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第二話

バリ・クレント


一方、ロフィの方は八つ当たり状態にあった。

「なんだよ、サラの奴、あんな新人と仲良くして!」

授業にチャイムが鳴るのをほっておいて校庭の隅にある池のほとりに向かった。魚と鳥の観察用に作られたもので、吹き抜け状態にあって、五人から十人座れるくらいの椅子が設置してあるだけだった。小屋に入るとバリがいた。

「バリ、なにやっているんだ?」

と、ロフィは驚いた。

「別に」

と、バリはかたをすくめて見せた。椅子の下には魚が見える。

「座ってもいいか」

「ああ、けど、どうしたんだ?」

「何が?」

「お前がここに来るのを見たことがない」

「初めてだよ。よく来るのか?」

「ああ。魚の生態の調査のほうに進みたくってね」

「へぇ……はじめて知った」

「釣りをして……魚をさばいているうちに思ったんだ。お前は?」

「オレ……ねぇ。どーするかなぁー。まだ考え中だ。さぁー、寝るぞー」

と、宣言してロフィは横になった。

 サラは昼になると、弁当の包みを三つもってその小屋に向かった。

「バリ」

「サラ!」と、サラの声を聞いて目を覚ましたロフィは驚いたように言った。

「あら、ロフィ、こんなところで何しているの?」

 バリは動揺も見せなかったサラの顔の変わらなさに感心していた。バリはサラが昼の来ることがわかっていたので驚かなかったが、ロフィは多いに驚いていた。

「お、お前、なんでここに?バリがいるって知っていたのか?」

「あたりまえでしょ。知らなかったの?バリがこの学校を選んだのは魚がいるからなんだから。はい、これ弁当」

サラは包みを二つバリに渡した。

「お、サンキュー」

「なんで、おまえがバリに弁当渡すんだよ?」

「ほしかったら、あんたも食べれば?」

と、サラは腕をくんでみせた。

「おちつけ、ロフィ、これはパンくずだよ」

と、バリが弁当箱をあけて見せた。確かに中はパンくずがうまっている。

「魚用だよ。サラの家のほうにあるからもらって来ているんだ」

「何だ……そうか……それは?」

サラの持っている包みを見つめていった。

「これは私の弁当。これから庭でミコや双子たちと食べるの。じゃあね」

「あ、サラ」

「なに?」

「さっき、タームと、何話していたのさ?」

「タームの父親さんが入院しているんですって。私、知り合いなのよ。じゃあね」

 今度こそ、サラは振り返らずに行ってしまった。

 ロフィは無言で魚にパンくずを魚にあげているバリに声をかけた。

「……なぁ、バリ」

「んー?」

「オレ、サラの知り合いってあんまり、知らないんだよ。お父さんとか、お母さんの話を聞いたことがないんだ。お前、あるか?」

「お前がないのに、俺があるわけないだろう」

「そうか」

「そうだよ、あんまり大声出さないでくれ。魚が逃げる」

と、パンくずを投げながら言った。

「あ、邪魔して悪かった。俺、パン買いに行くけど、お前は?」

「オレは昼、外に行くんだ」

「そっか。じゃあな」

「おー」

 ロフィの姿が見えなくなると、バリはもう片方の包みを開けた。バリはパンくずを魚にあげつつ、ノート型パソコンの画面を見つめていた。

「何、あれ……パソコン?」

 ロフィの後をつけてきたのはルカだった。ルカはサラが来た反対の方向から見つめていたので誰にも見つからないでいたのだ。

「なにか、二人の間にあるわね……」

 ルカは細くほほ笑んだ。


パン屋


 サラはロフィと一緒に帰り、そして、すぐにでかけた。その姿をルカは車の中からそっと見つめていた。サラはバリに会いに家と学校の途中にあるミスターの部下のやっているパン屋で話をしていた。

