白く光沢のあるスーパーロングの髪は生糸のようで、束ねずに後ろに垂らしている。シャープな眉、潤った翡翠色の瞳は宝石のようで、唇も艶やかな紅色。それに加え、中学2年の頃から急激に大きくなった胸、対象的に華奢でしなやかな肢体は一見ただの令嬢だが、少し袖や裾をまくれば引き締まった体が姿を見せる。

白江家と黒藤家の関係は、白江家が黒藤財閥の腹心という仕事仲間だった。白江家は黒藤財閥内でもトップに近い立場で、それなりの発言力を持っている。親同士信頼関係にあり、よく交流するので子供も、まして同年代の瑠璃也達も交流がない訳がなかった。


「まだ朝飯を食っている途中なんだ、ゆっくりしててくれ。といっても、今さら他人の家というわけでもないな」

「あ、うん、そうだね。それじゃ適当にテレビでも見てよっかな」


瑠璃也と翠沙は家が隣同士ということもあって、翠沙はよく瑠璃也の家へ遊びに来ているのだ。毎日と言ってもいいほどに。寝泊まりもするので、もはや同居しているとも言えるほどだった。


『朝のニュースです。アメリカ連合国カラティラ州で、大規模な爆発事件が発生しました。この件について、アメリカ連合国大統領は大規模なテロ行為だとして、調査をしています』


「…物騒だね」

「そうだな。本来なら電子デバイスによって国際憲法に違反するようなことは出来ないはずなんだが…」


ピッと翠沙が番組を変えた。


『世界的に問題となっている黒髪黒目が人体にどのような影響を及ぼすかの研究がまた一段階、進められました』


現代人は髪や目の色に黒や金、白以外の赤や緑、青も生来の特徴として持っている。瑠璃也と緋音も例外ではなく、髪色は黒だが瑠璃也の瞳は紫がかった青、瑠璃色で、緋音の瞳は緋色だ。翠沙の瞳は翡翠色で、瑠璃也達の名前の由来ともなっている。

現代では生まれた赤子の体重、髪色、目の色を真っ先に記録する必要がある。その理由は現代の遺伝子にある。特異な遺伝子をしている現代人にとって、髪色、目の色が共に黒ならば、現代の環境では体にどのような影響を及ぼすのかがわからないからだ。


「さて、朝飯も食い終わったから、そろそろ出るか」

「うん、そうだね。持ち物は無しでいいんだよね」

「ああ。今日は入学式だけだからな」


瑠璃也は翠沙と一緒に家を出て、鍵を掛け、並んで歩きながらとりとめのない話をして通学路を進んだ。



「おーっす瑠璃也!それに翠沙ちゃんも」

「おう、重三。やっぱり同じクラスだったな」

「おはよう、久和君」


瑠璃也に話しかけたのは久和重三(くわじゅうぞう)。瑠璃也とは親友とも言える付き合いだ。成績は平均よりすこし上、運動神経は抜群。金髪をオールバックにした、すこし切れ長な目をしていて灰色の瞳に鋭い眼光を備えている。しかし、根はすごくいい奴だ。

瑠璃也とは小学生からの付き合いで、たびたび馬鹿なことを一緒にしている。夏休みに自転車で日本一周や、その後徹夜で宿題を終わらせる、無人島で1週間暮らしたりなどなど。


「はっ、当然だろ?顔ぶれももはやお馴染みだぜ」

「まぁ、そうだな」

「おはようございます。お二人共」

「おう、遠士郎」

「おっす遠士郎。今日も変わらず影が薄いなぁ」

「む、失礼な。好きで影を薄くしているわけではないです」


そして、瑠璃也達と共にバカなことをする友人第二号、桐谷遠士郎(きりやとおしろう)だ。瑠璃也とは中学生からの付き合いで、気の合う三人でよくつるんでいる。

見た目は平凡で、平凡すぎて空気になっているレベル。成績も平均、運動神経も平均的だ。影が薄すぎて初めの頃は一瞬でも気を抜くと目の前にいても気づかないくらいだった。特徴がないのが特徴を体現したと言える。髪の色は焦げ茶色。瞳は紺色だ。


