1,5章 雨天の恋物語編
ロール・プレイング・スクールに入学してから2週間とちょっとを過ごした。
俺自信はかなり楽しくて、陽気な毎日を過ごしている。
まぁ、どうやら、そうでない人も居るようで……。
「雪美、給食台の片付け手伝って……」
現在進行形で俺の一方的恋愛対象の優奈が言った。
そりゃあ、自分の好きな人に優しく「手伝って」なんて言われたら断れる訳も無く、俺は本能のままに、優奈の仕事を手伝う。
最近、優奈の様子がおかしく、以前に比べて圧倒的に元気が無い。
ため息を聞くことも多くなったし、何より目には光が灯っていない。
友達であれば、「大丈夫?」の一言くらい掛けてあげれるのだが、男子小学生が恋愛対象に優しく声を掛けれるはずが無い。
優奈が台を吹き終わると、
「後は俺がやるから休み時間で良いよ」
と、俺は声を掛けた。
「ありがとう」
優奈は静にそういうと、少し申し訳なさそうに去って行った。
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その後、俺は優奈の親友である沙鶴に相談した。
「最近さ、優奈の様子変じゃない?」
「雪美も気付いてるのね……。優奈ね、rpsに入学してから、授業量が減ったじゃん。そのせいで本校舎の生徒からいじめられてる見たいで……」
俺は今、12年間生きてきた中で最も大きい悔しさを味わった。
「私も何回かそのことについて相談したんだけど、
本人は『そんな事無いよ』って誤魔化してるの」
「ありがとう。その情報が聞けただけでも嬉しい」
俺は簡潔にまとめると、少し廊下で壁に持たれ掛けた。
好きな人の気持ちも理解出来ないのはこんなにも謎の「悔しさ」、「敗北感」を味わうものかと。
「ねぇ、雪美。少し場違いかもしれないけど……。
雪美って優奈のこと、好きなんでしょ、実は優奈は雪美のこと……好きなの。だから、私じゃなくて、雪美が優奈を助けてあげて。お願い」
「あぁ」
俺はいつもより低い声で返事をした。
俺は今決意した。優奈を助けて、守ってあげよう、と。
所詮「小学生のちっぽけな恋」かも、しれない。
周りから見たら小さいことかもしれない。
そんなことは俺からしたらどうでも良い。
俺の大胆な行動で、一人の人権と、心を救えるなら
沙鶴からその話を聞いた後、俺は出来るだけ多くの時間を優奈と過ごすと決めた。
雅にも、雫月にも、望雨にも、学先生にも、誰にも言わずに。
今の俺には、「一生懸命」「一心不乱」といった言葉がピッタリだと言っても良いくらい。
当然、男子からは少し、からかいを受けた。
どうしても顔が赤くなってしまうので、照れたりして場を和ませた。
その男子のからかいの中で、俺は「友情」を実感した。
誰一人として、俺を「本気でからかう」ということをしなかった。
遊び程度の感覚でからかい、笑いあった。
恐らく、俺の恋心に気づいた男子は密かに応援しているのだろう。
その現れが雅だった。
優奈と俺が一緒に居ると、少し離れていったり、俺の仕事を手伝ってくれたりと、言葉では表さなかったが、その行動で雅の思いは伝わった。
人をサポートして、人にサポートされる。
その繋がりが人間関係を良くしていくのだ。
そんな実感も沸いて日々が充実していた時、事件は起こった。
後書き
1,5章第1話をお読みくださりありがとうございます。
今回から雪美の恋愛編に入ります。
登場人物の年齢を10歳~12歳にしている理由は、
「年齢が違くても、思い等は変わらない」
ということを表現したいからです。
雪美は11歳で、まだまだ子供ですが、恋人を守ろうという気持ちは、成人と同等以上あります。
年齢から、雪美の強い意思を感じ取って欲しいです。
作中で、「恋人」を「好きな人」と表現しているのは
視点を小学生らしくする為です。
今回は後書きが長引いたので、雑談コーナーは無しにします。
ご愛読ありがとうございました。