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1. いつもの日常

狭山あきは派遣社員だ。

派遣されている先は、中堅どころのイベント会社。

配属場所は営業事務だ。

営業社員が取ってきた契約の書類整理や、資料作成、その他もろもろの雑務をこなしている。

この会社ではチーム制をとっていたので、あきは誰の担当というよりも「~地区担当の事務補佐」といった感じだ。

もちろんチーム内にはあき以外にも3人の事務をこなしている人間がいる。あきのような派遣社員と正社員も混じっている。


「あき~、おはよう。相変わらず早いねぇ」

席について書類整理を始めていたあきに明るく声をかけてきたのは深山良子。あきとおなじ派遣会社の社員だ。

深山は黒いさらさらのストレートヘアを揺らしながらあきの隣のいすにどさっと腰をかけた。

深山はきれいだ。

顔はびっくりするぐらい小さいし、目もぱっちりとした二重。ナチュラルメイクがよく似合う肌はホクロひとつない。

身長はあきより少し小さめの160センチ。あきは165センチある。

なのに足の長さは絶対あきより長い。



「どーしたの。ぼうっとして」

「え?ううん。おはよー。良ちゃん」

深山はふうっとため息をつきつつ、マックのコーヒーをすする。

「また、朝マック?」

「そ。最近マフィンにはまってるんだ~」

深山はほっそりした体に似合わずかなり食べる。朝からマックは当たり前だし、昼は牛丼だって平気。

でも、なぜか高カロリーのものを食べていても太っていかない。

時々恨めしくなる。


「今日は何?」

「ん?エッグマックマフィンのセット」

クーポンがあったからね~と、にっこりほほえんだ。

「あきは?ご飯食べた?」

うん、とうなずくと横目ににらまれた。

「本当?いっつもたべてないじゃん。何たべたの」

「え?え~っと、スープとクラッカー」

「何のスープ?」

「えぇ?…コーン?」

「何で疑問形よ」

むすっとして深山はつぶやく。

「そんなの栄養ないよ~。もっとしっかり食べなきゃ」

いつものお説教にあいまいに笑った。


「おはようございます」

向かい側に座ったのは、加藤美紀。あき達とは違いこの会社の正社員だ。あきたちのチームの事務方のリーダー的存在でもある。でもえらそうじゃないし、年も近いからタメ口で話して~と最初から言われていた。

仕事もあきたちと同じことをしているし、あまり大きな違いはない。違うとすれば時々営業担当と一緒に出張にも行くぐらいだ。

「おはようございます」

「おはヨ~美紀さん」

軽く返すのは当然深山。

「相変わらずねぇ深山さんは。またあきちゃんにお説教?」

だってと深山は口を尖らす。

「あきはほっとくとろくに食べないんですもん。いっつもダイエットダイエットって」

「そうねぇ。狭山さん確かにあんまり食べないわよね。ダイエットなんて必要ないのに。」

ありますって。

現にこの制服を着た腹をみよ!!

165センチで54キロなんて太ってはないかもしれないけど細くもない。

深山なんて160センチで43キロだ。あきだってせめて47キロぐらいにはなりたい…

こないだ着たドレスだって正直ウエストがパンパンで…


「あっ」

「何?」

深山が目を向ける。

「ねぇ。土曜日一日バイト行ったんだけど」

「あぁ。会社からメール来てたやつ?行ったんだ」

「それでね。ドレスを貸し出されたんだけど、どこに返せばいいの?営業の山本さんに返したらいいの?」

山本とは派遣会社から時々様子を見に来るあきたちの監督者のようなものだ。

苦情があればきくし、派遣されている会社と派遣社員との顔合わせや雑務をしてくれる。

ドレスも山本が持ってきてくれたのだが…

「さぁ、こないだ私がしたときは派遣会社まで返しに行ったよ?」

深山は顔もスタイルもいいので時々イベント会場なんかのバイトに借り出されている。この間は深山がいけなくなったので、あきが代わったのだ。


と、その時机の上においていた携帯が震えた。

メールのようだ。

開けてみると山本からだった。

『狭山さん。お疲れ様です。先日のイベントで支給された服につきましてはホテルよりの貸出のもののため、クリーニング後ホテルへ返却してください。クリーニング代は後日返却しますので領収証は保管して置いてください。 山本』

えっ、あのホテルへまた行かないと行けないの?

あきは心臓がきゅうっとする思いだった。


だって、もしあの人にあったらどうすればいいの…?

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