「見た?」

と、もうすでにコーヒーを飲んでいたバリにすぐに用件が入った。

「ああ」

「明日からお願い。私にはお茶をちょうだい」

と、サラはパン屋のおばちゃんに頼んだ。

「タームは?」

「今、くるはず……あ、ターム、こっちよ」

と、サラは手を振った。

 カメラ付きの双眼鏡で見ていたルカは二人きりじゃないことにがっかりしていた。

「何だ……逢引だと思ったのに。……そうだ、ロフィを呼んじゃおーっと」

 鼻歌を歌いながらルカはロフィのところへ電話をかけはじめた。

「ターム、こちらがバリ・クレント。バリ、彼が……」

「知っているよ。朝、聞いていた」

「あら、よかった」

「あの……なんでしょうか?」

と、戸惑いを隠せないのか、タームは落ち着きがなかった。

「バリは時の舞姫の仲間よ」

「僕に紹介してもいいんですか?」

と、タームは目を丸くして言った。

「いーの。舞姫は動かないから、あなたとバリで行ってもらいたいところがあるの。コザルドさんの昇進にもつながるしね。親孝行だとでも思って」

「行って欲しい場所?」

「そう、人間じゃないと入れなくてね。あなた武道をやっていたでしょう?たしか、コザルドさんに聞いた気がするのよ」

「ま、怖いなら止めてもいいんだけど」

と、バリは笑いながら言った。

「行きますよ!どこです?どこにでも行きますよ」

 むきになってタームは言った。単純な性格らしい。

「あのね……二人に行ってほしいのはここなの」

 サラは何枚かの写真を出した。無機質の建物が写っている。

「……どこですか、ここ」

と、写真を手にとってタームが言った。

「ポニュ地方の北の方にある施設なんだけど。なにか政府関係者の目を盗んで、何かやっているみたいなの」

「何かって?」

と、タームが聞いた。

「それがわからないから俺たちが行くんだろうが」

「あ、なるほど。……ここにはいつから行くんですか?」

「今日の夜」

と、サラが微笑んだ。

「今日?学校は休んで?」

「休んで」

と、当然という口調でサラは言った。

「夜からやっているんですか?」

「機械が通してくれるはずなの、バスがクレム地方からトライ地方経由でてるの」

「わかりましたよ、いきます」

「じゃ、二人とも、帰るときは裏口からね。表にはルカが見張っているから」

と、サラが外の車をさした。

「なんで、見張られているんですか?」

「さぁ?ルカに聞いて」

と、サラはため息をついた。

「おい、ロフィが来ているぞ。ターム、行こう」

「あ、ハイ、それじゃ」

「じゃねん」

 二人がいなくなると、サラは一人でお茶のおかわりを頼んだ。

 一方ルカに電話をもらったロフィは急いでパン屋に向かったが、そこにはサラ一人しかいなかった。すでに二人は裏口から去った後だった。

「あら、ロフィ、どうしたの?」

「どうしたのって、……ここに、君とバリが二人きりでいるって言うから……」