「お、あと少しで9時だな。演習場にいかねぇと」

「ならそろそろ委員長から号令が出るな」

「みんな、演習場にいくわよ」

「ほれきた」


クラス委員長の中村瑞希(なかむらみずき)。これまた委員長の特徴を体現したような容姿で、セミロングの髪の毛を三つ編みにし、メガネを掛け、泣きボクロがあり、すこし切れ長の目だ。しかしメガネを外し、髪型も三つ編みじゃなくすればまぁまぁ可愛いというか綺麗なお姉さんキャラになる、というのは水泳の授業で発覚したことだ。


「そういえば瑠璃也お前、緋音ちゃんが壇上出て挨拶するんだったよな」

「ああ。そうだな。昨日の夜まで練習してたぞ」

「高等部の生徒会長に引けをとらない人気だよなぁ緋音ちゃんは」

「ええ、ファンクラブの人数もいまや500人を突破。神聖なる天使妹と呼ばれていて、高等部でも人気があるそうです。ファンクラブの創始者と呼ばれるシングル(一桁)ナンバーの9人の発言力は絶大で、中でも会員No.1を持つ方は、もはや白霧の伝説とも言われているそうです。緋音さんに不純な輩を近付かせないために親衛隊も組織しているほど、シングルナンバーの方々は緋音さんを守ろうという心を持った方たちです。しかし問題なのはこの僕でさえシングルナンバーの実名すら特定できないことなんですが」


大分大きくなっているな、と感心した瑠璃也。組織がちゃんとしているなら瑠璃也から言うことはなかった。しかし…


「組織は大きくなれば大きくなるほど一枚岩じゃなくなる。お前らも、いざとなったら頼むぞ?」

「うむ」

「ええ」


瑠璃也は久和に、もしも緋音に何かあったら協力してもらうように伝えている。桐谷には情報収集を頼んでいて、こうしてたびたび情報をもらっている。

情報収集というと、桐谷は情報収集が上手い。その収集手段は決して明かしてくれないが、瑠璃也と久和は桐谷がある古武術の継承者ゆえに情報収集がうまい、ということにしている。




瑠璃也達は演習場(体育館)につき、それぞれの決まった席に腰を掛けて新入生を待つ。演習場は今年の新入生に加えて元高校3年の卒業生がいても余裕のある大きさだ。全校生徒は1200人。1クラス40人×5クラス×3学年×2だ。

これがスッポリとはいって、しかもまだあまりがあるのだから体育館の大きさも相当なものだろう。保護者席に教師席と来賓席だってあるのだから。


「新入生の入場です。皆様、大きな拍手でお迎えください」


高校生活最初の行事が始まった。



おっと。なぜだろう、入学式が始まり、新入生が入場して点呼、起立したあと校歌を歌い終わって祝辞やらなんやらが始まったところから記憶がない。


「新入生が退場します。盛大な拍手をお願いします」


…いつの間にか寝ていたようだ。


俺はとりあえず何事も無かったような顔で拍手をしてやり過ごすことにした。

拍手を終え、教室に戻ろうと席を立つと、久和と桐谷が瑠璃也に話しかけた。


「瑠璃也。お前寝てたろ」

「いつの間にかな。遠士郎は今年も熱心に見てたんだろ?後輩を、くまなく」

「毒を含めないでくださいよ。入学式は情報収集が捗る行事なんです」

「それで、なにか有益は情報はあったか?」


瑠璃也は緋音の生徒会長の手伝いをしている時に、一応、新入生名簿に目を通している。総代の名前は武藤快斗、だったか。


「今年は特に面白いやつが入ってきたわけでもないし」

「緋音ちゃん効果か入試の平均点数は例年より高いけどな。ただ、尖ったやつがいねえ」

「そうですね。去年の総代は大分、やらかしましたからね。いい意味で」


その時のことを思いだし、はははと笑いながら瑠璃也達は教室に向かうのであった。

ぼちぼちやっていきますので、お付き合いしていただけたら幸いです。

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