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7.  再会

「おはよ~」

「おはよう。あ、良子、髪型かえたんだぁ」

「どう?」

「いいんじゃない。似合ってるよ。イメチェン?」

肩まであった黒くて長いストレートは肩口でばっさり切りそろえられている。

「アレだけ長いと、も~うっとおしくってさ」

「似合ってたけど?」

向かい側から美紀も口を挟んでくる。

「ま、飽きればまた伸ばします~」

あきは自分の髪を触ってみた。

もともと茶色がかっていた髪を少し明るめに染めて、ゆるくパーマを当てている。

少し癖があるので放っておくと変な方向にはねてしまうのだ。

ちょっとパーマを当てたほうがまとめやすいよ、という以前美容室でアドバイスされてこの髪型にしている。

「…私も切ってみようかな」

今の髪型も嫌いじゃないけど癖毛の自分には時々良子のストレートがうらやましかった。



「それじゃあ、今日はこれで」

「はーい。お疲れ様ぁ」

「おつかれー」

定時になると同時に美紀が立ちあがる。

「美紀さん。今日は早いね。デート?」

良子の声に、ふふっと艶っぽく笑って美紀がバイバイと手を振って立ち去る。

美紀にはもう長く付き合っている彼氏がいるらしい。

「でも結婚の話聞かないよね」

「そうだね。遠距離恋愛とか?」

普段は時間なんで気にせず日付が変わるまで残業、何てこともしている美紀だが、時々こうやって定時に飛び出していくことがある。

あき達は遠距離恋愛じゃあ、とにらんでいる。

「ま、じゃあ私らも帰ろ?」

「う…ん、ごめんもうちょっとだけやって帰る」

「また?残業代も出ないんだし。明日にしたら?」

そう、しがない派遣社員には残業代なんてものはない。

「でもあとちょっとだし。いいよ、先帰っててて」

良子はあきよりも家が遠いのだ。

「そう?まぁ、無理しないでよ~」

さっと立ち上がるとじゃあね、と良子も手を振って帰ろうとした。

「あ!晩御飯しっかり食べなよ!!」

と念を押すことは忘れない。

その声にあきはつい笑ってしまった。

「はいはい。良子お母さんみたいだし」

手を振って見送る。

「さて、と…」

目の前の書類に集中をする。

あとは、これを打ち込んで、計算があっていればいいから…

もし早く終われば髪でも切りに行こうかな。気分転換に。


と、机の上においておいた携帯がブルルッと震えた。

見れば営業の山本からの着信だ。

何かあったのかな?

「はい」

「あ、狭山さん。今時間大丈夫?」

なんだか山本の声があせって聞こえる。

「大丈夫ですけど。何か?」

「この間のパーティの派遣の件なんだけど」

「え!?」

「狭山さん。木頭貴弘っていう方をしってるかな」

木頭?

全く覚えがない。

「いえ、ないですけど。同じ派遣の方ですか?」

あの日何か失敗でもしただろうか…?

「あ、違うんだ。逆に主催側のかたでね。で、何か事情があって当日参加された人を探しているらしいんだけど…言われた特徴が君に似ているから」

「ど、どんな…」

「髪は茶色で、少しウェーブがかっている。身長は160センチちょっとぐらいで、白いドレスを着ていたらしいんだ」

「そ、それで…」

喉がからからに渇いてきた。

山本に返した声がかすれてしまう。ない唾をごくりと飲み下して、山本に話しかける。

「あの、その木頭さんっていう方は、どんな感じの…」

「ああ、背は180ぐらいあるかな。銀縁のメガネをかけてて…うん、まぁカッコイイといわれるような人だろうね。上にたつ人のオーラがある」

ま、まさかそれはあのときの人じゃあ…

いやいや、まさか。それにそんな上流階級の人なら一晩の遊びで探すなんて事はしないはず。

ぎゅっと手を握り締める。

「知ってる?」

「…いえ」

そうだよねぇ、と山本が続ける。

「一応どうしても確認したいっていうからそっちの会社を教えたんだ。これから行ってみるって言ってたから。お会いしたら対応をお願いします。たぶん見たらすぐわかるよ」

すぐも何も、あきが知っている人なら目をつぶってでもわかる。

心臓がどきどきしてきて耳の後ろまで痛い。

その後の山本との会話は覚えていない。


とりあえず…帰ろう。

やりかけの書類もそのままにあわててカバンを引っ張り出す。

携帯を放り込むとあきは部屋を飛び出した。

慌てるあまり、仕事用の靴を履き替えるのを忘れてきてしまったほどだ。


エレベーターで1階に下りてそうっとロビーを見回したが、それらしい人はいないようだ。

ちょっと、ほっとして歩みを緩める。

少しうつむき加減で入り口の自動ドアをくぐった時、横合いからぐっと腕を捕まれた。


「なっ…」

「やっと、見つけた」

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