「だから?」

「だからって……」

「誰がそんなこと言ったのよ」

「ルカだよ」

「そーよ、あ・た・し。これが証拠」

 急に背後から声がして、ルカが差し出した写真はバリと二人が写っていた。

「たしかに、さっきまで、バリといたわよ」

 と、サラはあっさり認めた。

「ほーら、怪しい仲なのよー」

「あなた、悪趣味ね。こそこそ隠れて、写真なんて。ここはね、バリが魚のえさを頼んでいるパン屋なの。最初から見ていたんでしょ。私のほうが後から来たのよ。偶然よ」

「待ち合わせでしょ」

「こんなパン屋で?逢引ならこっそりやるわよ」

と、サラは平然と言った。

「おい……」

 ロフィの顔が青くなった。

「あなたもばかね。ルカの話を信じるなんて。でも、せっかくきたんだから一緒にパンでも食べましょ。おいしいのよ。ルカ、邪魔よ。人の恋仲でも邪魔する趣味が?」

「まぁ、失礼な!」

 ルカの怒りながら去っていった。

パン屋のおばちゃんが焼きたてのパンを乗せてやってきた。

「ハイハイ、焼きたてのパンよ。どれがいい?」

「わたし、これとこれ」

「あ、じゃ、オレはこれとこれと、コーヒー」

「あれ?誰かいた?」

「カップ?いいえ、私が二杯飲んだの、味はどぉ?」

「あ、うまい。でも、なんで、バリがこんな店知っているんだ?」

と、周りを見まわして言った。

「こんな店って……」

「あ、いや、そういう意味じゃなくって、店の外見が可愛いだろう?あいつのイメージじゃなくって」

パン屋のおばちゃんが言った。

「本人も恥ずかしいからたまにしか、来ないのよ。それも魚のさえのお礼にね」

「あの、パンくず?」

「そう、これだけ毎日パンを焼いているとね。でるのよ。パン粉にしてもいいんだけど、素材がいいもんだから長持ちしなくって。魚にあげたいって言うから、いいわよって渡しているのよ」

おばちゃんはそう笑った。

一方、ルカは店を出てもまだ、怒っていた。

「何よ、あれ!ロフィのばか!絶対にサラとバリは怪しいわ。タームも……。どこに行ったのかしら?」

その夜……タームとロフィは施設に潜入していた。


施設潜入


「ボディ、チェック終わりました。確かに人間二名。名前:バリ・クレント 十六歳 父親ロンと母親サイアの間に生まれる。父親は再婚。次、名前:ターム・ロイズ 同じく十六歳。父親サジタと母親ロイズの間に生まれる。現在は離婚中で母方姓を名乗っていますが、父親と同居中です」

と、機械が読み上げた。

「そう。わかったわ」

 パソコンに写る二人を見つめ、薄暗い部屋でその女性は細く笑っていた。

 二人はとりあえず、その日のうちに同じ部屋に押し込められた。他にも何人かいたが、それぞれ、誰かしらと一緒に一つの部屋に案内されていた。そして、今日のところは寝るだけになった。生活は明日から始まるらしい。その日は説明書を読む日となった。

