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ある冒険者の物語  作者: 丸歩堂
序章 ~冒険者の誕生~
2/6

01  ~別れと旅立ちと~

2話目投稿です

ごゆっくりどうぞ

 ―――エキドナ村・ドリスの家―――


そこではドリスの葬式が行われていた。

ドリスの葬式には両手で数えられるほどの人間しか参列していなかった。

スコールが参列した人の中で名前を知っているのは流民だという理由で差別せずに最後までドリスのことを必死に助けようとしてくれた、シェルパー先生と

この村に流れてきたときから流民であるスコールに積極的に話しかけてきてくれた、

とある少女の二人だけだった。

あとはドリスが面倒をみていた数人だけである。

もっともその者たちも本当に死者を悼んでいる様子など無く、義理立てのために参列している様子で今はもうすっかり葬式自体に興味を失った様子で参列していた少女の興味を引こうと必死に話しかけている。

もっとも話しかけられている少女はまったく彼らの話を聞いておらず

真剣にドリスの死を悼んでいる様子だった。

スコールは彼らをみて落胆した。

(…結局父さんの死を本当に悲しいと思っている人はシェルパー先生とシャルぐらいしか居ないのか。

 何で誰も来ないんだ…父さんは立派に村のために働いたじゃないか!)

スコールがそう村の住民たちに憤りを感じていると

「スコール」

と後ろからスコールを呼ぶ声が聞こえた。

後ろを振り返ると、そこにいたのは少女だった。

それは先ほど彼らたちに話しかけられていた人物と同じだった。

彼女の名前はサリア=アルコット=シャルロース。 名前からも分かるとおり貴族だ。

通常、貴族やそれに近いものたちの性格は弱者をいたぶり贅の限りをつくす。

そのくせ顔立ちは整っているものが多いといったものだが、

彼女はそんな普通の貴族と違って、誰とでも分け隔てなく話すので、瞬く間にこのエキドナ村のアイドル的存在になった。

彼女の容姿は綺麗というよりかは格好良いと思わせる顔立ちで男勝りな口調もあって、

村の男性だけでなく女性の多くのものも彼女の虜になっている。

そして彼女と親しいものはサリアと呼んでいる。

……スコールは知らないことだが彼女が自分のことをサリアと呼ぶのを

認めている男はスコールただ一人だけだった。

このことは村人がランスロット家を避ける原因のひとつだった。

そんな彼女が、腰までまっすぐに伸びている金色の髪をたらして

海を思わせるような深い青色の瞳で心配そうな顔でスコールの赤い瞳をじっと見つめていた。

「サリア?どうしたの?」

「いや、ドリスさんが死んでしまって大変だったな。

 でも、ドリスさんはきっと、そんな世界に絶望したような顔で見送られるよりも

 笑顔で見送られるのを望んでいると思うぞ?」

「…そんなこと無いさ、きっと父さんは僕の笑顔より沢山の人たちの笑顔のほうが

 父さんは喜ぶよ。」

「それは無いよスコール。私はドリスさんからあなたの話を良く聞かされていたんだぜ。

 本当に生まれてきてよかったって、何度も何度もそれこそ耳にたこが出来るくらい

 私に言ってくるんだ。だから…笑ってあげて?

 あんな怒っているような顔よりも…な?

 私も一緒に笑って見送るからさ」

そうしてサリアはたとえどのようなものでも安心するような暖かい微笑を浮かべた。

「…そうだね、ありがとうサリア」

そういってスコールもすぐ傍で自分を見守ってくれているであろうドリスに涙を流しながら笑みを送った。

(父さん安心して天国に言ってね。それと僕も父さんの子供でよかったよ。ありがとう) 

それからスコールはいつの間にか泣いていたサリアとしばらくの間静かに涙を流していた。



 ―――数日後・エキドナ村・北出口―――


葬式が終わり数日が経ったある日、村長が家にやってきてスコールに言い渡した

―――村から出て行ってくれないか

この言葉を聞いてもスコールは村長を憎悪の目で見つめたりはしなかった。

それよりもむしろ

(やっと僕もこの村を出るときか。)

という決意の思いのほうが強かった。

――そして旅立ちの日を迎えた。

旅立つ少年を見送りに着てくれているのは

いやそうな顔をしながらも立場が立場なので来ている村長と

心配そうな顔で少年を見るシェルパー医師の二人だけだった。

サリアはいないのかと少し待ってみるが、やはり来ない

(やっぱり、サリアも僕を嫌っていたのか?)

そんなあり得ない事も考えてしまう。

そうこうするうちに村長の祝いの言葉と安全祈願の言葉が始まった。

「今日この日にエキドナの村人であるスコール=ランスロットの新たな旅が始まる。

 神よ!願わくば彼の者に祝福と幸運のあらんことを!」

祝いの言葉が終わるや否やスコールを一瞥もすることなく

村長は家へと戻っていった。

それを見送ると次はシェルパー先生が袋をスコールに渡して声をかけた。

「スコール道中は気をつけるんだ。最近はこのあたりでもモンスターが活動していることもある。

 絶対に死ぬなよ、私は一度自分の手で助けた命を無駄に捨てるような真似は許さんからな。

 それと、これは少ないが路銀だ少しくらいはもっておいたほうがいいだろう?」

袋に入っていた金の量は決して少なくはない量だった。

「そんな!こんなに貰うわけにはいきません!ただでさえ治療費さえ満足に払えていないのに…」

「馬鹿モン!誰があげると言うたか!貸すだけじゃ!

 …分かったか貸すだけじゃからな?返さずに死んだりしたら、あの世まで取り立てにいくからの」

「先生……分かりました、必ず…必ず返しにきます。

 だから先生も返しにくるまでは死んじゃ駄目ですよ?」

「っか、生意気言うな全く、私はもう帰るぞ」

そういい残してシェルパーは村に帰っていった。

スコールはもう一度だけシェルパーに頭を下げて

登録のため街への街道を進んでいった。


―――エキドナ村・近くの街道―――


村を出て数分歩いていたら目の前に人影が確認できた。

(何だろう?)

いぶかしみながら歩を進めるとやがて人影が誰だか視認できた。

「サリア!」

「よう、見送り出来なくてすまん。どうしても父が許可してくれなくてな

 ちょっと無理やりだがさきにここに来ていたぜ」

「そうなんだ、僕はてっきりサリアに嫌われたかと…」

思ったよ、そう続けるより早く

「そ、そんなわけ無いだろう!

 全く何考えているんだ、私がスコールを嫌う?あり得ないね」

すごい剣幕で否定してきた。

「そ、そうかな?」

「そうだよ君はは全くそういうところがあるのがいけないだからこのm」

「ごめん!許してくれって」

「ム、分かったならいいだろう。

 それよりも本題だ、君は冒険者になるのだろう?」

「うん、父さんにも言われたしね」

「うむ、それならいい…実はな私も冒険者になろうと思うんだ」

「サリアも?」

「ああ、父がまだ認めてくれないが今日から剣技を鍛えていこうと思う

 だからもし、万が一にも冒険者になったら一緒に依頼を受けないか?」

「本当に!分かった約束だな」

「ああ、だからスコールも絶対に冒険者になって私が冒険者になる前に

 やられたりするなよ?」

「分かった。じゃあまた会う日まで!」

「そっちもな!」

こうして二人はそれぞれの道へと進んでいった。

スコールはギルド支部がある街へ、サリアはエキドナ村へ

この二人の道が交わるのはまだ少し先のことである。

視点についての説明


基本的には3人称視点でいきますが、ときどき一人称視点で話を進めていくこともあります。

ちなみに、次回はサリア視点を予定しています。


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