第9話 ロックワーム
Side:スルース
そんなこんなで1週間。
そして、ついにあいつに遭った。
地面が揺れる。
地震か。
だが、大した揺れではない。
震度1にも満たないだろう。
日本で暮らしていた俺としては、驚くほどじゃない。
「ロックワームが出た! 坊主、逃げるぞ!」
ラークさんが、走って俺に報せてきた。
地面がさっきより大きく振動したので、踏ん張る。
坑道の出口に方向に、胴回りが1メートルはあるミミズが飛びだした。
こいつがロックワームか。
どうやら、俺達は袋のネズミらしい。
「武器強化」
ラークさんの持っていたつるはしが光を帯びた。
ロックワームに振り下ろされるつるはし。
ガキンと金属同士がぶつかるような音。
ラークさんの一撃は、弾かれた。
硬いな。
こういう敵こそ、パイルバンカーの出番だ。
くくくっ、パイルバンカーの餌食になれ。
「たぎるぜ! 杭よ唸れ! 【バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】、うおりゃ! スパークして爆散しちまえ!」
拘束魔法の時に、ロックワームも一緒に固定した。
ロックワームが暴れる。
逃がさんよ。
横の動きの力はあまりないらしい。
ミミズなんかだと、かなり激しく、くねるように動くのだけど、体が硬いことの弊害かな。
ロックワームの体につなぎ目みたいな線がある。
つなぎ目がないと、動けないからね。
そのつなぎ目に轟音と共に撃ち込まれる鉄の杭。
緑色の血が飛び散った。
「やったか?」
「ギシャー!」
浅かったらしい。
要らんフラグを立てたらしい。
「死なばもろとも! 全開だ! エネルギー充填1億パーセント! 【バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】。ふべらっ……」
今度は爆発をかなり強めにしたので、俺も吹っ飛ばされる。
ごろごろと転がった。
すかさず、起き上がる。
だが、今度は深々と鉄の杭が刺さったようだ。
ぐったりとした状態になったロックワーム。
しなびた、つくしみたいだ。
体の半分以上は土の中。
どうやら、死んだようだ。
こういう時は報せると後片付けをしてくれて、素材の代金が貰える。
「ロックワームを掘り出すぞ! 皮を傷つけるなよ! 価値が下がる!」
「おう」
「分かってるぜ」
ロックワームを職人達が慎重に掘り出す。
地面はほどんど岩なのに、ロックワームはどうやって移動してるんだろうか。
だけど、パイルバンカーに関係なさそうだから、別にいいや。
2時間ほど掛かって、ロークワームは掘り出された。
「坊主、あれは防具になるんだぜ。肉は珍味だ」
ラークさんが説明してくれた。
「正直、ミミズの化け物の肉は食いたくない気がする」
「まあ、俺も食ったことはないな」
ラークさんが、食べたいと目で言っている。
「でも、これも経験かな。職人さん、肉が少しほしい!」
「おう、退治した者の特権だ。一番美味い場所をやるぜ」
ふもとの食堂で焼いてもらう。
焼くと匂いは悪くない。
食べてみた。
癖はないな。
油はかなりある。
柔らかくてジューシーでとろける味だ。
「美味いぞーー!」
「おう、美味いぜ!」
食わず嫌いはいけないな。
美味いと聞いたら、次は積極的にチャレンジしてみよう。
ロークワームの素材代として金貨1枚と少しを貰った。
木札ではないんだな。
討伐してのモンスター素材の換金だからだろう。
ロックワームは金銭的に美味しいな。
動きもそんなに速くないし。
だが、金なんぞ要らん。
まあ、捨てたりはしないけど。
金はあればあるほど良い。
その価値に固執しないだけだ。
金持ちを目指しているわけじゃないからね。
「坊主、お前、英雄の生まれ変わりかなんかか」
「いや、これぐらいできるっしょ」
「6歳児でできる奴なんかいない」
「でもスキルがあれば」
「まあな。だが、ビビって腰を抜かすのが普通だ。俺のスキルも駄目だった」
「固定してつなぎ目を狙ったからね。つなぎ目でなかったら、俺も駄目だった。弱点を狙うのはパイルバンカーの定石」
「魔法も馬鹿にできないな」
パイルバンカーさえあればミミズの化け物ぐらい恐れることはない。
完成したパイルバンカーが通用しない敵などいない。
ゴーストだって杭に聖水掛ければいいんだし。
何を恐れることがある。
ロックワームのつなぎ目ではない皮をぶち破ったら、この鉱山は卒業かな。
さあ、採掘に戻ろう。
「【バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】、おっ、空洞だ」
パイルバンカーで岩壁を崩すと、巨大な空洞が現れた。
壁は赤く光ってしてキラキラとしてる。
なんか、特別な鉱石かな。
坑道から出て報告。
「坊主、でかした。魔鉄鉱石だ」
職員から褒められた。
「高いの?」
「鉄鉱石の2割増しぐらいだな」
「そんなでもないね」
「実は、魔鉄は鉄に魔力を馴染ませると、作ることができる。だから、値段はそれなりだ。作るのにはスキルが必要だから、簡単ではないけど、まあ貴重でもない」
「硬かったりする?」
「ああ、鉄よりはな」
おお、ちょっと燃えてきた。
パイルバンカーで採掘できるかな。
試したい。
そう考えたら、駆けだしていた。
「【バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】、はりゃ?」
鉄ノミが弾かれて、見ると少し歪んでいる。
鉄より硬いというのは本当だな。
強敵だ。
燃えるぜ!
全力なら、なんとかなりそうだけど、鉄ノミを壊しまくると怒られそうだ。
鉄ノミの強化が必要か。
ふと、考えた。
純粋な魔力だけでパイルバンカーができないだろうか。
魔力の杭を撃ち込むのだ。
魔力操作なら、3歳の頃から練習してる。
魔法を使うのに必要な技術だから。
人間が体をコントロールしていろいろな動作をするように、魔法は魔力を操作して動作する。
コントロールの上手い下手で、魔法の威力も違ってくる。
魔法には重要な技術だ。
俺は幼い頃からやっているので、かなり上手い自信がある。
体内に魔力で魔力暴発する物、名付けて魔力火薬を作る。
魔力を固めて杭の形状にする。
砲身と薬室を魔力で作り、薬室で魔力火薬が爆発。
「魔力パイルバンカー」
魔力の杭が目の前の空気に撃ち込まれたのが感じられた。
予備の鉄ノミを持って。
「杭強化魔力パイルバンカー。やった、鉄ノミが赤みを帯びた」
魔鉄って簡単にできるな。
こりゃ、安いのも納得。
「リベンジだ。赤き杭よ、唸れ、雷を呼べ、風よ鳴け、太陽よ煌めけ、えっと、前口上はもういいや、我慢できない。【バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】。やったぜ! 魔鉄鉱石に勝った!」
魔鉄鉱石の岩壁が崩れた。
ありゃ、鉄ノミの色が元に戻ってる。
魔力パイルバンカーの出力が足りなかったんだな。
初めてやったから当然だ。
どんな技も、熟練するには練習が必要だ。
天才でもない限りはな。
何度も思ったが、俺は天才ではない。
練習あるのみだ。
だが、新しい技を得た。
魔力パイルバンカー。
これも練習していこう。