「本当に夜も受付やっているんですね」

「ターム、オレに敬語はいらない」

「でも……」

「いらん」

「ハイ、じゃ努力します」


朝になり、身支度を終え、部屋にいるとノックされた。

「お二人の入学を認める前にテストを行ないます。六百点以上出せない場合は入学できません。教室へどうぞ」

 試験室には二人だけではなく子供は七歳くらいから大人は三十人以上までいた。

「それでは、始めてください」

 試験は基礎から応用まで、自分の地方の言葉、それ以外に数学と体育があった。終わってすぐに、結果発表された。

「バリ・クレント、なかなかの成績です。Aクラスへ。ターム・ロイズ、ギリギリです。Cクラスへ。どうぞ、案内いたします」

 ぷかぷか浮いていた非行型のロボットが動き出し、後についていった。

「ここが、Cクラスで奥がAクラスです。では」

 他の生徒たちもそれぞれの教室に散らばっていった。

「じゃ、ターム、昼休みにでも……」

「はい……」

 バリはAクラスに入っても誰とも話すことをしなかった。そして先生が話すだけの形式で、授業はどんどん進められていった。

 昼休み、バリがCクラスに向かうと誰もいなかった。

「おかしいな……あれ?」

 向こうからジャージ姿の疲れきったような集団がゾンビのように歩いていた中に、タームがいた。

「ターム?なんの授業だったんだよ……」

「一時間目……マラソン……二時間目……卓球……三時間目……筋力トレーニング……。一で、昼休みなんだけど、ご飯より、水が欲しい」

と、タームは息を絶え絶えに言った。

「マジかよ。水?水飲みまで連れて行ってやるから」

バリはタームを背負って歩いていった。

「うー……」

「ほら、水」

「うーうまい……」

「あんまり飲みすぎると後がつらいぞ」

 後ろから声をかけてきた人がいた。

「そうなのか?」

と、バリは振り向いて言った。

「ああ、昼ご飯の後は水泳だし、その次の時間はバトミントンだぞ」

と、タームの倍はがっしりした体系のその男言った。

「なんだぁ、なんで、体育ばっかりなんだ……」

「あんたはA?B?」

と、その男はあきれた顔で言った。

「クラスか?Aだけど?」

「だからか。Aは勉強のクラス。Bは見極め、Cは体力クラスだから」

「体力クラス?」

「新人か?」

と、その男は逆に聞いてきた。

「ああ、今日が始めてなんだ」

「だからか、オレはファグル、ここに三年いる」

「三年も……ずっと体育クラスなのか?」

「あんた、知らずに入ったのか?優れた部分を伸ばすためのクラス分けだぞ」

「そうなのか……にしても、これはきつくないか?」

「うー……」

 下でへばっていたタームも抗議の声というより、音をあげた。

「オレは軍隊志望でここで体を強化中なんだ。だいたい、Bクラス以外は三日で辞めていくよ」

「三日?」

「Aクラスは今日は宿題の多さで寝られないだろう?三日に一度はテストで点数が五百点以下になれば、次の日からBクラス行きにもならずに退学だからな。CクラスはBクラス行きにもならずに退学だからな。CクラスはBクラスに行くんだけどな」

「そうなのか……。いろいろ、どうも」

「いや。じゃ、オレは飯食う時間だから。あ、お前はあんまり、急に大量に食べると後できついからゆっくり食べろよ。んじゃな」

と、タームに向かって言った。

「あー……」

 タームは言葉も出ないようだ。

「本当にきつそうだな、Cクラス。飯……とりあえず、弁当がクラスに配られるみたいだから教室行こうか?」

「うー…」

 箸も持てないというのは、こういう状態なんだろうかとバリは思った。箸を持つのにも疲れすぎて、力が入らず、力を入れると手が震えるのだった。

「明日からフォークにしてもらったほうがいいかもな」

「ありがとー……」

「食べるのにも疲れるって感じだな」

「疲れる……」

「まさか、こんなクラス分けになっているとはなぁ……」

「ここで……なにがある……?」

「さあ、三日たったらわかるかもなぁ……」

「三日……」

 もう、想像しただけで息も絶え絶えというのだろうか、金魚みたいに口をパクパクさせていた。バリも自分のAクラスの教室から持ってきた弁当を開いてたべたが、あまりのまずさに口で止めてしまった。

「なんだ、この味……」

バリはいろいろ、のぞいてみた。Aクラスは教科書を読みながら教室移動をしているし、Bクラスはやけにぼんやりとしている人が多く、Cクラスは動くのも辛そうだった。

五限が終わるとAクラスはさっさと宿題にと取り掛かるために部屋に戻り、Cクラスは由佳を這いつくばるかのように部屋に戻っていった。実際に、タームも部屋に戻ってくるなり、ベッドに入ってすぐに眠ってしまった。あの、ファグルが言っていたように確かにかなりの宿題の量だったが、別にバリにとっては難しいことでもなく、廊下に出る余裕さえあった。

あっちこっち、歩いてみては施設内の地図を頭に入れていった。二階の窓から見たとき、荷物を持って異動していく人たちの姿が見えた。

「あれ?あんたさっきの」

「ああ」

そこにポツンと立っていたのはファグルだった。

「宿題は終わったのか?」

「いや、休憩中。あの子供たちは?」

と、窓の向こうをさした。

「ああ。あれはここを辞めていく連中だ」

「へぇ……ここのCクラスはあんたみたいに軍隊志望が多いのか?」

「そうだねぇ……俺を含めて五人かな。来た時は倍はいたんだな。へっちまってな。毎日、人が入ってくるのに、毎日減っていくんだ」

「きつくてか?」

「それもあるけど、優秀だともっと上のクラスへ行くみたいだぞ」

「もっと上?」

「おお。俺の同期とでも言うのかな。一緒に入った奴が一人、上に行ったんだが、……それ以来、一度も会ってないんだ。親にも連絡していないようだし」

ファグルは顔を曇らせた。

「親は心配していないのか?」

「ここに入れた時点で心配している親は少ない」

「そうなのか?」

「ああ。親のいない子や、施設からの子供、親がいても子供を大事にしないとか、多少きつくても優秀な子供になるのを期待しているからな」

「へぇ……」

「あんた、本当に何も知らずによく、ここに入る気になったなぁ……」

ファグルはあきれたように言った。

「まぁね。ところで、俺はバリだ。そう呼んでくれ。さっき、へばっていたのはタームだ」

「友達か?」

「ああ。部屋で倒れているけどな」

ファグルはちょっと笑った。

「じゃ、夕食も少なめにしろと伝えておいてくれ。明日もスポーツ三昧の日だ」

「すごいな、休みはないのか?」

「ないね。Aクラスもだ。今日の宿題を片付けても明日も大量に出るぞ」

「Bはどんなクラスなんだ?」

「Bはなぁ……なぜか、一番覇気がないんだよなぁ……」

と、ファグルは首をかしげた。

「覇気?」

「ああ。AもCもそれぞれの部門に追われている。Bはそのどっちでもないのに、活力ってもんが見られないんだ」

「活力ねぇ……確かに」

バリはあの、今日見たクラス中の生徒がぼんやりしているBクラスを思い出しながら言った。

「さぁ、そろそろ戻るぞ。夕食が配られる時間だ」

「部屋に支給って言うのが凄いよな」

「オレも思った。つまらないもんで、五人で一つの部屋に持ち込んで食べているよ」

「そのほうがいいかもな」

二人はそんな話をしながら部屋へと移動していった。

「んじゃ」

「おーまたな」

「おかえりー」

部屋に戻るとタームが言った。

「お。ちょっとは起きてしゃべれるようになったな」

「んー、一応、体力は親父にずっと最低でも剣道と柔道はやれって、やらされていたから少しはあるんだけど……。一時間丸ごとマラソンはきつかった」

と、思い出しただけでぞっとしたように言った。

「明日もらしいぞ」

「げー」

タームはげんなりしたように言った。

「夕食も少なめにしておいたほうがいいってさ」

「……ってさ?」

「ああ。廊下で会ったファグルが言っていた」

「あーあの人。あの人、がんばっていますよー、ものすごく」

「なんでも、優秀だともっと上にいけるらしい」

「もっと上ぇー?無理だよぉ……」

ドアがノックされた。

「夕食です」

今ではもう、旧タイプになってしまったディー2型ロボットが運んできた。

「ありがとう」

「……」

ロボットは何も言わずに渡して出て行った。

「無口なロボットだな。ほら、飯だぞ」

「あー……少な目にね……」

食べ終わった食器は外に出しておくことになっていた。出したときにどこかのドアが開かないかと思ってバリはしばらく見ていたが、どこも開かなかった。タームのいびきが聞こえてきて、バリも眠ることにした。


一方、学校では……。

「今日は……二人、休みか。おい、サラかロフィ、何か聞いてないか?」

と、ムラサキが言った。

「あ、なんでもバリはシェオ地方の方へ魚を見に行くと言っていました。それとタームですが、……彼のお父さんが今、入院しているので、それに付き添っているのではないでしょうか」

と、サラはすらすらと答えた。

「そうか。……わかった」

先生は今日も紫のスーツだった。ピットリウムが主流の中で珍しい服装だ。

「よし、授業を始めるぞ。前回の所からだ」

古語は難しい。

昼休み。

ミコが聞いてきた。

「ねぇ、サラ。バリ、シェオ地方に行っているの?」

「さぁ。でも、そのうち魚を見に行くって言っていたから、どっか行くなら魚のいるところよ。 ポニュ地方の方は砂漠があって遠回りになるでしょうから」

「そぉ……」

「さみしそうねぇ、ミコ」

と、ワカラが言った。

「べ、別に」

「どもってるよー」

と、ワカラもからかった。

「もう!二人してからかわないでよ」

「バリは魚が好きだからね。そのうち帰ってくるよ」

サラは笑いながら言った。

「うん」

「あーら、ずいぶん、バリのことに詳しいのねぇ……」

と、ルカがいじわるそうに言った。

「ルカ……あたりまでしょ。幼馴染なのよ、私たち」

「そうなの?」

「そうだったんだぁ」

高校から一緒になったワカラとワカナは知らなかったらしい。

「知らなかったの?私と、バリとロフィはそうなのよ。ね、ロフィ」

いつの間にかそこにいたロフィに言った。

「そう。住んでいた村が火事になってしまってね。みんな、バラバラになってしまったけど、三人だけは一緒に来たんだ」

「へぇ……そうだったの」

と、ミコも言った。


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